おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

夕顔 ~右近ひとり語り~ 幕間

2015年12月24日  2022年6月8日 
……ただいまより、十分間の休憩に入ります…… 

「右近ちゃーん!」 
「あら侍従ちゃん、来てくれたのねん♪」 
「当然じゃなーい。右近ちゃん、スッテキだったわー♪ラストも楽しみー」 
「はー、超疲れるー、ひとり語りってすっごい大変。よそ行きの喋り方だしさー」 
「ほらほら、差し入れ♪京都黒ゴマ八橋どすえ」 
「きゃーありがと。終わったら食べるわ、はあ」 
「ところでさ、右近ちゃん」 
「なあに侍従ちゃん」 
「空蝉さんの話、知ってる?」 
「ううん。この間からずっとここに詰めっきりだもん、すっかり浦島太郎よ。何?」 
「またお手紙出したみたいよ、王子に」 
「へえ」 
「今度伊予に下ることになっちゃったじゃない? しかも王子、倒れちゃったでしょ。今出すしかないと思ったみたい」 
「なんだかんだで、空蝉さんも女ねー。で、内容は?侍従ちゃん」 
「えーとね 

貴方さまの具合のよくないことを耳にして、案じておりますが、わたくしごときがお手紙を出すのはなかなかに憚られますから…… 


何故手紙ひとつ寄越さない?という問いすら 

いただかないまま月日が経ちましたが 
わたくしもどれだけ思い悩んでいるか、貴方はご存知ないですわね 

『益田』の歌のように、生きる甲斐もない気持ちです』 


だって」 

「さっすが空蝉さん。王子はまたいそいそと返事だしたでしょ、これ」 
「そうそう。あれだけ死ぬの生きるのって言っててさ(笑)ま、そこがヒカル王子の王子たるゆえん。 

生きる甲斐もないなんて、言いたいのはこっちだよ 


貴方の残した空蝉(衣)を見るたび、ダメ押しーって感じなのに 

そんなこと書いて来られたらまた期待しちゃうよ? 

はかない希望だろうけどね


だって」 

「なるほどー。やっぱり今回のこと、結構こたえてんのかしら、さすがのヒカル王子も」 
「コタエてんだか懲りてないんだかわからん(笑)だってさー右近ちゃん知ってる? 軒端の荻ちゃんにもねー……」 
「えぇえ? だってあの子もうカレシいるでしょ。ほら、なんてったっけ」 
「蔵人の少将さん」 
「そうそう。ヤダー、あたしほんとに浦島たろこちゃんだわっ。情報通の右近ちゃん、の名が泣くってもんよ。早く舞台はねないかしらん」 
「王子さ、ちょっとイジワル心出して、あの少年使って

死ぬほどあなたのこと思ってますのに、わかってる?』 

なーんて言わせちゃってさ、 


ワンナイトラブとはいえ、忘れちゃいないよ♪君はもう忘れちゃったのかい?ちょっと悔しいな♪』 


いけしゃあしゃあと、こうよー。しかもその辺に生えてる背の高い荻に結びつけてさ、蔵人の少将に知れちゃうかもー、ま、別にいいだろ♪俺様なら許してもらえるはず、なんて超ゴーマンな態度」 

「をいをい……夕顔の巻はまだ終わってないのよっヒカルっ」 
「ビョーキは直らないってわけなのよ。でね、軒端の荻ちゃんも、今カレに知れたらヤバいから、なんなのよーと思いつつも、覚えててくれたことはちょっと嬉しい」 
「うーむ。で、返事は」 
「サクっとね。 

はっきりしないことを今頃ほのめかされても……


所詮わたくしは下荻(=身分低い)ですから全部本気になんてとてもできなくてしょぼん、ですわっ』」 


「荻ちゃんらしい素直なお歌ねえ」 

「で、王子はまたまた比べちゃうわけ。碁盤の前で差し向かいでいた空蝉さんは、今でも忘れられない、できればもいちどお願いしたい♪って感じだけど、こっちの子はイマイチ軽薄っていうかー、キャピキャピし過ぎ?ま、そういうのも悪くないけどさ♪なんて」 
「(ため息)なんつうか……」 
「マメ?(笑)」 
「というしか、ないわねん」

ビーーーーーーっ 

「あら、そろそろだわ。侍従ちゃん席に戻らないと」 
「うん。頑張ってねー右近ちゃん♪じゃまたあとで」 
「またねー♪」 

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