「国宝」(小説)
封切り直後に映画を観に行き、その足で上下巻を購入。数日で読破。第69回芸術選奨文部科学大臣賞、第14回中央公論文芸賞受賞作とのこと。

「国宝」吉田修一(2018)
もう新聞を取らなくなって久しいが、この連載は記憶にある。ただ途中からだったせいもあってイマイチ嵌らず、殆ど読んでなかった。独特な語り口に慣れなかったせいかもしれない。てなことを言いつつ、今回最初から読みだしたらこの語り調子がメチャクチャ読みやすいじゃありませんか。いや最初から読みやすかったんだと思うのよ。単に話を全くわかっていなかったせい。すみませんでした(誰に謝ってるんだ)。
それにしてもよくもよくもこの内容を、たった3時間(とあえて言う!)の映画にまとめたものだ。二人に焦点を当てるにしても、この事情あのエピソードこの人あの人、盛り込むより削る方が倍以上勇気とパワーと根気が必要だろう。改めて製作した方々全員に敬意を表します。
そしてこれだけ削って絞って圧縮しまくっても、各登場人物のキャラが全くブレていないのは驚嘆すべきこと。特に徳ちゃんの存在、小説内でこれほどデカい存在なのに映画で省かれていても全く違和感がなかった。というより、映画は徳ちゃんのような人の視線でみた二人の人生か?という気までしてきた。つまり映画でも小説でもそれぞれの人物がちゃんとその中で「生きている」んですわ。私はよく映画観てから原作読む(その逆も)ことをするんだけど、こういう風に思ったことはなかった。映画はただのダイジェストではないし、小説もただの詳細版ではない。別世界線というわけでもない。同じ世界の同じ線上にいる。どちらの喜久雄も「この世ならぬ場所にいる」。
こんな短期間に凄いものを見せていただいて感無量。ぜひ一人でも多く「国宝」を観てほしいし、読んでほしいな、と思います。

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