2018年1月9日火曜日

年末年始にかけ読んだ本

2018年明けましておめでとうございます。
旧年中、このような辺境のブログにわざわざお越しいただきました皆さま、誠にありがとうございました。今年はおさ子のまとめサイト的なものを作ろうと目論んでおりますので、その節にはまたどうぞよろしくお願いいたします。今年中に公開できることを祈って、あえて発表(背水の陣)。

多忙な時期を縫って読んでいた本。例によってネタバレ注意です。


「童話物語」
上 大きなお話の始まり
下 大きなお話の終わり 向山貴彦

中学生の子供の成績が上がったご褒美に買った。本人はあっという間に読了、「おかーさんも読んでみたら?」とほぼ無理やり押し付けられた由。


60字梗概
世界を滅ぼすか否かの問いを解くために来た妖精フィツと孤児ペチカが共に旅をし、人心を惑わす魔物と戦い勝利、世界は継続する。

設定として、指輪物語のごとく壮大な言い伝えがあったが残存しているのはこの話だけとされている。元々映像にするつもりで製作したらしく、その世界で使われている言葉や道具、仕組みなどイラスト付きの資料あり。物語自体はオーソドックスで、旅立ち→戦い→勝利→成長といった王道な構成。
妖精フィツが終盤までほぼ役立たずなのに対し、ペチカが人間としてのいい所悪い所を含め全て持っていて、したたかに物語を引っ張っていくところが面白い。主人公格としては屈指の性悪さがいかにも人間臭く、中々に痺れる。アニメ化してくれないかなあ。真夜中枠必至だろうけど。

「悲嘆の門」上中下 宮部みゆき

「英雄の書」の続編というか、サイドストーリー?のようなもの。

60字梗概
男子大学生が殺人事件に巻き込まれ、異世界の守護戦士から能力を借り犯人達を裁くが、自らの誤りに気づき現実に呼び戻される。

「英雄の書」の世界と繋がる話なのだが、やはり危惧していた通り、現実世界からファンタジー世界に移行するあたりから正直少し白けてしまった。ファンタジー世界にリアリティが感じられない、というのも変な話だが、どうにも主人公の振舞いに必然性を感じられない。ガラの力を借りて悪者を成敗するにしても、怒りにかられたとはいえ相手にたいしストレートにお前が犯人だろう!と言って強引に自白にもっていくのはさすがに唐突感がいなめない。せっかく言葉を読む能力があるのだから、それで都築と協力し証拠を調べ上げて真っ当にスピード逮捕に持って行く、という形の方が主人公のキャラにも合っているし、終盤の事件での「闇堕ち」にも説得力が大いに出たと思う。
主人公をはじめ登場人物の背景や性格、抱える事情などはもちろん丁寧に作り込んであるしまとまっているのだが、それが現実世界を離れた途端にバラバラに四散してしまった感がある。最大に残念だったのは、主人公がバイトする「サイバー・パトロール社」の扱い。いたく興味を惹かれる設定なのに、その業務に関してほとんど言及がないしストーリー運びにもさして関連性がなかった。これを主テーマにしたら社会派小説が何作も書けそうなのに…。惜しい。
ただ言葉の根源の世界の構成とその描写は精緻で、凄みがありとてもいいと思った。終盤からラストに向けての流れには、宮部さん自身の、言葉に対する畏れを含んだ真摯な姿勢が伺える。だけど、やっぱり私は社会派な作品がいいなあ…。個人的な好みに過ぎないが。

