「変な家」「道徳の時間」「微笑む人」
ちょい寒いくらいが読書にはいいのかもしれん。今のうちにどんどん読もう。でも積読減らない謎。
「変な家」雨穴(2024)
映画も予告編だけしか観てないので、事前知識は「変な間取りの家」というだけ。動画などは一切見ないまま、単なる本として読んだ。ほぼ一気読み。些かもストレスなくするするいける文章のうまさ、展開の早さには感心した。とはいえあの間取りから、「不動産に詳しい人」がいきなりそういう発想になるか?!という唐突さはあった。あったが、そのまま決め打ちでどんどん進んでいくので、立ち止まる暇もなく最後まで連れてかれる。「近畿地方の~」と同じくライブ感が命だが、モキュメンタリー物なのにけっこう壮大?(時間軸的に)な話なのは意外だった。この発端からここまでいくか……いろいろとこじつけっぽい箇所はたくさんあってツッコミどころ満載ではあるんだけど、そうなってるんだからそう展開するだろ?という勢いがすごくて、此方も「まあ野暮は言わんでいっかとりあえずこの物語の結末を知りたい」となる。要はものすごくオーソドックスで古典的な物語なのだ。落語の手法にも似ているかもしれない(詳しくないので適当)。とにかく色々と興味深かった。2も読んでみたい。映画はどうなんだろう?映像にするの逆に難しくないか?
「道徳の時間」呉勝浩(2015)
第61回江戸川乱歩賞受賞作にしてデビュー作。私が読んだのは図書館で借りたハードカバーで巻末に審査員の講評が載っているバージョン。何やら差支えのある設定?があって、出版するにあたり書き換えたとのこと。文庫版はさらに加筆修正されてるらしい。
そのせいもあるのか、正直文章は読みやすいとは言い難かった。審査員にも指摘されてるが、特に会話文において誰が誰なのかわからなくなること多数。地の文でも誰が動作者なのか迷う。ようは読む側をあまり意識してない。ただただ頭の中にある「書きたいこと」を筆の赴くままに、噴出するままに大盤振る舞いしてる感じ。小説としては決して上手くはないし、いろいろ盛り込み過ぎて一部収拾がつかなくなってるのに、なんかよくわからん熱と吸引力で読まされてしまうのは凄い。その後の活躍からしても(映画「爆弾」の原作者)、やはりとんでもなく才能はあったわけだ。辛口の審査員さんたちがそれでも選んだ(選ばざるを得なかった)のは慧眼といっていいと思った。
「微笑む人」貫井徳郎(2012)
此方はもうベテランもベテランなので比較しては失礼だが「愚行録」と同様、様々な周辺人物の「語り」から成っていて、物凄く読みやすい。設定や人物や個々のエピソードのすべて、ここにこれがなければならない「必然性」があって、なおかつ単純な謎解きでは全くない。ほぼ一気読み。アプローチの仕方も展開も全然違うが「殺人の動機」をテーマにしてるところは「道徳の時間」と重なる。動機なんかいくら調べたってどうにもならんし意味ないわ、という考え方は二人の作家さん共通してる気がするんだけどどうかしら。私も常々「動機とかどうでもいいから何をどういう手順でやったか細部まで解明して、その事実を元に裁けよ」と思ってる。実行に移すかどうかで天と地の差があるし、どういった「隙」を潰していけばそういった犯罪を防止できるか、がわかればいいと思うんだな。
とはいえ、この小説はそういった教訓めいたことや説教めいたこととはまるきり無縁のまま、ただただ追いかけながらラストにすーーーーっと流れていく。余韻の残る、後からじわじわくるラストだった。面白かった。
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