2009年12月29日火曜日

12月に読んだ本

カール・セーガン「悪霊にさいなまれる世界」上下巻

以前、ニセ科学批判を行うサイトで紹介されていて、ずっと気になっていた本。文庫で出ていたので買ってみた。読みやすい文章だが、内容は濃いので読破するのに結構時間がかかった。
「人は誤りを犯すものである」だから、エラー修正機能は必須であり、それが正常にかつ偏りなく機能するためには、言論の自由が保障された社会と充分な教育が必要である、という話。
「懐疑的」という言葉の誤解もこれで解けた。「○○に懐疑的」というと、かなり否定的なニュアンスにとらえられがちだが(マスコミの責任も大)、「懐疑」は否定することではなく、「本当にそうなのか?」と疑うこと、根拠と検証を求めることである。
ちなみにセーガンおじ様は本書で、日本と日本の教育を大変褒めていらっしゃる。だけどこの本が出た年に、ちょうど学校の週休二日制が決まり、ゆとり教育も始まったのであった。ここで述べられているアメリカの教育への批判は、まさに今の日本にも当てはまるような気がして、ちょっと暗い気持ちに。


「風に舞い上がるビニールシート」森 絵都

森さんの本はこれが初めて。直木賞受賞作であり、表題の作品はドラマにもなった。
短編集だが、すべての作品がそれぞれ確りしたテーマを持っており、読み応え抜群。
「鐘の音」などは大河ドラマにもなりそうな内容。
個人的には「器を探して」と「ジェネレーションX」が好き。道行きものが好きなのか、私。
「ビニールシート」が一番重いテーマを扱っているにもかかわらず一番軽い話になっている。いつかこのテーマで長編を書いてほしいもの。

2009年12月14日月曜日

ギネ終了! JINあと一回。

とうとう最後まで観てしまった「ギネ」。案の定な終わり方だったが、最後近くの君島先生のセリフはなかなかだったので、再録しておく。

小笠原行きの船に乗り込む列に並ぶ、柊先生とその息子。そこに駆けつけた玉木と君島。あなたは小笠原で何をする気なの? と詰問する君島に柊先生
「まだ具体的には何も決めていません」(←息子も連れてくのにこれはないよね)「徳本さんのことがあって考えました」「小笠原には産科医がいない、島の妊婦さんと生活をともにすることでもっとお産を知りたい」「高度医療の現場だけがお産ではないと思います」
などと力説。君島先生怒り心頭、
「女学生みたいな考えはやめなさい!」
とバッサリ切り捨てる。

「女の子の心の旅じゃないのよ! そんな甘い気持ちで医療の問題は解決しないわ。小笠原で妊娠した人は、30週になったら本土に移動してお産をしなきゃならない、それは確かに大変だけど、貴方があっちへいくことで、みんなが島でお産をするようになったらどうなると思うの? それまでなんともなくても、急にハイリスクになることもあるのよ。NICUもなく、新生児科の先生もいないところで、あなたはハイリスクの妊婦さんをどうするつもりなの? 飛行場だってないのよ! 赤ちゃんや妊婦さんが死んだら、あなたが殺したことになるわ! これだけ長いことギネやってて、何でそれがわかんないの!」(←このセリフ、もっと前に聞きたかったです、君島先生)

で、まだまだ修行が足りん! 私が鍛えてあげるから戻ってきなさい! で柊、しゅん。
小笠原の妊婦さんについてはどうするんですか? という玉木の質問に君島、人員体制や移動手段など、行政と相談しながら総合的に考えていくべき、個人でどうこういう問題じゃないと一喝。

……えーと、柊先生を教育なさるのはかなり大変かと思いますが……人手不足なので仕方がないのでしょう。柊先生、精進してくださいね。てか、いくら忙しくても自分の息子をそんなに振り回しちゃダメやん。転校手続きもしたんでしょ? 母としても、あまりに考えなさすぎ。ものわかりのいい(良すぎる)息子、心配だぞ。

さて「JIN」です。今回はさきさん主役。ニブチンの仁先生ちょっと分が悪い感じですが、来週は最終回すぺさる一時間半、どうやって終わらせるのか。
旦那曰く、漫画とは全然違う、そうで。原作は色恋要素はあまりなくて「沈黙の艦隊」医者版、みたいな感じらしい。ほ、ほんとか?(艦長好き♪)
まあ、どちらにしても、この「まっすぐな感じ」がすごくいい。真っ当な感じというか。人間性に何ら問題なく、真摯な努力も怠らない人が、それでも様々に悩み苦しみ葛藤する姿というのは清々しい。

このところ
「真っ当な人を真っ当に描く」
ことが少なかったんじゃないだろうか。
「ギネ」でもっとも不快な点は、柊のような傲慢でKYな医師で、いろいろやらかしても、なぜか必ず味方がいて、不自然なまでに献身的に助けてくれて何となくうまく行っちゃうというような構図。コメディならともかく、シリアスドラマであの展開はあまりにご都合主義。最後まで、なぜに君島がこれほどまでに柊をかばうのか、さっぱり理解できなかった。まあ最後のは、小笠原行きを阻止するために言ったんだろうけど(自分が見てないと何するかわかんない、というのもあり)。
「ギネ」の柊先生は医師として云々以前に人間としてダメじゃ? というようなことを某お医者さまのブログで発言したら「医師という職業は、社会人として、人間としてダメでも、医師としてはまあまあ優秀、という人がいる業界なんですよね。『医者は常識がない』とかよく言われますしね」などと自嘲気味のコメントを返されてしまった。
いやいやでもね、それをあげつらうのがこのドラマの目的ってわけじゃないですよね。

読売ONLINE「脚本家の仕事とは」より引用

社会的意義のあるドラマではありますが、啓蒙のためにやっているわけではありません。様々な矛盾を抱えて生きる人々のささやかな応援歌になることが、私の願いです。でも、最後まで見ていただければ、産婦人科医の仕事は素晴らしい、と思っていただけると思いますし、産婦人科医をめざす人が増えるといいなとも思っています。

前者のはともかく、後者はどうかなあ???
これだけ医療崩壊が深刻な今なら、はっきり「啓蒙」のため書いてもよかったんじゃないかな。とにもかくにも、柊をもっと魅力的な医師にしておいてほしかった。
まあ、いち主婦の無責任な意見ではありますが。