2017年12月21日木曜日

末摘花 十一

 そんなわけでアテクシ侍従、年明けには常陸宮でのお仕事確定いたしましたー!イエー! だけどその前に大輔の命婦さんから聞いた話を補足しとくね。

 例の姫君のお歌が書いてある陸奥紙(無駄に高級な楮紙)、ヒカル王子が端っこにいたずら書きしたんだって。こんなかんじ↓

「特に縁があったってわけでもないのに
どうしてこんな、末摘花に袖触れる羽目になったんだか。
えらく色の濃い花とは思ったが」


花って……あっ(察し

 大輔の命婦さんも、ぶっちゃけ真正面から姫君の顔みたことはなかったんだけど(深窓の御令嬢だから身内にすら滅多なことでは顔見せない)、付き合い長いから何となく雰囲気はね……ヒドイわー酷すぎるわー王子と思いながらもウッカリ笑っちゃったって。(ナイショよって言ってた 笑)。

「紅に一度染めした衣が色落ちして薄くなってるからって
評判まで落とすようなことはなさらないでほしいですわね
(不遜すぎますわよ! 笑)」


ってサラっとフツーに返したら王子溜息まじりに「せめてこの程度の返しでも普通に言えれば…」ってうなだれちゃって。でもさ、なまじ身分が身分だし、

ねーねー聞いた? あそこのお姫さん正妻さん差し置いてヒカル王子にすっごいダっさい衣装贈ったらしいわよー世間知らずにも程があるわよねー

なんて笑いものになったりしたらさすがに可哀想だし亡き宮にも申し訳が立たないじゃない?

「とりあえず人が来る前に隠しとこうかこれ。お世辞にも常識的な振舞いとはいえないしさ」

命婦さん、慌てて物蔭に突っ込んでそそくさ逃げてきたって。

(あー何で王子に見せちゃったし私…やだわー、こっちまで非常識と思われちゃう…)

って後々まで凹んだらしいよ。命婦さんちっとも悪くないのにね。

 その翌日。命婦さんが内裏でお仕事中、ヒカル王子が台盤所(女房さんたちの詰め所みたいなとこ)に立ち寄って

「ほい、昨日の返事。ちょっと気合入れすぎたかも?」

って投げ入れてきたもんだから、周りにいた女房さん達何何?って寄ってきて興味津々。誤魔化すだけでも大変なのにヒカル王子ったら、

「ただ梅の花のよな、三笠の山の乙女は捨てて♪」

 とかなんとか口ずさみつつサッと消えちゃったもんだから、命婦さんこらえきれず吹きだしたら、女房さんたち騒ぐ騒ぐ。

「命婦ちゃん何一人で笑ってんの! どういうことか教えなさいよ」
「いえいえ、そんな大したことじゃなくて。ほら例の『たたらめの花のごと懐練好むや』て、赤鼻を紛らすため赤い懐練を着ていたのをいつだか見つかっちゃったテヘ☆って歌を王子が歌ってたものだからつい」
「何それ!意味わかんないんだけど! そこまで言われるほど赤鼻の人なんかこの中にはいないわよ?ねえ?!」
「左近の命婦さんや肥後の采女さんでも鉢合わせたのかしら?」
アタシたちのことじゃないわよねーそうよねーといつまでも姦しい女房さんたちでしたとさ、と。

 ……え? 意味ワカラン? あ、そりゃそうか……平安の流行り歌だからね……んー、侍従ちゃーん!説明お願い!

はい、ごぶさたしております、最近出番の少ない侍従です。つうか更新の頻度が低すぎよね。何とかならないかしらね。
王子の歌ってたこの「ただ梅の花」の部分、当然末摘花の姫君の赤鼻を当てこすっておりますので「紅梅」だと考えられていますが、実は
「ただうめ」→「たたらめ」
なのでは?という説もあります。確かにひらがなにして濁点なくすと似てますね。
ちなみに「たたらめ」とは鍛冶の炉を司る巫女のこと。三笠の山は、鍛冶に必要とされる槌(つち)の神である建御雷命(たけみかずちのみこと)を祭る春日神社の神域です。これに奉仕する「三笠の山のをとめ」が「たたらめ」とつながるというわけです。

たたらめの鼻(炉の前だから赤くなる)
→たたらめの花(何の花か不明ですが赤いらしい)
→赤い、
と。平安時代よくありがちな引っ掛け&連想ゲームですね。ま、なんにしヒドイ言われようです。

