おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

夕顔 最終話 ~楽屋にて~

2015年12月25日  2022年6月8日 
「右近ちゃーん♪」  「侍従ちゃん!」 「お疲れ様ー! とっておきの玉露、淹れてきたわん♪」  「ありがとうー! 持つべきものは友達ねえ(涙)一緒にさっきの八つ橋いただきましょ♪ 侍従ちゃん、そこ座って。はい、お座布団」   がさがさ、もぐもぐ  「ふーん、おいひいー♪」  「お茶にあうわー♪」  「ところでさ右近ちゃん」  「なあに侍従ちゃん」  「ヒカル王子さ、右近ちゃんに 『 女はかよわくてでしゃばらず、騙されても気づかない、つまりちょっと頭弱い子がいいよね 』 なーんていってたけど」  「あー(笑)まあまとめるとそんな感じだわね」  「はー、ほんと男ってさあ……でもね右近ち…

夕顔 ~右近ひとり語り~ その八(最終章)

2015年12月25日  2015年12月25日 
>>>  その一 その二 その三 その四 その五 その六 その七 幕間 十三  さてそれからまた幾日かのち、夕顔のお方さまの四十九日の法要が、比叡山の法華堂にて人目を忍びつつ、しめやかに行われました。  正式な作法に則り、装束をはじめ必要なものを事細かに揃え、読経もさせられました。経典や仏像の飾りに至るまできっちりと行き届き、惟光さまの兄上である高僧の阿闍梨さまが、それは見事に催してくださったのでした。  光君の学問の師で、親しくしてらっしゃる文章博士をお召しになり、願文を作らせることまでなさいました。誰とは言わず、亡くなった恋人を阿弥陀仏にお譲りすると…

夕顔 ~右近ひとり語り~ 幕間

2015年12月24日  2022年6月8日 
……ただいまより、十分間の休憩に入ります……  「右近ちゃーん!」  「あら侍従ちゃん、来てくれたのねん♪」  「当然じゃなーい。右近ちゃん、スッテキだったわー♪ラストも楽しみー」  「はー、超疲れるー、ひとり語りってすっごい大変。よそ行きの喋り方だしさー」  「ほらほら、差し入れ♪京都黒ゴマ八橋どすえ」  「きゃーありがと。終わったら食べるわ、はあ」  「ところでさ、右近ちゃん」  「なあに侍従ちゃん」  「空蝉さんの話、知ってる?」  「ううん。この間からずっとここに詰めっきりだもん、すっかり浦島太郎よ。何?」  「またお手紙出したみたいよ、王子に」  「へえ」  「今度伊…

夕顔 ~右近ひとり語り~ その七

2015年12月24日  2022年6月8日 
>>>  その一 その二 その三 その四 その五 その六 十一  夕顔のお方さまを野辺にお送りしましたそのあと、わたくしは二条院に呼ばれ、光君のお側近くにお部屋をいただき、お仕えすることになりました。  慣れない屋敷で、悲しみに沈みがちのわたくしを、惟光さまも何くれとなく、面倒をみてくださいました。  わたくしはこの通り、さほど美しくもない普通の女でございますから、光の君のお屋敷に住み、時折お話し相手になることなど、夢にも思っておりませんでした。悲しみのあまり床についた光君は 「あの人とは、本当に不思議なほど短かった縁だった。私…

夕顔 ~右近ひとり語り~ その六

2015年12月24日  2022年6月8日 
>>>  その一 その二 その三 その四 その五 九  やっとのことで、惟光朝臣さまがご到着なさいました。    夜中といわず早朝といわず、常に光の君のみ心のままつき従っておりました方が、今宵に限ってお側にいらっしゃらなかった上に、なかなか捕まらなかったものですから、光君は随分と恨んでらしゃいました。  ですが実際に惟光さまを目の前にしますと、あまりにあっというまの出来事をどうお話してよいやらわからなくなったようで、一言も言葉が出なくなってしまわれました。  わたくしは惟光さまがいらしたことで、これまでのすべて…

夕顔 ~右近ひとり語り~ その五

2015年12月23日  2022年6月8日 
>>>  その一 その二 その三 その四 八  誰も、どうすることもできませんでした。 「いったい誰にこんなことを相談できるというのか。坊さんぐらいか? 役に立ちそうなのは」  お若い光の君はそんなことを言って強がったものの、亡くなった人を目の前にどうしたらいいのかおわかりにならず、お方さまの身体をひしと抱き、 「ねえ、ねえ君、生き返っておくれ、こんな悲しい目にあわせないで」 と繰り返されました。  が、その身体はますます冷え、生前の気配もむなしく薄れていくばかりでございました。  わたくしは恐ろしさもいっぺんに忘れ、 「…