ああ、「JIN」が終わるのは寂しいなあ。映画化しないかな。深夜アニメ化でもよし。

2009年12月7日月曜日

とほほのギネ、いとしのJIN

今週の「JIN」も、見どころたくさんで満足でありんした(←変)。
江戸の大火の場面が一番の見せどころだったと思うが、今回なんといっても鈴風さんが仁に迫る場面が。

何しろ大沢たかおさんは、困った顔をさせたら天下一品の俳優(と勝手に断言)。吉原の花魁といえば名実ともに女子力最強、しかも恋人激似の鈴風さんのなりふり構わないアタックに、耐えに耐えて、あぁもうダメかも……と自制心がついえていく風情、胸キュンしなかった女子はいないであろう。
いや微妙に女子の感覚じゃなかったかも。私はあの場面観て、若くてすれてない、可愛い女の子に目じりを下げるオジサンの気持ちが一瞬わかったような気がした。とすると極めてオヤジ的な胸キュンか? それか萌えってやつですか? いや、別に私のことはどうでもよくて。

とにかくそのあとで、中村敦夫さん演じる「を組」の辰二郎さんに啖呵を切られ、切り返す仁の凛々しさといったらもう。あのシーンのあとにこれですかーっ惚れてしまうやないのっ。本当にもう、呆れるくらいよく出来ている。脚本も、演じる俳優も、音楽も。
類型的といえばそうなのだけど、一人ひとりの人物、一つ一つのシーンやエピソードがぴたりとはまってるので、素直に乗せられてしまう。
ちなみに辰二郎さんも、最後に笑いだす前の一瞬泣きそうな顔、あちきは見逃しませんでしたえ(←やっぱり変)。

で、「ギネ」ですよ。
何だかなにもかも迷走しています。
この病院、変な人ばっかりじゃん。病院長の「柊は疫病神だ」て言葉にうんうんと頷いてしまう私。
君島先生が懸命にかばう理由が観てる方にもわからんぞ。それに先々週くらいで成長したはずの柊せんせ、またやらかしてるし。

あと、大事なこと。

病院が救急車からの要請を断るのは
「受け入れるための設備・要員が不足(医師がいない・必要な治療が不可能)だから」
であって
「どうしても患者を助けようという正義感に欠けるから」
ではない。
「ギネ」の柊のように「患者をすべて受け入れる」とやってたら、おそらく患者の死亡率も上がるし医師の過労死も増えるだろう。
「たらいまわし」は病院が無責任なせい、ではない。
そりゃ一部に問題ある病院や医師は存在するだろうが、大多数は極めて真面目に、心身が擦り切れるほど働いているのである。

今週、最終回だそうな。
どうやってまとめるんでしょ。その興味だけで観るかも。

2009年11月30日月曜日

「ギネ」を観るなら「ノーフォールト」を読むべし!

さてさて毎回突っ込みどころ満載のドラマ「ギネ」の原作。

「ノーフォールト」上下巻(岡井崇、ハヤカワ文庫)

近所の本屋に平積みされてたので、図書券使って買った。
ちなみに「「無過失(ノーフォールト)医療補償制度」とは「医師・病院にミスがあってもなくても、患者や遺族に充分な補償がなされる制度」のことで、日本でも今年からようやく産科医療補償制度が始まったらしい。
ふむふむ。読んだ(ほぼ一気読み)。

…………

柊せんせ、キャラ違う!

てか、ぜんっぜん、違う話やないかい!

予想がついていたことではあったが、あまりの違いっぷりに脱力した。小説をドラマ化やアニメ化、映画化した場合、細かい設定や人物に多少の変更があることは、別にダメなことではない。書き方によっては、そのままでは絵にならない・しにくいことも往々にしてあるだろうし、登場人物のバランスというものもあるだろう。だけど主人公のキャラがここまで違うと……名前と性別が同じというだけで、真逆といってもいいぞ。それにストーリーの大筋は同じだけど、テーマはあさっての方向に行っちゃってる感じだ。どんなふうに行っちゃってる、のかというと……。

ドラマを観ている人にとっては完全なネタバレにはならないと思うが、念のため、知りたくない人はここからは飛ばしてください。で、「ノーフォールト」読みましょう。読むべしです。

~以下、ややネタバレにて注意~

「ノーフォールト」
周産期医療センターを抱える大学病院の産婦人科で、勤続五年目の医師・柊(ひらぎ)。過酷な労働条件下、医師や看護師、助産師などの医療チームとしての結束は固く、毎日必死で患者のため働く。
柊はそこそこ優秀な中堅医師で、患者の気持ちに寄りそい、安心させるのがうまく(技術ではない天性のもの)、信頼は厚い。
そこに起こる母体死亡の悲劇。柊は大きなショックを受けるが、周囲の励ましにより何とか立ち直ろうと決意、職場に復帰する。
ところが、母体死亡の件はマスコミに大きく報道され、訴訟騒ぎに。参考人として呼ばれた裁判所で、原告の弁護士から「あの患者はお前が殺した」と面と向かって罵られる。柊は精神のバランスを崩し、医師としての熱意も失う。………

対する「ギネ」。
柊医師は腕はいいが自信過剰気味で、冷静さに欠け、感情に走りやすい。協調性もないので医療チームとしての動きが出来ず、周囲からひんしゅくをかうこともしばしば。だが患者からは「嘘がない」として(なぜか)信頼されている。ところがまさかの母体死亡。マスコミの報道を見て話をしにきた遺族に「もう忘れたい、忘れて前だけみて歩く」などと口走り、遺族どころか同僚医師からも見放される。そしてその言葉が遺族に訴訟を決意させるきっかけの一つにもなる。
………

「ノーフォールト」の作者、岡井崇氏は現役のお医者さまである。まさに「ノーフォールト=無過失補償制度」を日本でスタートさせるきっかけを作ったその人、だそうだ。私は医療従事者ではないが、岡井氏の作品はとてもわかりやすく、言いたいことがストレートに伝わってきた。

岡井氏が問題としているのは
「一般人としてもどうよと思われる、問題を抱えた医師の心ない発言によって傷つけられた遺族が、やり場のない怒りを解決させるために起こす訴訟」
ではなく、
「能力も経験も(もちろん一般常識も)年相応にある普通の医師が、全力を尽くしたが不幸な結果に終わったのを『医療ミス』とみなし、遺族の生活保障を得るのを主目的に起こす訴訟」
である。
医師は誠実に対応、患者側もごく常識的、弁護士だって決してお金目当てではない。人間として何らの落ち度があるわけではない人たちが「医療訴訟」によって傷つけあい消耗する、それがどんなに不毛で愚かな行為か、そこを書きたかったのだろうと、私は思った。

「ギネ」の柊医師は傲慢で思いやりに欠け、子どもじみた振る舞いをする困ったちゃん。弁護士は最初から憎々しげに描かれており、依頼人のためというより自分のために勝ちたい感じだ。でもそこも違うのだ。何もかも違う、違いすぎる。
医療訴訟は「一部の変な人」が起こすものではなく、「普通に善意ある人」が起こすから問題なのだということ、ドラマで表現するのには難しかったんだろうか?