侍従ちゃんありがと。わかったかな?わかんないお友達は「たたらめ」「源氏」「末摘花」とかで検索!間違いとか新たな発見あったらコメント欄で教えてね、ヨロ!(^^♪

さてさてその後常陸宮では、届いた王子の返事に女房達が集まってほほーっと見入ってる。 

「逢わない夜の方が多いのに、間を隔てる衣をくださるとは
ますます逢わない夜を重ねなさいっていうの?」


何重にもオブラートに包んで(非常識だよ気をつけてね!)っていってるのに、真っ白な紙にサラサラッと書いたオシャンな雰囲気に惑わされてだーれも気づかない。まあそこは想定通りなんだけど。

 大晦日の夕方に、例の仰々しい御衣裳箱ね、あれにヒカル王子自ら見立てた女性用の衣裳一そろい、葡萄染めの織物、他に山吹襲か何襲かよくわかんないけど色とりどりに詰め直して大輔の命婦さんが持ってったわけ。
さすがに
(この間贈ったやつが良くなかったってこと……?)
って気づいたみたいだけど(遅い)、そこは無駄にポジティブな古いオバ……女房さんたちでさ。
「いえいえあれだって、重厚なアンティーク紅色ってやつですから! この衣裳はいかにも今時な色ですけど、決して見劣りはしてませんことよ、ええ」
「お歌だって、こちらからのは一本筋が通ってるっていうか、抜けのない、まさにカンペキ?て感じですわ」
「それにひきかえ王子のご返歌……まあ面白いことは面白いですけれど、ごめんなさい。ちょっとチャラめですわよね!」
 何この上から目線。て感じなことを言い合ってる。姫君のほうも、あのお歌は姫的に最大限の力で絞り出したもんだから、メモ書きして永久保存~てしてたって。命婦さんもいい加減呆れてなんも言えねえ……って早々に引き上げてきたらしい。ホントお疲れさまです。ていうかアタシやっぱ早まったかなあ……小顔マッサーは魅力的だけれども……だいじょぶかしら。。。うーん。。。

>>「末摘花 十二」につづく
参考HP「源氏物語の世界
「宮口善通のBlog:源氏物語の中の音楽(たたらめ:衛門府の風俗歌)・・・「末摘花」より」

2017年12月5日火曜日

末摘花 十(オフィスにて♪)

