2017年11月20日月曜日

十月に観た映画と本

超多忙だった一週間が過ぎぐっと下がった気温に応じて見事に風邪をひき(-_-;)気が付けばもう11月後半です。最近ホントに映画館に行ってない。行きたいのに。

「汚れたミルク/あるセールスマンの告発」(tigers)ダニス・ダノヴィッチ(2014年インド・フランス・イギリス)

何かの映画評で見て気になっていたので借りた。


【60字梗概】
粉ミルクが汚水で作られ乳児を死なせている事実を知りながら利益優先で販売を続ける多国籍企業を社員が告発し失職、憂き目にあう。

「エリン・ブロコヴィッチ」のような勧善懲悪の社会派映画かなと思ったら肩透かしを食らう。世の中そうはうまくいかなくて、一般市民としての善意と家族の後押しで告発をしたものの、家族に危害が及びそうになり挫折。仕事も失い、七年間も家族と離れて暮らす羽目になる。個人よりはやはり金と権力を持つ側の方が圧倒的に強いので、現実的にはこんなものだろう。スカッとはしないし少々物悲しいが、当事者とその家族が現在はそこそこ幸せそうなのが救い。


「沈黙 サイレンス」マーティン・スコセッシ(2017米)

遠藤周作原作。これは映画館で観たかった!あの、最初から最後まで極めて日本的な世界、昔から映像化を希望していたというスコセッシがどう料理したのか興味を惹かれた。

【60字梗概】
17世紀、棄教した恩師の真相を知るべく来日した二人の神父。一人は民とともに死に、もう一人は神の真意に殉じ踏み絵を踏む。

弾圧する側の日本を絶対悪とせず、むしろ高い知性と統率力を持ち、情熱で暴走する神父たちよりよほど「まとも」に見えるよう描いた所はさすがスコセッシである。欧米諸国が植民地にしたいところに人を送り込んで人心掌握し、その後攻め込んで占領するという手口はこのころにはもう広く知れ渡っていたんだろうか? 知らぬは世間知らずで純粋な神父たちだけ。島原の乱直後、ご禁制の宗教に縋り、神の救いを信じている貧しい民は唯一の拠り所である彼らを庇い、守るために無残に死んでいく。正直、遠い国からわざわざ来て善良な日本人を「たぶらかし」大勢死に追いやって何してくれてんのこいつら、と思った。現代でも、マルチやカルト宗教・極端な自然派なんかがいろんな理由で苦しみ悩む人を甘言で釣るのと似ている。そのさきはさらなる地獄しかないのに。度を越した無知と純粋は確実に人を殺す。信仰者としては明らかに劣等生であったキチジローが実は一番神に近いところにいた、というのが皮肉でいい。窪塚さんを選んだというのは慧眼。(経歴はご存知なのだろうが)色々とハマりすぎです。
映画館の暗がりでみたらまた違うのかもしれないが、画面がやや明るすぎと感じたのは原作の持つイメージの成せる技か。

「弥栄の烏」阿部智里

「八咫烏シリーズ」最新刊。たまたま次女とともに本屋に行ったら、残り一冊のサイン本が!これは買うしかない、受験生だけどまあいいよね!ということで次女の後に私も読んだ。
前回の「玉依姫」を山内側から描いた話。戦いの描写がよりリアルでハード。親友を失った雪哉が闇堕ちしそうになるところは中々圧巻。結局奈月彦の記憶は戻らないのだが、山内の崩壊はくい止められるのかどうか??
作者の専門が東洋史ということで、出所確かなエピソードがふんだんにちりばめられていて、歴史好きにはたまらない。言霊というか言葉の力が世界を形作り支えているというのもイイ。番外編がいくつか出てるようなのでたぶん買う。

2017年9月7日木曜日

九月に読んだ本

「蜜蜂と遠雷」恩田陸

第156回直木賞、2017年本屋大賞、第五回ブクログ大賞小説部門大賞、等々各賞を総なめにした本作。子供が学校の図書室から借りてきたのでこれ幸いと読んだ(←)。
それにしても最近ハードカバーをほとんど買わなくなってしまった…お金の問題ではない、場所がないのだ。住む場所に対してほとんどこだわりはない私だが、本を置くスペースだけはふんだんにほしい。宝くじ当たんないかしら。ていうか整理整頓をもっと徹底すればいいんだが、今やりたくなーい(いつやりたくなるんだ)。まったくお話にならない。

さてこの本、構成はいたってシンプル、最初から最後までピアノコンクールだ。読んだ直後には、60字梗概を書く意味ないのでは?と思いかけたが、やはりそれは違う。基本に「国際ピアノコンクール」という様々な意味の詰まった確固とした言葉があり、それを柱として物語を紡いでいるというのは大事なことだ。こういうことをやった人、たぶん誰もいない。目の付け所がさすがの恩田陸さんである。

【60字梗概】
国際ピアノコンクールに亡き天才音楽家が送り込んだ少年のピアノは周囲に強烈な影響を与え、やがて音楽の真髄を全員が体験する。

実に情けないことだが私はクラシックに全く詳しくない。ここに出て来る曲でメロディーが即座に浮かんだのは一割に満たない。三割くらいが曲名は聞いたことあるけど…で、あとの六割はさっぱりという体たらく。そんな私が声を大にして言う!「蜜蜂と遠雷」は、
クラシックを全然知らなくても楽しめる小説
だと。
しかし熟知してたほうがさらに楽しめることは確か。ええ、私もやりましたともここに出てきた曲を検索して聴くということを。きっと皆同じことをやってるに違いない、ピアノ動画に挟まって恩田さんのインタビュー動画とかありましたもの。ひととおり聴いて、文庫になったころもう一度読み返したい。
かつてブームを呼んだ「のだめ」のような爆発力はなくとも、じわじわと長い時間をかけて効いてくるような小説だと思う。既に種はいたるところに撒かれている。うーんこういう小説を書けたらいいなあ。

