2009年9月28日月曜日

九月に読んだ本 その5

新型インフルの嵐がやっとおさまった(うちだけ)と思ったら、もうすぐ十月……ああ。
というわけで読書の記録を急ぎます。



「白夜行」東野圭吾

舞台化、ドラマ化されております。

えー、一言でいいまして、私が今まで読んだ東野作品の中で最高傑作です。直木賞を受賞した「容疑者Xの献身」も傑作ですが、それよりも時間軸が長く、物語の層があつい。「胸を打つラスト」という言い方がありますが、まさにその言葉どおり、読後は本当に哀しく胸が詰まる。タイトルもこれ以外のものは考えられないというくらいぴたりと嵌っている。東野さんに小説の神が舞い降りたのだとしか思えない。

続編っぽい作品もあるようですが、これはこのままで置いておきたい感じです。

というか、なんでこれ、何の賞も取ってないの???

2009年9月21日月曜日

九月に読んだ本 その4

連休ですね
連休ですが

長女が新型インフルエンザにかかり(それもご丁寧に連休一日前)
土曜日のはずだった体育祭も延期になったので
自宅にお籠り状態のおさ子一家でございます
長女は別室に隔離状態なので幸い他の家族に感染してはいないようですが(今のところ)
もう、読書くらいしかすることない
というわけでばんばんいきます♪


ネタバレ注意!








「五月の独房から」岩井志麻子




美容師バラバラ殺人事件、という実際にあった事件を元に書かれたものですが、解体部分がリアルで怖い。主人公=犯人の女は、山岸涼子「天人唐草」風味。








「シャトウルージュ」渡辺淳一

いわずとしれたR-18設定ですが、それを目当てに読んだ男性はえらいことになるある意味ホラーな一篇。女からすると、もう最初の時点で、あ、この妻、全然旦那のこと好きじゃないじゃん! とわかってしまいラストも察しがつく。なのについ最後まで読んでしまう。男性が次に何を(脳内で)やらかすかという意地悪な興味でである。男性がここまで、同じ男性の深淵まで突っ込んで書いたというのは、さすが。今まで嫌いだったけど愛ルケも読んでみよ。





「恋愛中毒」山本文緒


徹頭徹尾、一人の女性の視点で延々と描かれる「恋模様」。徐々に明らかになる主人公の姿に驚かされる。見た目、真面目で大人しく従順な、そして寂しげな女性は怖い。しかし、前回読んだ「落花流水」といい、人間観察眼がものすごく鋭い人だ。
長女の感想「なんか、すっげー話。疲れた」(でも一気読み)




「だりや荘」井上荒野



こちらはまた、「恋愛中毒」とは違う感じの凄みある作品。何気ない日常、しかもおそらく普通の人より規則正しく整然とした日常の中にある、裏腹なもの、を描かせたら天下一品。
登場人物たちも、その行いも、めちゃくちゃなのだが、本人たちは取り繕えていると思い込んでいるのがまた。普通の顔した異常、ほど怖いもんはない。これもある意味ホラーな一篇。

2009年9月15日火曜日

九月に読んだ本 その3


桐野夏生さん「魂萌え!」
ドラマ化・映画化もされております(残念ながらどちらも観ていません)
前回「グロテスク」を読んだときと同じように、一気に読み終わりました

突然伴侶を失った妻の混乱を描いた話で、桐野作品には珍しく明るいラスト
(いや、よーく考えると明るくはないのかもしれない)
主人公・敏子は59歳で、夫は会社を定年まで勤め上げた真面目なサラリーマン、都内に古いながらも一戸建てを構える、年金も一か月十五万ほどある
いわゆる「最後の恵まれた世代」
桐野さんのことだから、かなりキツイ書き方をするかと思いきや、主人公およびその周辺の、同年代の女性たちに対する視線は優しい
今まで読んだ桐野作品では大概、出てくる女性を突き放し突き放して書いていて、好きになるというより憎むというのが、主人公に対するこの作家のスタンスなのかしらと思ったりしていた
「魂萌え!」の二、三作あとに、「メタボラ」なので、この辺りからスタンスが変わったのかもしれないが、最近のを読んでみないとわからない

ただ、敏子さんはとてもいい人というか、本当に育ちが良くて、悪く書こうにも書けない、ような気がする
女性特有のいやったらしさというのはあるにはあるが、それがぎりぎり嫌悪を感じない程度に抑制されている
それは作者が無理にそうしたのではなく、敏子さんのキャラクターがそうさせているのだと思う
敏子の世代は、「男は仕事、女は家庭」「女は貞淑、男の浮気は甲斐性」が当然だった世代よりは下だが、古い価値観が体のどこかにしみついている
元気で行動的、流行にも敏感だったりするが、どこか「恥じらい」「ためらい」のようなものがあるのだ
夫の裏切りにショックを受け、プチ家出をしたり衝動的に男と寝たりしてしまっても、損なわれない何かを持っている
小さいころからずっと幸せに生きてきた人だけが持つ強さ、
好き勝手にふるまおうとしても、範を超えられない(=超えない)強さ
そういう人としての誇り高さは、努力して得られるものではないだけに、憧れるし充分にカッコイイ