とりあえず「ギネ」を観たことで得た収穫は「ノーフォールト」という本を読む気になり、実際に読んだ、ということ。私としてはそれで良し、としよう。「JIN」は相変わらずのクオリティの高さで面白いし。

2009年11月26日木曜日

さすがの「JIN」、なんでか「ギネ」

「JIN」はすっごい視聴率みたいだ。五回目以降から二十パーセント超え。もちろん今クールではぶっちぎりのトップばく進中♪ 私も欠かさず観ている。
毎回、何かしら事件は起こるのだが、それが大仰な感じじゃないのがとてもいい。俳優もベテランぞろいで、全体的に抑制された演技、演出のおかげで、テーマがくっきり際立つのであろう。小道具や伏線もさりげなく、だがぴりりと効いている。何より、ひとつひとつのセリフを、ひとりひとりがすごく大事に、誇りを持って言っている、その気持ちがビンビンに伝わってくるのもいい。そういうのが役者の技術ってもんなんだろうなあ。
金八先生、じゃない緒方先生、今回は泣かせてもろたぜ。
といいつつ私はすっかり大沢たかおファン。今は演劇の方に力を入れているらしいが、もっとドラマにも出てほしいなあ。

で、「ギネ」。
6回めでガクっと10%落ち。私が観ないって言ったせいかしらん!(違)
実をいうと、結局観てしまっている。今の産科事情にシャレにならないものを感じているからに他ならない。なんてカッコイイ理由ではなく、何と言うか、出来の悪い子ほど可愛いというか目が離せないというか。7回目では裁判が始まったが、案の定「徳本さんのことは忘れたい」といったことを弁護士につっこまれてノリカさん絶句&ピンチ。そこに「偶然」怪我をして運び込まれた徳本さんの娘の血液検査をした「柊医師の元夫」、データに疑問を抱き調べると、徳本さんにはもともと遺伝性の血液疾患があったことが発覚。裁判は和解へ。……出来すぎじゃないかい? 
さらに次回は病院お抱え(&病院長と入籍)の弁護士が卵巣がんで子どもを諦めるか否かという決断を迫られる。周産期医療センターであるから、様々な症例が集まるのは当然にしろ、半径五メートル以内の人間関係でこんなにいろいろあるかいな。テーマはなんやねん、テーマは。
回を追うごとに突っ込みどころが蓄積していく感。医者じゃなくても突っ込めるドラマという意味では今期ピカ一かもしれん。

2009年11月21日土曜日

「沈まぬ太陽」山崎豊子 を読んだ


文庫本にして五冊の大作。映画化されて一躍脚光を浴びている今買うのは気恥かしかったが(へそまがりなので)、一巻だけ、と買ったらあれよあれよと引きこまれ、ついつい全部読んでしまった。「不毛地帯」の時も同じ感じ。何がいいって、主人公にしびれるんである。有能かつ人格も行いも高潔、一本筋の通った男を書かせたら、山崎さんの右に出るものはいない。少年漫画に出てくる、男性にとってだけの完全無欠な美少女と同じく、現実にはいない男性だとしても、やっぱりいいものはいいんである。

元・毎日新聞学芸部で、かの井上靖のもとで記者として働いたことのある山崎さんの筆致は、相当な情報量でありながら簡潔で読みやすい。小説としては文句なく面白いが、虚実織り交ぜて書く手法には賛否両論あるらしい。モデルと推測される人物が全然違うように描かれてる、とかひとつひとつこう違うああ違う、と説明してあるサイトまである。
文庫本の帯にも「自分の夫の会社がこんなひどいところだとは知らなかった」みたいな感想が載っていた。
ある意味めちゃくちゃ思い切った手法というか「どんなことをしてもこのテーマで書いてやる!」というなみなみならぬ決意、気合と根性なしには出来ないワザである。その意味ではかなり尊敬ものだ。今、こんなの書ける作家がどこにいるだろう?
「ダヴィンチ・コード」みたいに、丸まるトンデモの癖に冒頭で「これは小説である」と逃げ道打って、広告代理店の販売キャンペーンに完全にのっかったような、ヌルい小説とはわけが違うんである(といいつつあれも結構面白かったけど。ただ十年二十年しても売れる本かな、と考えると疑問)。

この小説の意義について語るならば、忘れてはいけないのが「御巣鷹山での墜落事故」。私自身、あのニュースの第一報からリアルタイムで観ているし、手帳に書かれた遺書にも涙した。いろんな形で残すべき記憶であると思う。モデルとなられた航空会社の方々も、そこは当然、じゅうじゅうご承知のことであろうが。

御巣鷹山墜落事故に関する書籍ではこちらもオススメ。ノンフィクションです。
「墜落遺体」飯塚 訓

2009年11月17日火曜日

四十代主婦、西尾維新を読んでみた

中学生の娘が最近、ライトノベルばっかり読んでいる。
と、以前の日記にも書いた気がするが、相変わらずである。
このところ、やっと私にもわかる、というか聞いたことのある作者のものを借りてきたので、読んでみた。

「クビツリハイスクール」西尾維新

おどろおどろしいタイトルの割にこのアニメな表紙、ポップな装丁。世間一般で言うライトノベルのイメージそのものの外見に、正直のっけから引いた。

で、二ページほど読んでみて。
おお、案外文章は確りしている(失礼!)。四十代の、本にはちょっとうるさいオバちゃんの目にも、特にひっかかることなくするする読める。登場人物の名前と喋り方と設定そのものがアニメっぽいというきらいはあるが、まあその辺慣れればなんてことない、かもしれない。
といいつつ、そのまま放置して一週間。そろそろ返さなきゃイカンというので、しぶしぶとまた読み始めた。今度は最後まで何とか読んだ。

うむむ。
なんともいえない読後感。
読みにくいかといえばそんなことはない。ドライブ感もあるし、キャラクターも面白い。話のつじつまとかは、あって無きが如し、というか、言うのは野暮……という雰囲気で、まあ特にそこがどうこうと突っ込む気はさらさらない。そんなこと問題じゃないのだ。
お話としては、こんな感じ。
世間的にはお嬢様学校として知れた学園に、訳もわからず女装して乗り込まされた主人公。ある女生徒を救い出すのが任務だが、いまいち事情がわからない。どうやら学園は通常の学校ではないらしい。そこで起こった密室バラバラ殺人事件、主人公と請け負い人は、否応なく巻き込まれていく……
書いてて思ったが、漫画みたいだなあ。この荒唐無稽な設定と無茶ぶりなストーリー展開、あり得ないキャラクターたち。まあしかし、そういうのも嫌いではない。アニメ声の危ない武闘派少女とか、口は悪いが超絶美人で天才・最強のお姉さまとか、よわっちそうなのに実は策士の主人公とか。悪くはない。最後まで飽きずに読めたし。
しかし、思った。この主人公(男)の語り口だけ、なんか純文学っぽい。文体が、という意味ではない、言ってることがである。以下、私が勝手に抱いている純文学風の考え方のイメージ:
「だって、俺(私)はこんなだから、当然こうするっしょ?」
そこに論理的思考とか、世間一般の常識とか、フツーの大人ならこう考えるっしょ、などというものは存在しない。ただ「自分」のみ。「俺(私)が基準」。
いや別に私は純文学を否定するつもりはない。むしろ好きである、ただし現実に自分の近くにそういう人がいたらイヤだし困るが。
これ読んで、ますますライトノベルの定義がわからなくなった。定義なんてする必要もないのかもしれないけど。

ちなみに中学生の娘の感想:
「面白いんだか、面白くないんだか、わかんなーい」

……だったら勧めるなよ。

2009年11月14日土曜日

ギネ~やっぱり観るのやめたっ!

