おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

「チリンの鈴」「野生の証明」

2025年7月9日  2025年7月9日 

  毎日暑すぎて無理。なので溜めた録画を消化中。



「チリンの鈴」波多正美(1978)

 朝ドラ「あんぱん」で出てる(?)やなせたかしの絵本をもとにしたアニメ。この年代だとちょうど観てないなーと思ったらやはり未見だった。母を狼に殺された羊が復讐を誓い、強くなるためにその狼に弟子入りして鍛えてもらうという、のっけから「なんでやねん!」となる筋立てだがそこは絵本なのでまあ。放映されたのはNHKなんだけれども、始まる前にやなせたかしさんのこの作品に関する言葉:

「悪者は最初から最後まで完全に悪いわけではありません。世の中にはある程度の悪がいつも必要なのです。現実の社会はそういうところが厳しい」

が印象的だった。以下ネタバレしまくりなので下げる:




逃げ隠れして震えてるだけの弱いものとして生きるのは嫌だ!強くなりたい!と願った子羊チリンはその望みを母を殺した狼の教えによって叶え、何なら仇討ちも完遂するのだが、そうなった時には師の存在も消え、元の世界にも戻れない。果たしてその「望み」とは何だったのか?それは本当に「正しかった」のか?

「あんぱん」でも「戦争についてどう考えたか」を聞かれたタカシが「正義は絶対的なものではない、その人の立場や視点によって変わるものだ」(うろ覚え)的なことを答えていた。この辺さすがは従軍経験者というべきか。短いけれどなかなか含蓄に富んだアニメだった。


映画.comより

「野生の証明」佐藤純彌(1978)


 おお、これも同年上映だった(偶然)。角川映画全盛期の、超絶贅沢なキャスティングと派手なアクションには今観ても驚かされる。そして誰より薬師丸ひろ子さんがイイ!これが映画初出演の13歳とは思えない存在感。のちにご本人が、高倉健さんが右も左もわからないド素人の私をとにかくよく面倒みてくださって……とどこかで語っておられた通り、役柄以上にガッツリ庇護してる感がうかがえる。普通の女の子然としていて初々しいのに、その目の輝きだけが異質なんだよね。よくぞよくぞ選んだ。素晴らしい。

 ストーリーはまあ、、、原作とは全く違うし、ただただ荒唐無稽というに尽きる。特に自衛隊。wikiによれば、

当時の自衛隊は映画やドラマに協力することはなく、ましてや、『野性の証明』では自衛隊は敵として描かれていることもあり、しかも、反体制的な人間が多かった当時の映画側から自衛隊へ撮影協力を依頼することもなかった[1]。結局、最後の戦闘シーンのロケは日本では不可能だったので、角川映画は自前でエキストラ集団「野性軍団」を用意し、アメリカで撮影が行われた[1]。」

 ということらしい。確かにこの設定(自衛隊の秘密特殊部隊=冷酷非情な人殺し集団)じゃ無理だわ。私みたいなニワカでもメッチャ違和感ある「演習」で「戦闘」だったもんなあ。戦車がバンバンぶっ放すすぐ脇で隊員歩いてるし、その癖何でヘリ一機に狙撃手一人なんやねん援護ないんかいとか、いや一般隊員ころしちゃったら流石に色々隠しきれないだろとか、そもそもこんな潤沢に武器使いまくる予算どこから……等々ツッコミどころは無限大である。

 有名なラストシーンは、「負けるとわかっていても、最後の一人となっても、巨悪に抵抗し立ち向かう(=ネバーギブアップ)」姿を体現したってことなんだろうが、あーーーなるほど、学生運動をやってた方々の「闘争」イメージってこれなんだな、と腑に落ちた。冒頭でアメリカ大使と家族を人質にとりアジりまくる反政府武装ゲリラの姿が望ましくない成れの果てとすれば、ラストのこれは理想形()なんかもしれない。確かにカッコイイのはカッコイイ、高倉健さんが。高倉健さんのキャラありきの場面。実際には絶対にありえない絵面だし二度と撮れない内容という意味で貴重でもある。

 それにしてもこの映画って超ヒットして、テレビでも何回か放映されたと思うが、私が一番自衛隊関係で印象に残ってるのは「戦国自衛隊」(1979)の方なんだよねえ。こっちも角川映画だし荒唐無稽だし(SF)、自衛隊は殆ど協力していない(民衆への攻撃・無断離隊・隊員同士の戦闘等)。いやそりゃあそうですやろ、と今ならわかるが、未だに自衛隊を人〇し集団などと言う人々は、このイメージから何もアップデートされてないんと違うかな。世の中の色んな陰謀論を集めて煮詰めた完全ファンタジー映画だっていうのに。逆にこの映画観直すでもして目を覚ませ(誰に言ってる)。

 というわけで色々と興味深く、面白かったです。

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