「塗仏の宴 宴の始末」
百鬼夜行シリーズ「塗仏の宴 宴の支度」の続き。これも鈍器本。
「塗仏の宴 宴の始末」京極夏彦(1998)
な、なんといいますかその……頭の中どうなっちゃってんですか京極さんて人は。ようもようもまあこんな、複雑怪奇な群像劇をサラサラサラっと。その癖めちゃめちゃ読みやすいのはどういうことなの。それに2000年以前の作品というのも衝撃。戦後まもなくの話だというのに全く古くないし、何なら今ある問題にもダイレクトアタック。いったい何がどうなってこんな作品を書けるのか、それが恒例のそして最大の謎。以下ネタバレで盛大に語りたいのであける。
何より関口君が無事でよかった本当よかった。一番頼りなくて一番役に立たないんだけど、中禅寺先生が一番心を許してるのってこの人なんじゃないかと思うので。根本から善良な人間ゆえに催眠にかかりやすいが、根本から善良なので心の中に汚いものがほとんどない。よって供述が「自分がやりました」というだけで具体的なイメージがなんも出てこない。これじゃ罪に問おうにも問えないわな。ああー書いてて気づいたが、そもそもここで躓いてんじゃないの犯人側って。関口君を舐め腐って(まあチョロそうだもんねわかるけど)引っ張りこんだのが間違い。中禅寺さんを本気で怒らす一端にもなるし(怒ってないけど怒ってる最大に)。
旧日本軍に属していたマッドサイエンティストの陰謀、というまさに巷でいう「陰謀論」のような物語を、ようもまあこんなに「リアルに」書いたものである。人間は簡単に騙せる・操作できる、だけど完璧ではない。必ずどこかで綻ぶ。どんなに「天才」であっても人間ならばこそ。動機が案外に陳腐な理由から来ていたのには呆れたが、本当にそれが本心なのかは誰にもわかんないもんなー。まだ騙されてるのかもしれない。大風呂敷を広げて見事にしまい、また眼前に広げられているような気持ちになってる。しかし百鬼夜行タイトル回収しちゃってるしこの先どう展開するんだろう。まだ数冊あるんよね鈍器本。はよ読まないと。面白かった!!
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