「怪談のテープ起こし」「みみそぎ」
定期的に読みたくなるホラー物。今回二冊とも実話怪談・モキュメンタリーホラーの類。ちょうど今週の朝ドラ「ばけばけ」にて、「お化けがこわい」と「言葉の通じない異国に行くのはこわい」とは違う、というセリフがあったが、共通するのは「わからないもの」に遭遇した時の心の動きで、異なるところは前者が「話が閉まれば終わり」であるのに対し、後者は「祖国に戻るまでずっと続く」ことかな。この二冊ともに前者のはずなのに何だか終わった感がなく、嫌な感触が纏わりついたまま、というところが秀逸。以下、少々ネタバレ気味なので注意。
「怪談のテープ起こし」三津田信三(2016)
はるか昔、たぶん古の2chが発信元だと思うんだが、「ある人が自ら命を断つまでのテープ起こし」を読んだことがある。本物なのかどうかは判然としないまでも、何とも言えない気持ちになって読んだことを後悔したものだが、今フィクションの体ながらテキストとして整えられた形がかえって嫌なインパクトがあり非常に後味が悪かった。以前、とある作家さんが「自死する人は、私たちが危機に遭った時『死にたくない!』と思うのと同じ強さで『生きたくない!』と思っている状況だから、簡単には止められない」ということを仰っていたが、確かにその「強さ」は同じでも、向かう結果が同じであったとしても、そこに至る経路が雲泥の差。そもそもこういう得体のしれない録音を文字に起こす作業自体がヤバすぎる。寝た子を起こすというか、呼び覚まされるのはどう考えても良いものではない気がする。
構成として前半がこのテープ起こし、後半は実話怪談が数本挟まるといった形。どれも面白かった。以下、怖かった度を5点満点で表す。ただし私の恐怖メーターはバグり気味。
「留守番の夜」★★★★☆:実際に体験したらさぞかし怖かろうなという話。大体こういう胡散臭いアルバイトの話を何故か受けちゃう時点で魅入られてる、というのもしっかり盛り込まれてて秀逸。
「集まった四人」★★★☆☆:これも呼ばれる系か。脇道入っちゃダメ絶対。石はむやみに拾わない・持って帰らないが吉。
「屍と寝るな」★★★☆☆:謎解きミステリ要素強め。不条理感と何も解決しないもやもやは次の「みみそぎ」にも繋がってるような。
「黄雨女」(きうめ)★★★★☆:ビジュアルとしてストレートな怖さ。多分映像化したら一番怖いかも。
「すれちがうもの」★★☆☆☆:一見大したことなさそうだが、一番身近な体験という感じで、その意味では一番怖いかも。
「みみそぎ」(2022)
みみそぎ、といえば思い出す「耳鼻削ぎの日本史」清水克行。いや何の関係もないんだけれどもビジュアルとして浮かぶわ(痛そう)。
それはともかく此方は構成の妙、小説ならではの仕掛けに唸った(紙本で読んだけど、おそらく電子書籍でも有効だと思う)。怪談のリレーというか無限ループ。いやいや続き、続きはないんかーいと途中途中でやきもきしつつ最後まで読み切ってしまった。面白く読めたものの、怖かったかと言われるとさほどでも……という感じ。私が怪談ものに慣れすぎたせいなのかもしれん、というか高確率でそうなんだと思う。物語が「閉まらない」のってこんなにモヤモヤすんのね。でも、無理に閉めて良かったんかいな……つか、閉めたと思い込んでるだけで実は。
という感じがもうひとこいあると最高だったかも。
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