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「成れの果て」「ミスミソウ」

2024年4月24日  2024年4月24日 

  こちらはサブスク。どちらもTwitter(x)でのオススメに乗った。


「成れの果て」宮岡太郎(2021)

 劇作家・映像作家マキタカズオミ主宰の劇団「elePHANTMoon」が2009年に上演した同名戯曲を映画化したもの、という。舞台だとさぞかし濃かっただろうなあ。

 ひとたび何らかの「犯罪」が起きると、被害者も加害者もその近しい者も、その事実から逃げられなくなる。

 というのはS・キングの「アウトサイダー」で描かれていた図式で、この映画もまさにそれ。とはいえ「罪」に対する意識もスタンスも全然違う。根底にある宗教や文化の違いが大きいのだろうが、とにかく「アウトサイダー」には滅するべき「真の悪」的な存在がある。「成れの果て」にはない。むしろ元凶ともいえる犯罪を犯したクズ男が一番常識的に見えてしまうほど、見事に「良い人」が一人もいない。どこにでもありそうな地方都市の小さな町、「ある犯罪」にまつわる更に小さな輪をつくる小集団の中で静かに醸成され眠っていた邪悪が、その地を離れていた被害者の女性(主人公の小夜:萩原みのりさん、目がイイ!)の帰還により呼び覚まされ一気に放たれる、という感じ。そうか、この「邪悪」がウイルスのように洩れ広がっていくというイメージには似たものがあるかもしれない。

 役者さんたちはどなたも素晴らしかった。特にもう一人の主役といっていい姉のあすみ(柊留美さん=千と千尋の千尋役)の癖者っぷりすごい。もうしょっぱなから、どこからどう見ても地雷臭ふんぷんの女である。それでいて図書館の司書然とした雰囲気もちゃんとある。

 とにかく舞台劇ならではのセリフの凝縮度がすごい。全員濃いいがメイン以外の登場人物では、ミス大福のエリちゃんが断トツヤバかった。あれは演じる方も相当の負荷がかかったんじゃなかろうか、只者じゃないわと思って調べてみると「カメラを止めるな!」のヒロイン役・秋山ゆずきさん。な、なるほど。あの滑舌の良さと勢いある演技、納得しかないですわ。

 正直いって誰にでもオススメ!とは言いがたい癖の強い映画だけど、のっけから不穏な空気かつテンポが速いのであららららという間に引き込まれて、衝撃のラストになだれ込む。ネタバレはしたくないが、あのラストの「憑き物が落ちた」感はすごい。なんだろなアレ。それでいいのか本当にいいんか、いやもうそうするしかないわよね他にどうしようもない、と思い直す困惑のラスト。スッキリは全くしない。

 ただ映像は本当に美しい。そこは断言する。どこにでもある地方都市の寂れた風景も味わい深いし、あすみの住む古い家も洒落た日本家屋で玄関の引き戸に和まされる。内容とのギャップも含め面白かった。Twitter(x)に感謝。なんせ私は「逆転のトライアングル」観てますからね。少々のことじゃ動じません、ええ。

「ミスミソウ」内藤瑛亮(2017)

 押切蓮介氏の漫画を映画化したもの。未読だけど大体話は知ってるという状態で観てみた。主役が「ゴールデンカムイ」におけるアシリパさん役の山田安奈さんだったことも大きい。

 上記の通り少々のことでは動じない私だが、物語はかなりエグかった。およそいじめという言葉では軽すぎる、完全に犯罪じゃん、な壮絶ないじめシーンでは正直観るのをやめたくなった。ただ不思議なのは、その後も更なる残酷シーンてんこ盛りの上に超絶胸糞な展開なのに、冒頭の辺りの嫌悪感は急激に薄れていって、むしろ爽快感さえ覚えるようになったこと。きっとそれは雪のせいが大きい。雪の白と血の色とのコントラストが予想以上に美しかった。復讐のため独り闘う春花の赤いコート、一片の躊躇いも容赦もない攻撃が雪景色に似合いすぎる。

 主役の二人(山田安奈さん・相場役の清水尋也さん)以外はオーディションで選ばれた方々だというが、流美役の大塚れなさんがすごくよかった。全然話違うけど映画「キャリー」を思い出したわ。いじめられっ子モードからの豹変が素晴らしい。

 ラストはちょっとわからなかった。原作を読んでいないせいかもしれないけど、事態がイマイチ呑み込めてない。まあ全六巻あるんだもんね。読まなくては。

 そんなわけで私は面白かったけど、血ブシャーの残酷描写が苦手な向きはやめときましょうね。ただ、山田さんがアシリパさんに選ばれた理由は非常によくわかりました。白が似合う。つか雪の中に置くと抜群に映える。戦う姿がまた美しい。 

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