もう一度納得いかないことがあったら、観るのやめる、と言った。
この間の水曜日、五回目。

柊先生、前回の騒ぎにより、産婦人科から婦人科に移らされる。
柊「嫌です! 私、お産が好きなんです! 移りたくありません」
(中略)
先輩医師「君は、死から逃げてる。自分の母親の死からも、徳本さんの死からも。医者がそれではダメだ。医者に必要なのは客観性。それを身につけて冷静になるまでは、執刀はさせない」
(中略)
柊「いやです! 私は逃げてません! 死を考えているからこそ産婦人科医になったんです!」
(中略)
先「婦人科でダメなら、あとは辞めてもらうしかない。よく考えろ」

また別の場面、執刀医に自分より下手な人間が選ばれたことに怒り、直接上司に
「私の方が技術は上です! なんで○○さんなんですか!」
とくってかかる女性医師(柊ではない)。

……えーと。

人前で、上司にこれだけストレートに自分の思いをぶつけられるなんて、なんてリベラルな職場なのかしら。上司の度量はどんだけ広いんや。
私がかつて勤めていたシステム系の職場風に言うと「あの人がなんでこのシステム担当なの? 私の方が速いし正確だし適任ですよ!」て上司に訴えるのかな。ありえない。
しかしこの病院、上司以外は全員、客観性も冷静さも、欠けてないか? てか、好き嫌いで仕事を決めないように、プロなんだから。

そして、私が観るのをやめることにした、決定的なひとこと。

(亡くなった妻のことが、医療過誤の疑いありと週刊誌の記事に載ったため、担当医であった柊に説明を求めにやってきた夫に対し)
私は……徳本さんのことはもう忘れたいんです。忘れて、前を向いて行きたい

…………
今回、ネットの動画で観ていたんだが、ここでぶちっと☓をクリック。

これはアカン。

この夫、何も喧嘩腰で来たわけではない。この時点では、恨んでいるわけでもない。ただ亡き妻が、一番信用していた先生だから……と縋る思いでやってきたのだ。なのにこのセリフ。医師として、という以前に人間として、そりゃないだろう。
これじゃあ柊医師、単なる困ったちゃんじゃないか。私なら、こんなこと言われたら、何としても訴訟を起こす。ミスがなくても、起こす。自分の家族の死を、忘れさせたりなんかしない、絶対に。

原作の「ノーフォールト」、立ち読みでほんのすこし読んだが、おそらくドラマとはまったく違う、と思われる。やっぱり本の方を買ってみよう。ドラマはもう観ない。ノリカさんの美しさは捨てがたいが、なんだか可哀相で観てられない。
産婦人科の方々、挫けず頑張ってください。私はもう子どもを産むことはないと思うけれど、陰ながら応援しております。

さて明日は「JIN―仁―」だ。
原作者、村上もとかさんだったのね。「メロドラマ」の人。うちの旦那いわく「ライトにさらりと描くのがいい。新しいパターンを作り出す姿勢もいい。この作者ならこういうラストかな、て察しはついても、そこに至る過程を楽しめる」。
ドラマの方も、人物の描き方が丁寧で、納得がいくストーリー展開なので、引っかかることなく安心して観ていられる。漫画も読みたいものだ。「ギネ」の方の動機とは真逆だが。

2009年11月11日水曜日

文學界特別賞・合原壮一朗「狭い庭」について

いつも手厳しい講評をする花村萬月さんと松浦理英子さんによる、特別賞をとった作品。

作者は高校三年生の男子。特にストーリーらしいストーリーはなく、作者と等身大と思われる主人公の日常の脳内探検といった趣の作品。
新人賞を獲った「ディヴィジョン」とは対照的に、真っ正面からの自分語り、こういう文章を照れもなくすぱーんとかけるのはこの年齢がぎりぎりかもしれない。特別賞を与えたお二人も「これからどう、とかいうのはとりあえず問題にせず、今、世に出しておくのもいいと思った」と異口同音に仰っている。
内容はかなりの不思議ちゃんだが、文章自体には破たんがなく、几帳面だ。何もそこまで丁寧に書かなくてもと思うほどきっちりしている。しかもその調子が最初から最後まで一定で、むらがない。そういうフラットな文体だからこそ、中身が引き立つというか、すくなくとも読み切らせる力になっていると思う。「単なる独り言」ではないのは確かだ。ただ、これが例えば短編集だったとして、全部こういう調子だったら、ちとキツイ。

この作者が次にどういう作品を書くのか、書こうと思っているのかは、この作品からはまったく予想できない。つまりは、現在のところでは「一発芸」なのである。これを乗り越えて、さらなる新天地に向かえるか、はたまた小説ではない、別の表現方法を見つけるか、または全然関係ない道に進むかはわからないが、もし作家の道に進むなら、一年か二年、ある程度の時間をおいてから新作にかかったほうがよさそうな気はする。
この先どうなるか予測のつかない点で、とても興味深い書き手と言えるだろう。

2009年11月10日火曜日

どちらが信用できる医者か?

