「火星の人」
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」があまりに面白かったので、同じ作者の「火星の人」を読んでみた。この作品、個人サイトにて一章ずつ公開してたらしい(無償!)。読者の「まとめて読みたい!」という希望にこたえてキンドルの電子書籍を作成、最低価格で売り出したら三か月で三万五千ダウンロード・SF部門トップ5に躍り出た。それで大手出版社、次いでハリウッドが乗り出して商業書籍化(電子も紙も)、映画化されたという流れである。これ自体がまんま映画じゃん!
「火星の人」アンディ・ウィアー
The Martian / Andy Wier(2014米)
解説者をして「NASAオタク小説」と言わしめ、ご本人も「自分は紛れもないオタク」と自認していらっしゃるだけある内容。一言でいってしまえば
「火星に取り残された宇宙飛行士が助け出されるまでの日々」
というシンプルさなのだが、とにかくメッチャ細かい。特に「〇〇することを目的に何かを作る」場面は途轍もなく詳細。詳細過ぎて正直ついていけないことも多々。まあいいやなんか出来たっぽいしとスルーしつつ読んでも全然問題ないが、これ刺さる人には刺さる歓喜な描写なんだろうなあと思うとちょっと悔しい。オタク恐るべしである。映画を観た時にも思ったが、宇宙飛行士はとんでもない倍率のとんでもない試験を潜り抜けてきたツワモノばかりであるからして、全員あたまおかしいレベルで有能である。特にメンタルは半端なく強い。時間制限のある映画では端折らざるを得なかったであろう細かく膨大なエピソードをつらつら読むに、これはもうヘンタイの域。ログに書く記録が(いくら後世できっと誰かが読むと確信していたにしても)完全に読者を意識しまくったサービス満点ジョーク満載の内容でとても楽しい。「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の主人公もそうだったが、専門性が高くものづくりが好きで得意で、諦めない強さとユーモアを合わせ持つきわめて魅力的な人物像なのだ。こりゃリアルタイムで一章ずつ読んでた人はさぞかし楽しかったろうな。そういう読書体験羨ましい。もちろんこうしてまとめて読んでも面白かった。「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の後でも前でもオススメ!
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