2016年1月23日
2022年6月8日
「王命婦さん、少納言さん、それに侍従ちゃん、グラスは行き渡りましたでしょうか?」
「はい!」
「はいっ」
「は~い♪」
「それでは、只今から女子会始めまーす。僭越ながら、わたくし右近が乾杯の音頭を取らせていただきます。若紫の巻もようやく最終章、皆さま大変お疲れ様でした! 乾杯! 」
(全員)「かんぱーーーーーい!」
……しばし飲食とお喋りに集中……
「あっ少納言さんもうグラスあいてる! 注ぐよ!」
「ありがとう侍従ちゃん。いただくわ。はい、ご返杯」
「たまにはこういう女子会もいいわね。誘ってくれてありがと、右近ちゃん」
「王命婦さんも大変だったものねえ……
若紫 十一
2016年1月22日
2022年6月8日
その日、ヒカルはたまたま 左大臣家 を訪れていたが、いつもの如く正妻はなかなか出てこない。
面白くないので和琴を即興でかき鳴らし「常陸では田を作っているが」とかいう歌を朗々と口ずさんでいるうち、惟光参上。呼び寄せたところ、衝撃の報告が! 明日、少女の邸に父宮の迎えが来る、という。 焦るヒカル。 ( 兵部卿宮 の邸に移っちゃうとなると、こちらに迎えとるどころか会うことすら難しくなるな。大人の女性を扱うのと同じ、いやもっと悪い。あんな幼い子に懸想しちゃって何なのあの人? ロ◯コン?などときっと非難されるに違いない(いや、もうされてるが)。 よし、父宮が来る前に、連れ…
若紫 十
2016年1月21日
2022年6月8日
同じ日、邸には少女の父・ 兵部卿宮 が訪れた。
ここ数年来すっかり古びて、人も減り、荒れた雰囲気が隠せない広い邸を、父宮はひととおり見渡しながら言った。
「幼い子が住むようなところではないね。やはり私のところにおいで。けっして窮屈なところではないよ。乳母も、部屋を貰って仕えるといい。若い人たちもいるから、姫君と一緒に仲良く遊んでくれるだろう」
姫君を近く呼び寄せてみると、 ヒカルの移り香が馥郁とひろがる 。
「ほう、よい匂いだ。服はすっかりくたびれているけれど…。
長いこと、病がちな老人とばかり過ごさせてしまったね。早く引き取ってこちらに馴染ませようと思…
若紫 九
2016年1月20日
2022年6月8日
十月(実際には十一月)。
朱雀院の行幸(神社仏閣、名刹などに帝が外出すること)という一大イベントが予定されているため、舞人、高貴な家の子弟、上達部、殿上人など、およそ芸ごとに秀でているものは皆召集がかかり、親王や大臣を中心に、それぞれ練習に余念がない。
そんな忙しい日々の合間、 そういえば北山の尼君はどうしているのか、えらくご無沙汰してしまったなと思い出したヒカル 。
問い合わせてみたところ、僧都から返事が来た。
「先月の二十日ほどに、 ついにみまかられまして ……世の常とはいえ悲しいことでございます」
などとある。ヒカルは世の儚さをしみじみ感じつつ、 …
若紫 八
2016年1月19日
2022年6月8日
北山の寺で療養していた若紫の少女の祖母・尼君は、程なく回復し山を下りた。住まいは同じ京の都だったので、ヒカルとは時折お手紙をやりとり。
だが内容は変わり映えしないし、まず ヒカルのほうがそれどころではない悩み事満載だった こともあり、とくにこれといった進展もないまま時ばかり過ぎていった。
管弦の催しも一段落ついた秋の終わりごろ、 なんとなく物寂しい気持ちになるヒカル 。月が美しい夜に、ふとお忍びの場所へ行こうと思い立つ。
内裏から出て、行き先の六条京極あたりまではまだ少々遠い場所で、時雨に足止めされる。そこに古木が鬱蒼と茂った、荒れた邸があった。いつも…
若紫 七(オフィス&右近宅にて♪)
2016年1月18日
2022年6月8日
「ちょっとちょっと!右近ちゃん!」
「どうしたの侍従ちゃん? そんなに慌てて」
「聞いた?! 藤壺の宮 さまのこと」
「ああ、 ご懐妊されたって話? 長いことお宿下がりしてたと思ったら、そういうことだったのね」