ドラマはたまーにしか観ないのだが、何年に一回か、継続して観てしまうことがある。今年はそういう年らしい。
このところよく観ているドラマは二つ。どちらも医療系である。

1.「ギネ~産婦人科の女たち」
2.「JIN―仁―」

この間の回で出たセリフ:

1.柊医師「○○さんは、死にません!」

2.南方医師「死ぬことも、救いなんだよね」

状況を簡単に説明すると、1.は帝王切開後に出血して、再手術になった(手術は成功、だがその後感染症で命を落とす)患者に対して言った言葉で、2.は、末期の梅毒患者に手を尽くしたものの、亡くなってしまったその後につぶやかれた言葉。

私は幸い、命に関わるような状態になったことは一度もないが、もし何かで入院したとして「あなたは死にません」なんて面と向かって言う医者は信用できない。人間はいつかは死ぬ、致死率100%だ。そういうことは重々承知の上でなお目の前の人を助けるべく最大限の努力をする、それがプロの医者ってもんだろう。軽々しく断言してほしくない。というか普通言わないのでは? 今まで子どもを連れてそれは何回もいろんな病院に行ったが、どんな軽い病気であっても「すぐ治るから絶対大丈夫!」なんて言われ方をしたことは覚えている限り一度もない。「大体はすぐ治るけど、もしこうこうなったらすぐ来てくださいね;こうなってないか様子を見てくださいね」とかそんな言い方だ。

医療系ドラマはなかなかに難しいところはあるだろうが(実際、現場のお医者さんたちからしたら不自然なことや間違い・誤解は多々あるらしい)、

「地域でも有数の、高度医療を扱う病院」で「勤務五年目」の医師が、
十万人に一人という母体死亡の例にぶつかり「多大な精神的ショックを受け」、
「前向きで進むために後ろは振り返らない:亡くなった患者のことは忘れる」などと口走り、
「普段なら経過観察しつつ普通分娩という妊婦を帝王切開しようとする」など常軌を逸した行動に出る、

なんてことはさすがにあり得ないのではないだろうか。実際にこんなトンデモ医者がいたら訴訟ものである。というか、この先医療過誤の疑いで訴訟を起こされるという筋のはず、観てる人に「こんな変な医者だったら訴えられて当然」て思われるのでは? 演じるノリカさんも可哀相である、最初は「愛想はないが、冷静で頭が切れて腕もいい勤続五年目のプロ医師」という設定のはずだったのに。

最善を尽くしても、ミスが一切なくても、亡くなってしまう命はある。こういう「地域でも有数の、高度医療を扱う病院」ならなおさら、他の病院で手におえないような重症患者が多く搬送されてくるだろう。必然的にそこで亡くなる人も多いということになる。ノリカさん扮する柊医師は「敏腕医師がどんなに手を尽くしてもダメだった」事例というのを見たことはなかったんだろうか? だいたい「柊先生は嘘をつかないから信頼する」と患者に言わせておいて、なぜ「死にません」なんてセリフが出てくるのか……そこですでに嘘じゃないか。

「精神的なショックを受けた人」を表現するのに、大袈裟に泣き叫んだり「変」になったり、というやり方はテレビ的にはいいのかもしれないが、あまりにキャラクターにそぐわないと白けてしまう。
患者が壮絶な最期を遂げ、母を亡くした子が泣き叫ぶ、その同じ病院の他の場所では、新しい命が生まれ喜びに包まれている。産婦人科ならではの状況だ。その様子を描くだけでは何がいけないのか? 充分衝撃は伝わると思うが。

ただ。
普通なら「ご臨終です」で終了してしまう患者死亡の場面が、病院から自宅に帰るところ、帰ったあと、妻の遺体の脇で、泣き続ける子どもをよそに新生児の世話や葬式の手配に忙殺される夫の姿をきっちり描いているところはかなり評価できた。家族の、特に一家の主婦の死は本当に大変なことである、毎日の生活は待ってはくれないのだから。

なんだかんだと垂れてしまったが、まあ、結構真剣に観ていたりするんである。でも「ギネ」は、もう一回変な状況が出てきたら観るの止めるかも。

「JIN―仁―」の方がちゃんとエンタメになっている気はする。こっちはずっと観るつもり。

2009年10月16日金曜日

十月に読んだ本 その一


「ミーナの行進」小川洋子


ものを書くひと、というのは皆多かれ少なかれそうなのかもしれないが、小川さんは記憶、というものにすごくこだわりのある人だと思う。

値千金の記憶を持つ人間は強い。ほんの短い間でも、幸せな記憶があれば、人間大抵の辛いことには耐えられるという。「人を幸せにする記憶」を丁寧に書き綴った切ない一篇。



「悪人」吉田修一


吉田修一さんの作品はこれが初めて。犯人が誰か、途中までうまくボカしながら進んでいく構成はとてもいいと思った。犯人がはっきりと判明した後でも、登場人物がそれぞれしっかり動いていくので飽かずに読み進められた。この中で一番の悪人は誰だろう? タイトルが直接問いかける。

ただ、殺された女性にあまり同情出来なかったことが自分の中で引っかかった。これも狙いだとしたらすごい。

2009年10月1日木曜日

自転車で右折のときは、曲がり角に寄らないで!!

最近、母親+前後に子ども二人、の三人乗りが条件付きで認められ、
小学生まではヘルメットをかぶれだの
横断歩道は降りて引いて渡れだの
自転車まわりの論がかまびすしい感じですが

昔から、ひとつ言いたいことがある!

自転車で右折のときは、曲がり角に寄らないで!!

どういうことかといいますと・・・・・・

自転車は左側通行という決まりです
当然左折するときは、曲がり角に沿って曲がる形になります
ところが
ここで右折してきた自転車とぶつかりそうになったことが、一度や二度ではない
この間は
小さいお子さんを乗せたお母さんの自転車が当然のように曲がってきて
あと数秒気がつくのが遅れたらえらいことになった、きわどいタイミングでした

あまりにこういうことが多いので、何となく右寄り+スピード落としていたことが幸いしました
自分が痛い思いするのも嫌だけど、相手とか、まして小さい子どもなんか怪我させたひにゃあ
夜眠れなくなっちゃいます(泣

お願いです
ヘルメットや三人乗りや横断歩道の注意ももちろん必要だけど

右折の場合は、曲がり角に寄らない!!!

ってことも声高に主張してほしい

右折であろうと左折であろうと
曲がろうとしている道から車や自転車や人が出てきていないか、よく見て
相手にも自分の姿が見えるように、なるべく「大回り」するべき
後ろに子ども乗せてるときなんか特に注意しないと
ちなみに今まで相手は全員、女の人だった
おばちゃん、母子が多し
「あそこを曲がる」と思うとそこに近寄ってしまう、という心理はわからんでもないが、めちゃくちゃ危ない
一応「自転車は左ですよ!」と言ってはいるが、多分通じてないんだろうなあ

それに
この間のときは、なぜか自分が謝ってしまった・・・・・・・あかん、基本ヘタレやから私

あと、あれだな
特に町中では
無灯火の自転車もけっこう多いのにびっくり

よく勘違いしてる人がいるけど(うちの子どもたちもそうだった)
自転車の灯りというのは、自分自身の行き先を照らすためというのではなく
相手方に「そこに自転車がいるな」と認識してもらうためのものである
だから、うす暗くなってきたら点けるべきなのだ
「私は見えるからつけなくても大丈夫」じゃないのだ
車からしたら自転車というのは見えづらい
特に子どもなんかは背が低いから非常に危険だ

灯りはちゃんとつけましょう!
昔の自転車と違って、つけたからってペダルがぐんと重くなるってことはないんだから

2009年9月28日月曜日

九月に読んだ本 その5

新型インフルの嵐がやっとおさまった(うちだけ)と思ったら、もうすぐ十月……ああ。
というわけで読書の記録を急ぎます。



「白夜行」東野圭吾

舞台化、ドラマ化されております。

えー、一言でいいまして、私が今まで読んだ東野作品の中で最高傑作です。直木賞を受賞した「容疑者Xの献身」も傑作ですが、それよりも時間軸が長く、物語の層があつい。「胸を打つラスト」という言い方がありますが、まさにその言葉どおり、読後は本当に哀しく胸が詰まる。タイトルもこれ以外のものは考えられないというくらいぴたりと嵌っている。東野さんに小説の神が舞い降りたのだとしか思えない。

続編っぽい作品もあるようですが、これはこのままで置いておきたい感じです。

というか、なんでこれ、何の賞も取ってないの???

