「図書館の魔女 高い塔の童心」
ゆっくり読んでいたらこんなに時間が経ってしまった。次も購入済み。今回ネタバレとかまったく気にせず書く!のでご承知おきくださいまし。てか「図書館の魔女」は良いぞ!超絶面白いよ!読もう!
「図書館の魔女 高い塔の童心」高田大介(2025)
「図書館の魔女」エピソード0。幼いマツリカとハルカゼとの出会い、心を通わすまでの話。
と言ってしまえばよくある感じなのだけど、マツリカが規格外れの類まれなる才知持ちなので流れは全く平凡ではない。しかし最終的にハルカゼの心を掴んだのはその能力ではなく、とある非常に子供らしい行為(とはいえマツリカだからこその表現)であった(タイトルしっかりガッツリ回収)。
エピソード0とはいえそこは「図書館の魔女」シリーズなので周囲の状況はほんわかほっこりのんびり、ではまったくない。当時は「第三次同盟市戦争」前夜にて、マツリカの祖父にして高い塔(図書館)の番人・タイキが動いている真最中である。もちろん幼いマツリカがそれに参加することはないが、「とある食べ物の味が変わった」ことからの動きはまさに祖父と同じ。「物事には何層もの背景や重なりがあり、互いに様々な形で繋がっている」、言葉としては理解できるがなかなか凡人には全容が見え難い。天才と呼ばれる人が常時クリアに見ている風景を、こんな形で読者に見せる方法があるのかと、毎回感心しきりである。
「起こらなかった事」、現実世界でもきっとこのような、「戦争状態に陥るのを寸でのところで回避した」例は山ほどあることだろう。解決の原動力となるのは蓄積され研ぎ澄まされた知と理性と胆力、そして「怒り」。ここでもまた、鍵は人の心なのである(上記の、マツリカとハルカゼのエピソードとも対になってますね)。
「武器を持って集合する群衆というものはね、たぶん倫理とか常識とか判断力といったものを失ってしまうんだ。群体をなして動くこの上なく愚かな生き物なんだ。最初は筋の通ったことを言っていても、叫び声を上げ、武器を振り上げながら動いていくうちに、この群体はどんどん愚かな怪物に変わっていく。私がしんそこ恐れ、嫌って、軽蔑しているのは、そして怒りを感じているのは、この愚かさ、群体をなした暴徒の底なしの愚かさに対してなんだ」
後継者たる孫の情操面の養育を恃んだハルカゼに対し、タイキが漏らしたこの言葉、高田氏がフランス在住ということを考え合わせると誠に感慨深い。どちらかに突っ走り過ぎると人は人でなくなる。ただの愚かな怪物になる。現実世界にも通じるどころか核心を鋭く刺し貫く、それでいて確実にエンターテイメント。こんな作品を私も書きたい。
コメント
コメントを投稿