2009年9月15日火曜日

九月に読んだ本 その3


桐野夏生さん「魂萌え!」
ドラマ化・映画化もされております(残念ながらどちらも観ていません)
前回「グロテスク」を読んだときと同じように、一気に読み終わりました

突然伴侶を失った妻の混乱を描いた話で、桐野作品には珍しく明るいラスト
(いや、よーく考えると明るくはないのかもしれない)
主人公・敏子は59歳で、夫は会社を定年まで勤め上げた真面目なサラリーマン、都内に古いながらも一戸建てを構える、年金も一か月十五万ほどある
いわゆる「最後の恵まれた世代」
桐野さんのことだから、かなりキツイ書き方をするかと思いきや、主人公およびその周辺の、同年代の女性たちに対する視線は優しい
今まで読んだ桐野作品では大概、出てくる女性を突き放し突き放して書いていて、好きになるというより憎むというのが、主人公に対するこの作家のスタンスなのかしらと思ったりしていた
「魂萌え!」の二、三作あとに、「メタボラ」なので、この辺りからスタンスが変わったのかもしれないが、最近のを読んでみないとわからない

ただ、敏子さんはとてもいい人というか、本当に育ちが良くて、悪く書こうにも書けない、ような気がする
女性特有のいやったらしさというのはあるにはあるが、それがぎりぎり嫌悪を感じない程度に抑制されている
それは作者が無理にそうしたのではなく、敏子さんのキャラクターがそうさせているのだと思う
敏子の世代は、「男は仕事、女は家庭」「女は貞淑、男の浮気は甲斐性」が当然だった世代よりは下だが、古い価値観が体のどこかにしみついている
元気で行動的、流行にも敏感だったりするが、どこか「恥じらい」「ためらい」のようなものがあるのだ
夫の裏切りにショックを受け、プチ家出をしたり衝動的に男と寝たりしてしまっても、損なわれない何かを持っている
小さいころからずっと幸せに生きてきた人だけが持つ強さ、
好き勝手にふるまおうとしても、範を超えられない(=超えない)強さ
そういう人としての誇り高さは、努力して得られるものではないだけに、憧れるし充分にカッコイイ

女性を中心に描いてはいるが、実は男性たちの姿にも注目すべき
ここに出てくる男性たちは、コテコテに「自分の趣味」「自分の世界」を持っている
今の若者とは比べものにならない濃さはいっそ爽快でさえある
近くにいたらうっとうしいかもしれないが、退職してから家に一日中ゴロゴロいられるよりは、あちこち出かけて楽しんでいてくれていたほうがずっといい

と思う私は、絶対敏子のようにはなれない(笑

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