2009年9月21日月曜日

九月に読んだ本 その4

連休ですね
連休ですが

長女が新型インフルエンザにかかり(それもご丁寧に連休一日前)
土曜日のはずだった体育祭も延期になったので
自宅にお籠り状態のおさ子一家でございます
長女は別室に隔離状態なので幸い他の家族に感染してはいないようですが(今のところ)
もう、読書くらいしかすることない
というわけでばんばんいきます♪


ネタバレ注意!








「五月の独房から」岩井志麻子




美容師バラバラ殺人事件、という実際にあった事件を元に書かれたものですが、解体部分がリアルで怖い。主人公=犯人の女は、山岸涼子「天人唐草」風味。








「シャトウルージュ」渡辺淳一

いわずとしれたR-18設定ですが、それを目当てに読んだ男性はえらいことになるある意味ホラーな一篇。女からすると、もう最初の時点で、あ、この妻、全然旦那のこと好きじゃないじゃん! とわかってしまいラストも察しがつく。なのについ最後まで読んでしまう。男性が次に何を(脳内で)やらかすかという意地悪な興味でである。男性がここまで、同じ男性の深淵まで突っ込んで書いたというのは、さすが。今まで嫌いだったけど愛ルケも読んでみよ。





「恋愛中毒」山本文緒


徹頭徹尾、一人の女性の視点で延々と描かれる「恋模様」。徐々に明らかになる主人公の姿に驚かされる。見た目、真面目で大人しく従順な、そして寂しげな女性は怖い。しかし、前回読んだ「落花流水」といい、人間観察眼がものすごく鋭い人だ。
長女の感想「なんか、すっげー話。疲れた」(でも一気読み)




「だりや荘」井上荒野



こちらはまた、「恋愛中毒」とは違う感じの凄みある作品。何気ない日常、しかもおそらく普通の人より規則正しく整然とした日常の中にある、裏腹なもの、を描かせたら天下一品。
登場人物たちも、その行いも、めちゃくちゃなのだが、本人たちは取り繕えていると思い込んでいるのがまた。普通の顔した異常、ほど怖いもんはない。これもある意味ホラーな一篇。

2009年9月15日火曜日

九月に読んだ本 その3


桐野夏生さん「魂萌え!」
ドラマ化・映画化もされております(残念ながらどちらも観ていません)
前回「グロテスク」を読んだときと同じように、一気に読み終わりました

突然伴侶を失った妻の混乱を描いた話で、桐野作品には珍しく明るいラスト
(いや、よーく考えると明るくはないのかもしれない)
主人公・敏子は59歳で、夫は会社を定年まで勤め上げた真面目なサラリーマン、都内に古いながらも一戸建てを構える、年金も一か月十五万ほどある
いわゆる「最後の恵まれた世代」
桐野さんのことだから、かなりキツイ書き方をするかと思いきや、主人公およびその周辺の、同年代の女性たちに対する視線は優しい
今まで読んだ桐野作品では大概、出てくる女性を突き放し突き放して書いていて、好きになるというより憎むというのが、主人公に対するこの作家のスタンスなのかしらと思ったりしていた
「魂萌え!」の二、三作あとに、「メタボラ」なので、この辺りからスタンスが変わったのかもしれないが、最近のを読んでみないとわからない

ただ、敏子さんはとてもいい人というか、本当に育ちが良くて、悪く書こうにも書けない、ような気がする
女性特有のいやったらしさというのはあるにはあるが、それがぎりぎり嫌悪を感じない程度に抑制されている
それは作者が無理にそうしたのではなく、敏子さんのキャラクターがそうさせているのだと思う
敏子の世代は、「男は仕事、女は家庭」「女は貞淑、男の浮気は甲斐性」が当然だった世代よりは下だが、古い価値観が体のどこかにしみついている
元気で行動的、流行にも敏感だったりするが、どこか「恥じらい」「ためらい」のようなものがあるのだ
夫の裏切りにショックを受け、プチ家出をしたり衝動的に男と寝たりしてしまっても、損なわれない何かを持っている
小さいころからずっと幸せに生きてきた人だけが持つ強さ、
好き勝手にふるまおうとしても、範を超えられない(=超えない)強さ
そういう人としての誇り高さは、努力して得られるものではないだけに、憧れるし充分にカッコイイ

女性を中心に描いてはいるが、実は男性たちの姿にも注目すべき
ここに出てくる男性たちは、コテコテに「自分の趣味」「自分の世界」を持っている
今の若者とは比べものにならない濃さはいっそ爽快でさえある
近くにいたらうっとうしいかもしれないが、退職してから家に一日中ゴロゴロいられるよりは、あちこち出かけて楽しんでいてくれていたほうがずっといい

と思う私は、絶対敏子のようにはなれない(笑

2009年9月13日日曜日

九月に読んだ本 その2


読書の秋でございます
熱中症の余波で弱っていた体も、このところの涼しさでようやく元に戻りつつあります
何より読書が普通に出来るようになったのは嬉しい♪

というわけで、再び花村萬月さん「皆月」

第19回吉川英治文学新人賞を獲得しております
他の候補作には桐野夏生さんの「OUT」、佐藤多佳子さんの「しゃべれどもしゃべれども」
などそうそうたるメンバー
映像化もされています
wikiでみたら、奥田瑛二さん主演、由美役が荻野目慶子さん
奥田さんはちょっとかっこよすぎかいな、とは思うものの、こんど借りてみようと思います

「みんな月だった」という謎のメッセージを残し失踪した妻を探しに旅に出る元夫・その恋人の元ソープ嬢由美・妻の弟アキラ
裏社会に生きる由美とアキラは、自分の意思で住んでいる場所を出た、という経験がない
この、やむにやまれず不承不承に出発した旅が、二人にとっては生まれて初めての「旅」だった
というくだり、胸をつかれます

