「異常」「すべてがFになる」
怒涛のGWといいつつ本は結構読んだな。ということで系統の似てるような似てないようなSF小説二連発。

「異常」エルヴェ・ル・テリエ(2022 訳 加藤かおり)
L’Anomalie Hervé Le Tellier(2021)
「あらすじ検索禁止」と帯にデカデカとあるので、一切触れずに感想書くチャレンジ。最初は何の話かまったくわからない。登場人物には何の脈絡もなく、それぞれのショートストーリーが手短に語られる。これがまた、それぞれがひとつの小説になりそうなくらい起伏があってテンポも軽やかで面白い。どこに収束していくのかがわかった後(わりとすぐわかる)もその先の予測は不可能。そんなわけで一切ダレることなく最後までどんどん連れていかれてしまう。ラストもいろんな意味で斬新。
クライムサスペンス、濃ゆいラブロマンス、ファミリー譚、宗教、哲学、古典・最新SFなどなど盛りに盛ってフランスのエスプリをつゆだくに混ぜくった、贅沢な一冊だった。これ映像化しないの?ぜひしてほしいんですけど。

「すべてがFになる」森博嗣(1996)
これ新装版文庫で出てたのを「ああ昔読んだな。面白かったやつよね」と電車に乗る前に買ってそのまま積読になったものなんだが、読んでみたら未読だったことが発覚(アホ)したという珍しい経緯(ただの老化か)。第一回メフィスト賞受賞。
両親を殺した規格外れの天才少女が幽閉されたまま働いていた、今で言うデータセンターのような建物の造形が面白い。近未来SF(昔の作品なのに全く古くない。携帯がないだけ)であり謎解きミステリーでもあり、これも最後まで緊張感が保たれたまま一気にいく。アニメ化もドラマ化もしてるらしい。息子はアニメで知ってた。つかさ、ドラマって綾野剛主演だったんかーい!これは観なくては。
ネタバレ禁止なので少し間開けるけど、
「天才」が人を殺す理由が「人間が生きている状態は一種のバグ」という思想がベースなのがヤバイ。だから少しでも邪魔だと躊躇いなく殺しちゃえるという……サイコパスとはまた違う。サイコっぽいといえば犀川の方がそれっぽい。「孤独を知るものは泣かない」にしろ、天才すぎる頭脳はハッキリ「異能」なんだなやはり。
二冊とも超面白かった。

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