女性を中心に描いてはいるが、実は男性たちの姿にも注目すべき
ここに出てくる男性たちは、コテコテに「自分の趣味」「自分の世界」を持っている
今の若者とは比べものにならない濃さはいっそ爽快でさえある
近くにいたらうっとうしいかもしれないが、退職してから家に一日中ゴロゴロいられるよりは、あちこち出かけて楽しんでいてくれていたほうがずっといい

と思う私は、絶対敏子のようにはなれない(笑

2009年9月13日日曜日

九月に読んだ本 その2


読書の秋でございます
熱中症の余波で弱っていた体も、このところの涼しさでようやく元に戻りつつあります
何より読書が普通に出来るようになったのは嬉しい♪

というわけで、再び花村萬月さん「皆月」

第19回吉川英治文学新人賞を獲得しております
他の候補作には桐野夏生さんの「OUT」、佐藤多佳子さんの「しゃべれどもしゃべれども」
などそうそうたるメンバー
映像化もされています
wikiでみたら、奥田瑛二さん主演、由美役が荻野目慶子さん
奥田さんはちょっとかっこよすぎかいな、とは思うものの、こんど借りてみようと思います

「みんな月だった」という謎のメッセージを残し失踪した妻を探しに旅に出る元夫・その恋人の元ソープ嬢由美・妻の弟アキラ
裏社会に生きる由美とアキラは、自分の意思で住んでいる場所を出た、という経験がない
この、やむにやまれず不承不承に出発した旅が、二人にとっては生まれて初めての「旅」だった
というくだり、胸をつかれます

小説を読んでいるときはかっこいい男子や美しい女子が出てくると嬉しいものですが(私だけか?)
こと花村さん作品に関しては、外見はまったく問題にならない
小説だから、というのではなく、登場人物の魂をもろに見せられているようなきがするのだ
妻に捨てられてしまう主人公、ビジュアル的には本当に単なる「おっさん」なんだろうけど、非常に魅力的で、物語が進んでいく間にどんどん惚れ込んでしまう
物語が終わったときはちょっと寂しい気持ちにまでなりました、ハッピーエンドではあるものの、登場人物たちとのお別れがつらい

花村作品はまだまだ未読のものが沢山あるので、ゆっくりじっくり、楽しんで読んでいこうと思います

ところでここに出てくるアキラは「傷だらけの天使」のアキラを意識なさってるのでしょうか
性格や振る舞いは全然違うのに、何となく連想してしまった




2009年9月9日水曜日

九月に読んだ本 その1

その前に「シャングリ・ラ」の話をしておこう、ちょっとだけ

SFファンタジー大長編(といっていいのだろうか)池上氏の本はこれが初めて
ゲームはあまりしないのではっきりはわからないが、「何か使命を持った主人公が」「苦難を乗り越えて」「必要なアイテムを集め」「その世界の王に君臨する」というストーリーは神話を基としたロールプレイングゲームの王道といってもいいかもしれない
形としてはオーソドックスなのだ

あとはキャラだが、よくもまあこれだけ濃いいキャラを自在に操れるものだと感心
しかも、誰も死なない(笑
悪役の小夜子およびそのさらに敵役、というお姉さんなんてもうターミネーターもびっくりというタフさ
そしてもうひとつ
誰も、恋しない(笑
惹かれあいはするが、それはあくまで同じ戦いを戦う戦士としての愛といいますか……つまりは色気がない
けっこう美少女、美人、美男、美人なおカマちゃん、などと魅力的な人物ばかりなので
なんとなくもったいないような、それはそれでいいような

まあとにかく、楽しめました、夏休み向けのエンターテイメント作品といえるかも
長女にも読んでみてほしかったが、もう新学期始まっちゃったし図書館に返しちゃったわ
というわけでティーンの評価としてはまた後日

ちょっとだけといいつつ長くなってしまった、九月に読んだ本まず一冊目

三浦しをん「格闘する者に○」(まる)

けったいなタイトルであるが、通読するとその理由がわかることになっている
三浦さんと私とは年代的に重なる部分がかなりあるので
就職活動における理不尽なもろもろは、相当リアルに感じた
ほおお、このぐだぐだな感じは大学時代につちかわれたのであるな、という事情もよくわかる
(デビューして最初の長編小説らしいので、多分に三浦さん自身がとてもよく出ている、なまっぽい作品)
ストーリーおよび人物は、一般的には相当変わった出来事や人間関係であるにもかかわらず、それをさらさらと「当たり前のように」書いているので、読者は何となく騙されてしまう、なんかフツーの話じゃん?
いやいや違う
フツーじゃないよよく考えてごらん、
なーんてことは
読み終わった後にも一切考えさせない、三浦さんの手腕は本当に大したものである