小説を読んでいるときはかっこいい男子や美しい女子が出てくると嬉しいものですが(私だけか?)
こと花村さん作品に関しては、外見はまったく問題にならない
小説だから、というのではなく、登場人物の魂をもろに見せられているようなきがするのだ
妻に捨てられてしまう主人公、ビジュアル的には本当に単なる「おっさん」なんだろうけど、非常に魅力的で、物語が進んでいく間にどんどん惚れ込んでしまう
物語が終わったときはちょっと寂しい気持ちにまでなりました、ハッピーエンドではあるものの、登場人物たちとのお別れがつらい

花村作品はまだまだ未読のものが沢山あるので、ゆっくりじっくり、楽しんで読んでいこうと思います

ところでここに出てくるアキラは「傷だらけの天使」のアキラを意識なさってるのでしょうか
性格や振る舞いは全然違うのに、何となく連想してしまった




2009年9月9日水曜日

九月に読んだ本 その1

その前に「シャングリ・ラ」の話をしておこう、ちょっとだけ

SFファンタジー大長編(といっていいのだろうか)池上氏の本はこれが初めて
ゲームはあまりしないのではっきりはわからないが、「何か使命を持った主人公が」「苦難を乗り越えて」「必要なアイテムを集め」「その世界の王に君臨する」というストーリーは神話を基としたロールプレイングゲームの王道といってもいいかもしれない
形としてはオーソドックスなのだ

あとはキャラだが、よくもまあこれだけ濃いいキャラを自在に操れるものだと感心
しかも、誰も死なない(笑
悪役の小夜子およびそのさらに敵役、というお姉さんなんてもうターミネーターもびっくりというタフさ
そしてもうひとつ
誰も、恋しない(笑
惹かれあいはするが、それはあくまで同じ戦いを戦う戦士としての愛といいますか……つまりは色気がない
けっこう美少女、美人、美男、美人なおカマちゃん、などと魅力的な人物ばかりなので
なんとなくもったいないような、それはそれでいいような

まあとにかく、楽しめました、夏休み向けのエンターテイメント作品といえるかも
長女にも読んでみてほしかったが、もう新学期始まっちゃったし図書館に返しちゃったわ
というわけでティーンの評価としてはまた後日

ちょっとだけといいつつ長くなってしまった、九月に読んだ本まず一冊目

三浦しをん「格闘する者に○」(まる)

けったいなタイトルであるが、通読するとその理由がわかることになっている
三浦さんと私とは年代的に重なる部分がかなりあるので
就職活動における理不尽なもろもろは、相当リアルに感じた
ほおお、このぐだぐだな感じは大学時代につちかわれたのであるな、という事情もよくわかる
(デビューして最初の長編小説らしいので、多分に三浦さん自身がとてもよく出ている、なまっぽい作品)
ストーリーおよび人物は、一般的には相当変わった出来事や人間関係であるにもかかわらず、それをさらさらと「当たり前のように」書いているので、読者は何となく騙されてしまう、なんかフツーの話じゃん?
いやいや違う
フツーじゃないよよく考えてごらん、
なーんてことは
読み終わった後にも一切考えさせない、三浦さんの手腕は本当に大したものである

2009年8月24日月曜日

8月に読んだ本 その2










「まほろ駅前多田便利軒」三浦しをん
爽やかでほろ苦、だが温かい読後感。欲をいえば、毒がなさすぎる感じだろうか。
だがこの心地よい世界は癖になる。挿絵がカッコイイ。てかカッコ良すぎ?

「守宮薄緑」花村萬月
短編集。単に寄せ集めたのではなく、「短編集」として考えに考えた本だという。
どれも読みごたえがあって面白かった。
本人がこれだけ毛色がちがう、と仰っている「犬の仕組」が一番強烈ですばらしく怖く、好き。

今「シャングリ・ラ」池上永一を読んでる途中。何といってもアイディアが素晴らしいし、作家本人がとても楽しんで書いているふうがうかがえて羨ましい(って実際には苦しいのだろうけど)。
読み終わったら「テンペスト」もいってみよう♪

2009年8月21日金曜日

8月に読んだ本 その1

「悼む人」天童荒太
この方の作品は「永遠の仔」をずっと前に読んだきり
文章がうまく物語も起伏に富んでいてどんどん読み進められる感じだったが
なぜかそれ以外の作品には手が伸びないまま現在に至った
最近、文芸誌に載っていた短編を読んだのをきっかけに
実家にあった本書を二日で読破

何年もかけて書き上げた小説だという
決して「社会派」といわれるようなジャンルの小説ではないのに、
巻末の「参考文献」が多いことに驚いた
「悼む人」が荒太さんの中で熟成していくあいだ
TVや新聞やネット、さまざまな本、のなかから
普通に生活するなかから
見たこと聞いたこと思ったこと感じたことのすべて
シンプルで読みやすい文章のなかに
全部こめられている

「いいたいことを全部書いて、なおかつ読者にもその思いが届くような小説」

常にそんなものを書こうと心がけてはいるが
こういう本物を読むと
自分なんてまだまだまだまだ、と思い知らされる
だけど
逆に希望も見えるきがする
荒太さんのように、目指して歩き続ければ
いつかはこんな高みにたどりつくかもしれないと

地上をはいずる私の
夢だけは
荒野を駆け巡るんである

2009年8月8日土曜日

残暑お見舞い申し上げます

蒸し暑い日々が続きます
皆様いかがおすごしでしょうか
さて
わたくしの家は明日からお盆モードです
しばらくネットともお別れです
皆様も
よいお盆休みを

読んだ本
山本文緒「落花流水」

2009年7月25日土曜日

七月に読んだ本 その2

「僕たちの戦争」荻原 浩
こちらも図書館で借りました、荻原さんも実はお初
気にはなっていた作家さん、および作品なので
これは読まねばなるまいと思ったのでした

さてその理由ですが

この作品読まれてない方はここからネタバレです、注意!