夕顔 ~右近ひとり語り~ その四

2015年12月23日  2022年6月8日 
>>>  その一 その二 その三 六  その夜。  お二人が眠られたので、わたくしたちも休ませていただき、ほんのすこしとろとろ、としかけた頃でございます。  光の君とお方さまの枕上が、  ぼう と白く光りました。  夢なのかもしれない、と思いながら、重いまぶたを押し開けて目を凝らすと、女が見えました。  髪の長い、姿のうつくしい女が、お二人を覗き込むように、座っておりました。  わたくしは  あなたさまをかけがえのないお方と、こんなに  こんなに……お慕い申し上げておりますのに  わた…

夕顔 ~右近ひとり語り~ その三

2015年12月22日  2022年6月8日 
>>>  その一 その二 四 「ねえ、ちょっとその辺の近いところで、気楽に夜を明かしてみない? ここだとどうも落ち着かなくてね」 という光君のご提案に 「あら、いくらなんでも急すぎませんか」  お方さまはいつものように、賛成も反対も致しません。  私たち女房も、お方さまへのひとかたならぬご愛情をお傍近くで見知っておりましたから、少々無茶なご提案に不安を感じながらも、ただ男君を信じて従うほかはありませんでした。  夜明けも近づいてまいりました。  鶏の声はまだでしたが、…

夕顔 ~右近ひとり語り~ その二

2015年12月22日  2022年6月8日 
<<<  その一 二  わたくしの仕えておりましたご主人、ここでは「夕顔」のお方さまとお呼びすることにいたします。  光の君と夕顔のお方さまの仲は、北の方はもちろん、他のどなたもご存知ありませんでした。ましてや六条の御方さまなど、いっさい知る由もないはずでございました。  初めはほんの遊び心でいらっしゃいました光君、日を追うごとに夕顔のお方さまにお心を奪われていかれますのが、わたくしのような者にさえ、手に取るようにわかりました。ただ、やんごとないご身分とお立…

夕顔 ~右近ひとり語り~ その一

2015年12月22日  2022年6月8日 
今宵は月が美しゅうございますね。 あの日も……同じように月の輝く宵でございました。 この婆めが右近と呼ばれておりました、もう遠い遠い昔のことでございます。 あの頃のわたくし…… 思いもかけぬ出来事に出遭い、ただただ胸がつぶれそうなほどに悲しく辛く、生きながらえてまたこのような場に出ることなど想像もつかないほど、酷い有様でございました。 時の流れとは無常なものでございます。 思い出すのも苦しかった日々も、矢のように過ぎてゆきました。今はこうして語ることが、懐かしく慕わしいお方さまの一番のご供養になるものと信じ、残りの命を奮い立たせております。 はて、どこ…

夕顔 その四

2015年12月20日  2022年6月8日 
さて惟光担当の、あの西隣の家の偵察だが、 さらに詳しい最新情報入手! なのである。 「 何者なのか、さっぱりわかりません 。 ただ必死に隠してるっていうのだけはわかります。 牛車出入りするたびに女子が興味津々で、南側の半蔀のある長屋のあたりで覗き見してますね。 たまに女主人らしいのも一緒に覗いてますが、どんな顔か? いやそれがはっきり見えませんけど、 かなり可愛い みたいです。 それでこの間のことですが、小者らに交通整理させてゴーカな車がやってきましてな。 それ見た女子が、つい、 『ちょっとちょっと右近の君、早く御覧なさいよ。 中将様 がもうすぐいらっしゃるみたい!』 …

夕顔 その三(オフィスにて♪)

2015年12月17日  2022年6月8日 
「ねえねえ右近ちゃん」 「なあに侍従ちゃん」 「 空蝉 さんてさー、結局どーしてんの?」 「旦那さんが伊予から帰って来てるみたいよ、今」  ※空蝉の夫は地方受領 「あらま。じゃあもう、お屋敷に忍び込むなんてことできないわよね。王子はさすがに諦めたのかしらん」 「それがね、まだまだ未練たーらたら。あそこまで冷たくされた経験がなかったもんだから、逆に忘れらんないのね」 「逃げまくったことで、余計追わせることになったと。世の中ままならないわねー」 「あら殊勝なことをおっしゃる侍従ちゃん。そ、素直に受け入れて楽しんでくれてたなら、ワンオブいい思い出♪ってことになった…