「えーでもさ……ちょっとヘンじゃない? 具合悪いってご実家に帰られたのって、確か四月 だったよ? あのとき藤壺のお部屋のお掃除手伝わされたからよく覚えてる。そんときもう妊婦だったとしたら、今最低四ヶ月か、五ヶ月? だけど もう七月にもなるのに、宮さまのお腹まだペッタンコだよ……。 物の怪のせいとか何とか言われてるけどさ、そんなことってあり?」
「帝も久々…
若紫 六
2016年1月17日
2022年6月8日
京の都に帰り着いたヒカルはまず内裏に参上し、近況など申し上げた。
父帝は「えらくやつれてしまったね」と心配顔だ。
ヒカルは、北山の聖がいかに尊い様だったかを、問われるまま詳細に説明する。
帝は、
「本来なら、阿闍梨など地位のある僧にも成るべき人なのだろうな。それだけ修行の功労を積んでいるのに、朝廷には知らされないままだったとは」
と感心しきりである。これであの聖も、何かと引き立てて貰えるかもしれない。加えて世話になった寺の評判もますます上がるというものだ。なんだかんだで、ヒカルも貴族として仕事してるのであった。
そのとき。
「 光の君! 」
ちょうど同じタ…
若紫 五
2016年1月16日
2022年6月8日
明けゆく空はあらかた霞み、山鳥どもがそこかしこと囀り合っている。
名も知らぬ草木の花ばなも色とりどりに散りまじり、錦を敷いたような中、鹿がそぞろ歩く。
都育ちのヒカルには、山の風景の何もかもが新鮮で珍しく、飽かず眺めているうち、塞いだ気持ちもすっきり晴れていく。
聖(念仏僧)は、身動きこそ不自由だが、ヒカルのためにとどうにか護身の法をおこなってみせる。陀羅尼経をよむ枯れた声が歯の隙間からしゅうしゅうと漏れ聞きとりづらいが、これもまたいかにも年季の入った尊い感じがして悪くない。
ヒカルを見送る人々が、口ぐちに回復を祝う。内裏の父帝からもお見舞いを賜った。 …
若紫 四(オフィスにて♪閑話休題)
2016年1月15日
2022年6月8日
「ねえねえ右近ちゃん」 「なあに侍従ちゃん」 「最近、ヒカル王子見ないんだけど」 「昨日帰ってきたみたいよ。山奥に引っ込んで静養してたって」 「あ、もう帰ってるんだ。じゃあこれからはまたお姿が見られるのね♪うふふ」 「侍従ちゃん、あれだけいろいろあっても、まだファンなわけね」 「だあって、やっぱカッコイイじゃーん? つきあえるわけはなくてもさ。イケメンは見て楽しい、眼福ってやつー?」 「なんかオヤジ臭いわねえ(笑)わからなくもないけど。でもまた何かあるらしいわよ、王子」 「あー知ってる知ってる。静養先でどっかの娘さんを見初めたって話でしょ?」 「もう噂…
若紫 三
2016年1月15日
2022年6月8日
さてやってきました、坊さまの屋敷。 自慢するだけあって 庭はなかなか趣がある。 月が出ていないため遣り水に篝火をともし、灯籠も置く。 ヒカルが座る南面の部屋は小奇麗にしつらえてあり、漂うお香も品よく薫りわたる。 しかし。 ヒカル王子のかもし出す空気は何より格別で、屋敷内の 人々もいつになく気を遣うのだった。 坊さまは世の無常や来世の話を長々と続け、 ヒカルは自分を振り返ってややビビる。 「俺は いつもどうしようもないことで頭が一杯 だから、生きてる限り思い悩み続けるんだよなあ、きっと。今でこんな調子じゃ来世はどんだけ罪深くなるんだよ」 自分のような奴はさっさと出家し…
若紫 二
2016年1月14日
2022年6月8日
さて、 柴垣に隠れて覗き見するヒカルと惟光、 西側の部屋で経を読む尼君を発見! 年の頃は四十過ぎといったところか? 色白で上品で、痩せてはいるが頬はふっくら、 目元や切りそろえられた髪の様子も、 かえって若い女よりなまめかしく魅力的だ。 身分も高そう、 明らかにただ人ではない。 何者? とドキドキなヒカル&惟光。 同じ部屋の辺りには、垢抜けた 感じの若い女房二人が居て、 子ども達が出たり入ったりして遊んでいる。 その中でも飛びぬけて可愛らしく将来性ありげな少女、 年のころは十ほどか、 泣きべそをかきながらやってくる。 「あらあら、どうしました姫。喧嘩でもなさったの」 声をかけ…
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