2017年8月28日月曜日

八月に観た映画

引き続き
・選んだ理由と観た後の感想(100字まで)
・梗概(60字)
を書いてみる。

<<<!!ネタバレ・長文注意!!>>>


「誰のせいでもない」 ヴィム・ベンダース(2015)

監督がヴィム・ベンダースだったことが選んだ理由。期待通り、映像が本当に美しかった。色彩、構図、風景の切り取り方、画面の切り替わり、全部完璧。微妙な感情の起伏や変化が言葉でなく映像で十二分に語られている。ショッキングでつらい設定だが、ラストシーンはホッとさせられた。

【60字梗概】
冬の道で起きた不幸な事故は不可抗力ながら当事者とその周囲の人々に深い傷を与えたが、年月を経て新たな道を作り出した。

始まりの悲劇は道で起こり、朝日の射す道で終わる。まさにヴェンダースそのものといった映画。
最近はこういう映画がいつ始まってどこでやってるのとかチェックする暇がなく、話題になっていたかどうかすら知らない。私としてはかなり完成度高めだと思うんだが、一般的な評価が低めなのはなぜなんだ。しかも何でサスペンスってくくりになってるのだ? 完全にいつものザ・ヴェンダース’sロードムービーだと思うんですが…。(といいつつ昔観たロードムービー三部作は忘却の彼方)
改めて監督のプロフィールを見直してみると、若い頃からまあ挫折の連続。哲学科を志したが挫折から始まり、画家・彫刻を学んだが挫折、映画もすぐには芽が出なかった。人生における衝撃的な出来事が、次の瞬間から否応なく日常に取り囲まれ流れる時とともに揉まれていくこの感じ、苦労と挫折の中で生き抜いてきた監督ならではの表現なのかもしれない。
何があろうと生きている以上前に歩き続けるしかない。だが、故意ではないにしろひとりの子供を轢き殺してしまった事実は消えないということを忘れてはいけない。
こうして文に書いてしまうと当たり前じゃん、と思うが、実際この二つを同時に実践するのは簡単ではない。主人公はきわめて誠実かつ感情の抑制がきく良識的な人物ではあるけれど、懸命に支えてくれる恋人に甘えて傷つけたり、立ち直ってからも被害者家族に対し上から目線な冷たい口をきいたりと、たびたび小さな過ちを犯す。結果的に両者とも正面から向き合うことができ、ひとつ階段を上がってまた人生を歩んでいく…といった感じで終わるのだが、罪を犯した場合の身の振り方を明確に示した良映画だと思う。ちなみに前回の記事でとりあげた「冷血」で出て来る「パリ、テキサス」はヴェンダースの名作。

「ラ・ラ・ランド」 デイミアン・チャゼル(2016)

アカデミー賞総なめの映画。とはいえまったく事前知識なし。映画好きな人にはたまらない映画とだけ。最初ななめ観していたら話がよくわからなくなり結局二回観た。最初の印象とはまったくちがう内容で素晴らしかった。

【60字梗概】
ロサンゼルスで夢を追う男女が出会い恋をする。お互いの夢は実現していくが徐々にすれ違い、遂には別々の道を歩むことになる。

正直最初はちょっと退屈だった。ヴェンダースを観た直後だったのもよくなかったのかも(作り方が全く違う)。日を改め、「ミュージカル映画ではない」「映画好きがよろこぶ映画」という評を思い出しつつ観たらいけた。ダレてるように見えたストーリーも、中盤からかなりいい感じに。二人の恋がかなうまではわざと陳腐にしてたのか?と思う位。特に別れのシーンがとてもいい。お互いに愛してるといいながら、お互いを尊重しながら無理に笑顔を作っての別れ。そこから繋がる夢、「もうひとつの」未来を描くエピローグが切ない。よくある単純な恋愛ドラマ、単純なサクセスストーリーを下敷きにしながら、ここまで感動的な映画を作れるのは本当にすごい。日本とはエンターテイメントの歴史も違うしベースにしているもののレベルも思い入れも、何もかも違うと実感させられる。かないませんわーホント。


「スターウォーズ ローグ・ワン」 ギャレス・エドワーズ(2016)

選んだ理由はもちろん「スターウォーズ」だから!
この圧倒的な存在感と濃密な世界観は他にはない。さらにこの映画に関わった人たちの並々ならぬスターウォーズ愛がこの映画空間をより一層輝かせている。

【60字梗概】
帝国軍に拉致され兵器デススターを作った科学者の娘が反乱軍に協力し、設計図を手に入れ味方に送信後、攻撃により死亡。

反乱軍の中も一枚岩ではない、単なる善悪の戦いではないといった視点が今風。これだけの犠牲の上に、ルーク・レイア・ハンソロの活躍が繋がると思うと胸熱。もう何の文句もない。手放しで楽しめました。
しかしこれだけ長いシリーズだと、自分が生きてる間に終わってほしいようなずっと続いてほしいような。