2016年8月30日
2022年6月8日
「ねえ……侍従ちゃん?」 「なあに右近ちゃ……じゃないっ、 大輔の命婦 さんじゃないですか! どーしたんですか?」 「お久しぶりね。お元気そう」 「……な、なんか……痩せました? いや前から細かったけど……えっと」 「やっぱりわかる? やつれてるわよね私。嫌だわ」 ふふ、と力なく笑う大輔命婦。 「いやでも! むしろさらにエロく…いや色っぽくなられて素敵! 羨ましいですっ!」 「ありがと」 「今日はどんな御用ですか? 右近ちゃんなら今お使いに行ってて、15分もすれば戻ってきますけど」 「ううん、今日はね、 侍従ちゃんに御用なの 」 「え……( ドキ )」 「ちょっといい? 凝ってるわ」 …
8月に読んだ本 2
2016年8月23日
2023年9月13日
「鬼談百景」小野不由美
「残穢」とセットで読むとちょうど百話となる、現代の怪談。新耳袋を全巻揃えている私としては、内容的には割とお馴染みであったが、「物語」というものが字面のとおり「語る」ものだということを改めて実感。
小野さんの文章には、書き手自身の感情をうかがわせるような言い方はほとんどない。かといって無味乾燥ではなく、余計なものをそぎ取ったシンプルな語り口が、かえって心に響いてくる。この本のような、短くまとまった話の集まりでは、その効果が一段と効いてくる。漫談より怪談の方が、人の心を癒すというが、整然としたつくりの中にあるからこそ感じ取れるわずか…
末摘花 三
2016年8月22日
2022年6月8日
ヒカル王子も頭中将も、その晩約束していた女がいたが、それぞれ分かれ行くのはさすがにお互い気恥ずかしくて出来ず、一つ車に乗り、雲隠れした月の下、風情たっぷりな道中を、笛を吹き合わせながら 大殿邸 (頭中将の実家=ヒカル正妻の家)へと向かう。
先払いもせずこっそり邸内に入り、人目につかない渡殿に直衣など持ってこさせて着替えた。何食わぬ顔で今来た風を装い、笛など吹きすさんでいるのを、舅の左大臣が聞き逃すはずもなく、高麗笛を持ち出しヒカルに手渡す。こちらの笛も器用に、だがしっとりと吹いてみせる。琴も取り寄せ、御簾の内の、楽器に堪能な女房たちに弾かせる。
中務…
末摘花 二
2016年8月18日
2022年6月8日
大輔の命婦の母は再婚し、夫の赴任先に同行して一緒に住んでいる。そのため命婦は、実父の家を里として内裏に通ってきていた。一で述べたように 女子力高い美人であしらい上手 なので、ヒカル王子も何かと重宝している女房であった。
その命婦がふとしたついでに、 「故常陸親王の末娘で、蝶よ花よと育てられていた高貴な女性が、親と死別し心細く生活している」
という話をしたところ、ヒカルはいたく心惹かれたらしく、やたらと質問攻めにしてくる。
「どのようなお方なのか、性格も見た目も、詳しくはわからないんですのよ。控えめで、滅多に人も寄せつけずいらっしゃいますので、私とて、用事があ…
8月に読んだ本
2016年8月16日
2023年9月13日
「アクアマリンの神殿」海堂尊
「モルフェウスの領域」の続編。コールドスリープから目覚めたアツシの青春ストーリー、といった趣だが、ちゃんと前作を踏まえた謎解きも盛り込んでいる。懐かしい顔がちらほらと、だが意外に重要な役割を以て登場したりして、ファンとしてはなかなか楽しめた。ただ、架空の話とはいえコールドスリープそのものや、目覚めの問題に関して、医学的にもう少し突っ込んでほしかった気もする。それは次回以降ってことなのかしら。涼子さんとの色々もまだありそうだし、ていうかそこが一番読みたいところ。 「刑事の子」宮部みゆき
新作ではなく、1994年10月発売の「東…
末摘花 一(オフィスにて♪)
2016年8月12日
2022年6月8日
「ねえねえ右近ちゃん」
「なあに侍従ちゃん・・・あ、イタタっ」
「あら右近ちゃん、二日酔い? 薬湯いっとく?」
「朝飲んできたんだけど・・・侍従ちゃん元気ね・・・」
「私はお酌してたばっかで実は大して飲んでないのよん。少納言さんの半分、王命婦さんの五分の一くらい? いやもっと少ないかも」
「王命婦さんはザル、っていうか輪っかだから。底無しだから」
「あはは確かに。今朝遅刻ギリで慌てて廊下小走りしてたら、とっくに出勤してた王命婦さんに笑われちゃったよ」
「あの人、初参内から今まで無遅刻無欠勤なのよ。さすがはあの、いついかなるときも全員メイクバッチリ・季節…
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