茨城の海辺でサーフィンをしていた現代の若者と
終戦前年、同じ海で訓練飛行していた海軍の若者が
入れ替わる形でタイムスリップします
二人は誰もが見間違うほどよく似ていて、それぞれの時代で騒動を巻き起こします

じつは以前、やっぱり現代の若者が突然終戦前年にタイムスリップする
という長編を書いたことがありまして
初めての長編だったもんですから(といいわけ)いろいろ盛り込みすぎて
ワケわかんなくなって最後てきとーにまとめちゃった、と
有体にいえば、失敗作です

なので自身の反省点も含め、人気作家荻原さんがどのようにこのネタを
料理するのかがとても気になったので
借りてしまいました(買ってないところが、ややダメな感じですが)

冒頭から中盤までは圧倒されました
何しろ日本海軍パイロットの生活が事細かに、いきいきと描かれていて
現代の若者をそこに投入したらどんなことになるか
ハラハラしながら読みました
逆に現代にやってきた帝国軍人若者の戸惑いもうまく描かれていた

二つの時代に、違う時代の人間を放り込んで、それを書いていくというのは
なかなか大変です
面白いけど、キツイなあ、どっちかだったらまだ楽なのに
と思いつつ読み進んでいくと・・・・

うーん、やっぱりラストはこうかあ・・・
だよねえ・・・・

タイムスリップの難しいところは、必ず「歴史を変える」という問題がつきまとうこと
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のように開き直ってガンガンいくか
「蒲生邸事件」(宮部みゆき)のように、基本歴史は変えられない、と決め打つか
「時をかける少女」(筒井康隆)のように超限定範囲、にするか
はたまたパラレルワールドがどんどん枝分かれする、そこに焦点をおくか

私が言うのもなんですが、苦労するところはそこなんです
荻原さんも相当迷ったのではないでしょうか
ラスト、ちょっと曖昧すぎかな? とは思ったんですが
ネットのレビューなどをのぞくと、評価は決して悪くない
小説指南本などによく「冒頭が大事。ラストは正直どうでもいい」という説がありますが
確かに読書って過程が大事だよなあ
途中がすごくいいのにラストがいまいち、っていうのはよくあるけど
だからって心底腹が立つ、読んで損したっていうようなのは滅多にない
途中が全然ダメでラストだけいいってことはあり得ないし(ていうかそういうものは途中で挫折する)

とにかく思ったのは
タイムスリップものは、開き直るしかない
自分の決めた論理(きっちり作っとかないとダメ!)に従い突き進むべし!
よーし、いつかこの反省を糧に書きなおすぞ!

2009年7月22日水曜日

七月に読んだ本

図書館でまとめ借りした本の数々についてのメモ

「長い長い殺人」宮部みゆき
えーと、これは「模倣犯」の前振りのような作品でした
最初はそれほど深くつっこまないつもりだったのかな? 何しろ語り手が「財布」
なんとなく可愛い、ですし描写もさすがにうまいのですが
先に「模倣犯」を読んでしまった私には物足りなかった
まだ「模倣犯」いってない方はどうぞ♪

「メタボラ」桐野夏生
朝日新聞に連載していた当時、ちょっとだけ読んだことがあって、ずっと気になっていた作品でした
記憶を失った「僕」の行く末は、続きを読んだら余計迷宮にはまった感じですが
人物造形、構成さすがにうまい
出てくる男子がいちいちダメンズばっかりなんですが、妙に魅力的
桐野さんの作品では珍しく、男子が主人公
女子を描くときのような辛辣さがなく
(辛辣にしようとしてるのにしきれない感じ)
あ、桐野さんこの主人公に惚れてるな、と思いました
そのせいか、相当ハードな話で、微妙にハッピーエンドではないにもかかわらず、読後感はよかった

「吉祥寺幸荘物語」花村萬月
吉祥寺、この間いったばっかりなので、なんとなく借りてみた
実は花村作品はこれが初!
主人公は小説家を目指す若者
女の子と付き合ったことのない非モテ系のビンボー男子が
幸荘の住民たちとのかかわりで成長していく話、と書くと
普通の青春物語みたいだが
そこは萬月さん(ってこれ以外知らないが)
おおおここまで書いていいの?というくらいたたみかける
主人公が経験を積むごとにどんどん自信をつけてかっこよくなっていくのがなんと言いますか
男子的妄想なんですが
こういう妄想なら女子でも読んでて楽しめます、けっこうひどい奴なのになんか憎めない
これは萬月さん自身なのかな、と思ったりしました

「私が語り始めた彼は」三浦しをん
三浦さんのもこれが初めて!
とてもよかった、他のも読んでみたい
不倫を繰り返す男の周辺を描いていくのですが
ひとりひとりが類型におちず
とても魅力的
文章も美しく、引っかかるところがない
適切な言葉を適切な場所で使っている感じ
しかし
最後の書き下ろし部分は、不要だったかもしれんなー
というか、長すぎかなー
いやー、でもだからどうしろと言われると、わかんないかもー
などと思いました
きっちりした構成でとても読みやすく書かれています

「温室デイズ」瀬尾まいこ
瀬尾さんのエッセイはよく読んでいましたが小説は初めて
(そう、今回はほとんど初めてシリーズです)
繊細で的確な視線が気持ちいい
容易に答えが出ない問題を
一気に解決しようとするのではなく
まず逃げずに受け入れる努力をする
口で言うのは簡単だが、実際なかなかできないことだ
中学の先生だそうですが
うちの娘もこんな先生に教わりたいもの
文章もまた優しく心地よい、いつまでも読んでいたい感じ

2009年7月6日月曜日

ラノベのチラ見

最近、中学生になった長女はいわゆる「ラノベ」=ライトノベルばっかり読んでいる
学校の図書室に山と置いてあるそうな
表紙は漫画風イラスト
作者名もどことなく漫画家風な、普通ではちょっとありえない名前
あまりに毎日のように借りてくるので
どんなもんかと開いてみたら

なんじゃこりゃー!

ある場面で八人の登場人物が出てくる、しかも一気に
戦闘シーンとかいうのではなく
一つの部屋に八人がいる
さて、あなたは書けますか?八人の場面

それがどういうのになってるかというと
(名前は仮名、セリフは創作となっております(笑))

「ねえ、ちょっと」
とアリサ。
「なに」
ロン。
「これ誰が撮ったのかな?」
サリー。
「しらん」
カイルがそっけない。
「あーあ、俺やるきなし」
サイモン。
「なんでー? ちゃんとやろうよ」
メイがいう。
「んが」
とピートが欠伸。
「ちょっとって何がちょっとなの、アリサ」
イメルダが聞く。
「俺、これ好き」
マック。
「みんな、ちょっと聞いて」
マリーが立ちあがった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おーい

長女、あんたは確かに漫画好きで
毎日毎日、宿題後回しで読んでたりするが
その一方で
「ハリポタ」から始まって「闇の狩人」シリーズ、「ナルニア国物語」「ゲド戦記」
なんかも読破
宮部みゆきも東野圭吾「ガリレオ」シリーズも読む

そのあんたが

これ

読んでどうも思わんのか???

漫画ならいいぞ
絵があるから
こいつはどういうやつで、という情報がぱっと見で手に入る

最初から読まず、ぱっと開けたところを読んだ私が悪いのかっ
しかし
これは
あまりにあまりに
あんまりじゃあありませんかっ

読んでみるべきなのかもしれんが
時間がもったいない
これなら
「青い鳥文庫」の「若おかみシリーズ」の方がずっとマシ
軽いノリではあるものの
文章も物語も一応しかと形がある

ラノベ、お前はどこにいくんだ
こういうの「だけ」を読んだ若者はいったいどういう風になるのだ?

引き続き研究予定だが
読みたくねぇー
です