「侍従ちゃん?」
「なあに右近ちゃ……じゃなかったっ大輔命婦さん!?」
「ごめんね忙しいのに。師走だものね。ちょっとだけいい……?」
「いえいえいえ!だいじょぶですよ!大輔命婦さんのお望みとあらばうちのウルサイお局さんだってなんもいわないし!いいところにいらっしゃいました、ついさっきお正月準備の荷物届いたばっかで。何でも言ってください♪」
「ありがとね。でも、そういうことじゃないの。ちょっと話を聞いてもらいたくて」
「え……そ、そんなウルウルした瞳で見つめられたらアタシ……」
大輔命婦の白くしなやかなてのひらが、侍従の手を優しく包むこむ。
「わ、わかりました!お茶、お茶しましょう! ちょっと右近ちゃんに頼んできますね!右近ちゃーん!」
……
「で」
「ん、これ超おいひい(ごっくん)異次元の味! いやマジで! 右近ちゃんも食べなよーせっかく大輔命婦さんが持ってきてくれたんだしさ」
「まーた常陸宮でタダ働きってことね、しかも新年早々」
「えータダじゃないよー等価交換てやつう? 今大流行りで滅多に手に入らない帝御用達スイーツいただいちゃったしー、さっきちょっとだけ揉んでもらったしー。はー肩も首も軽ーい♪」
「ったく、まんまと騙されちゃって…」
「首尾よく任務完了したらまた揉んでもらうんだー、全身コース♪ 小顔効果もあるってさ」
「……え、それちょっとうらやましいかも」
「でしょ♪右近ちゃんも来ちゃう?」
「いやまあ……でもさ、どういうことなの? ヒカル王子が新年の挨拶に御みずから常陸宮家をご訪問、て随分破格な待遇よ? 正妻さんじゃあるまいし」
「まさにそれよ右近ちゃん! あのお姫さまったらやらかしちゃったのよ……いきなり王子のための新年の衣装をご用意しちゃったわけ
「えええ……そうなんだ。もしかして右大臣家の正妻さんの存在知らないのかな?しかしチャレンジャーだわね、あの好みにウルサイ王子に」
「でしょー。普通できないよね?大体王子の普段着のインナーだって多分、アタシたちの少ないお給料何か月分?!だし、まして新年用の晴れ着なんてもう無理無理無理!想像もできないっ」
「どんな衣装だった?すっごい興味あるわ。今だったら速攻写メでSNSよね平安て不便ー」
「んーあんまり、イン〇タ映えはしない感じかな…命婦さん預かったものの、王子に渡していいものかどうか何日も悩んだみたいよ…」
「ああ……(察し)」
「でも曲がりなりにも宮家のお姫様の意向だし、自分んちに保管したまんまってのもやばいから結局持ってったんだけど、お手紙渡した時点で王子ドン引き」
「一応お歌は詠んだんだ」
「それがさー、
『あなたのつれないお心が辛くて、私の袂はほらこのように……涙で濡れるばかりですわ』
って、引っ掛けも二重の意味もなーんもないそのまんま和歌が、陸奥紙にバーっと書かれてたって」
陸奥紙……檀紙かあ。高級な紙ではあるけど、恋文に使うには厚すぎかもね」
「そうなんだよね。薄い紙だとお香もほんのりだけど、厚手の紙にガッツリ匂いつけちゃうともう風情も何もないわよ。香害よね。その上衣装がまた古くて……中古とかユーズド感とかどころじゃない。一応流行り系の薄紅色だったから、着慣れて少々色がくすんでるーくらいだったら逆に渋くてステキなんだけど、限度超えてたってよ。
しかもよ! 表地と裏地、この色合わせが平安男女最大のオシャレポイントじゃん?!なのに全く同じ色で特に裏がメッチャ濃ゆい色。それがチラチラ端から見えて、とてつもなくダサい
自分の責任じゃないにしろ、超恥ずかしかった…って命婦さん涙目になっちゃってて色っぽかったー!」
「何やってんのあそこの女房さんたち…年寄りばっかりだしボケてんのかしら」
「色々とズレてんのよね。由緒正しきお家柄だから歴史的な慣習もあるだろうし気持ちはわからなくもないけど、正直王子に見合うだけのおもてなしをする財力もセンスも今はないんだから、少しは現実見ないと。まあ今みたいにネットでニュース見られるわけでもないし、ツイッ〇ーやイン〇タやF〇とかで今の流行りとかセレブ有名人の暮らしがどうだとか知る手段ないから仕方ないんだけどね」
「ってわけで新年早々現実的な対応をしに行くわけね、侍従ちゃん」
「そうなのよ右近ちゃん! だって……うふっ、やっぱり言っちゃお。ヒカル王子ったらね、姫君のお歌をみたときに
『前にいたあの、何て言ったっけ若くて可愛い子。そう侍従ちゃん?あの子に直してもらうかしたらよかったのに』
なーんて言ってたんだってー!キャー!もうコレ行くっきゃないじゃん?!ああ待ってて王子、この平安ステキ女子の侍従ちゃんが目に物みせてくれるわあ!」
「……可愛い、ていうのは命婦さんの盛りじゃないかなあ」
「何?」
「ううん、何でもない。頑張ってね。応援してる(はあと)」
「ありがとー!」

>>「末摘花 十一」につづく
参考HP「源氏物語の世界