夕顔 その二

2015年12月17日  2022年6月8日 
数日後。惟光がヒカルの元にやってきた。 「うちの母の調子がイマイチなので、またまた世話をしに行っておりました。それでですね」 ずずずと近寄って内緒話。 「気になる例の隣の家の件、顔見知りの下働きが一人おりましたんで、どんな事情の家なのか聞きましたが、口ごもるんですわ。はっきりせんかいって散々責めましたらようやく口開きまして。 『 五月ごろから、こっそり男が通いだしたんですわ 。いや誰か知りません、奥さん、私ら家の者にも隠してます。ほんとにそれ以上知りませんのですわ』 穏やかじゃないでしょ?  俄然興味湧いて来たので、垣根ごしに覗きました。 そしたら確かに若…

夕顔 その一

2015年12月14日  2022年6月8日 
久しぶりの「ひかるのきみ」再開です。「夕顔」の段、2008年5月にもうひとつのブログで公開したものを加筆修正しました。 今見るとこっ恥ずかしいことこの上ありませんが、せっかくなので置いておきます(^_^;)。 「夕顔」の段、始まる前にちょいと解説。 「空蝉」以来、堰をきったように恋の遍歴を重ね、名実ともに肉食系に変貌したヒカル。「中の品」であった空蝉さんの後、 これまた超絶「上の品」の女性を手中にする。 その名も「 六条の御息所 」(ろくじょうのみやすどころ)。  早死にした先の東宮、つまり現社長の兄にあたる人の未亡人、 家柄も超一流なら、教養高く風雅の心得も深い、誰も…

12月に読んだ本

2015年12月12日  2023年9月13日 
「ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う」 宋 鴻兵 考えてみれば、現代の通貨のしくみって不思議だ。 物々交換や金貨銀貨の取引とちがって、今のお金は単なる約束事であり、それ自体に額面通りの価値があるわけではない。さらに現金さえも持ち歩くことは減り、支払は電子マネーやカード、働いて貯めたお金は通帳に記載された数字。そのデータを守るために、高いお金をかけて高性能なコンピュータを導入、システムを構築し、24時間毎日保守運用。何だかなあという感じだが、この仕組があることで物事が動き、自分の力だけでは到底作れないものやできないこ…

11月に読んだ本 2

2015年12月4日  2023年9月12日 
残穢(ざんえ)」小野不由美 「リング」を読んだ時、一種の呪いというようなものが無機物であるビデオテープにより一気に、広範囲に伝播していくという発想に感心したが、本作の「呪い」は非常にオーソドックスというか、それぞれのエピソードが昔からよくあるような話であるぶん、身近にじわじわ迫るような感覚で怖い。本人がそれと自覚せずいつのまにか穢れに触れ、理由のよくわからない不安感や恐怖に苛まれた挙句不幸が起こり、さらにその不幸がたまたま近くにいたものを巻き込みながら徐々にひろがっていく。因縁のある土地、とか業の深い家、とかいう言い方をするときの具体的な状況とはこう…

11月に読んだ本 1

2015年12月2日  2023年9月13日 
古代ギリシャのリアル」藤村シシン ツイッターで知った藤村シシンさん。スッパーンと明るく開けっぴろげにとんでもない単語を、けれど熟知していないと絶対に出てこない事ごとを、マシンガンのように繰り出すその類まれなる知性、半端ない古代ギリシャ愛に惹かれ、密かにフォローし楽しんでいた。そのうち本を出すという話をタイムラインで知り、リアルな知人でもないどころかネットですら話しかけたこともないのに、速攻アマゾンで予約してしまった自分にびっくりだった。 当初より大幅に遅れてこの本を手にした時、予想をはるかに超えたカラフルで完成度の高い装丁にまず唸った。中身は言うに及…

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過去記事の改変は原則しない/やむを得ない場合は取り消し線付きで行う/画像リンク切れ対策でテキスト情報追加はあり/本や映画の画像はamazonまたは楽天の商品リンク、公式SNSアカウントからの引用等を使用。(2023/9/11-14に全記事変更)

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