2012年10月5日金曜日

10月に観た映画

ヒア・アフター クリント・イーストウッド監督

忙しかったので作業しながら斜め見しようかなと思ったら、全然ダメだった。最初から最後まで何も出来ないで画面に釘付け。いや本来映画はそういうものであってほしいが。やはりこれも映画館で観ればよかった…という一本だった。

まず冒頭の、スマトラの津波映像が予想を超えて凄かった。圧倒的なリアリティと、それでいて拘りの映像美。胸がひりつくほど怖いのに、目を離せない美しさ。ただ、少し後ろめたい気持ちにもなった。もし大震災時の津波が今後このように映画の中の1エピソードとされたらどうなんだろうか。それが素晴らしい映像であればあるほど、複雑な気持ちになるのかもしれないな、と。ただこの映画、震災一ヶ月前に公開され、震災後数日で上映とりやめとなった。配給元のワーナーは売上の一部を寄付もしている。

さて肝心の物語。それぞれ別の国で、別々の理由で「死」にとらわれた三人が、手繰り寄せられるように一同に会する、という話。一人は津波に遭い死にかけたことから、一人は常に死人の存在に触れずにいられない霊能力ゆえに、一人は双子の兄の不慮の事故死ゆえに。他の人からは理解されにくく、どちらかというと排斥されてしまう三人だが、考えてみれば人間は必ず死ぬのだから、死が無いかのように生きているほうが本当は間違っているんだろう。しかし、自分を完全に理解してくれる他者との出会い、で大体のことは解決してしまうのだなあ。人間はやはり孤独には耐えられないのだろうか。

このごろのDVDにはメイキングめいたおまけがよくついているのだが、ここでのお気に入りエピソード。

「ロンドンでは割と治安の悪いところで撮影することが多かったんだけど、監督が
『こういう場所では、女性をひとり歩きさせたくないね』
ていったんだよ。クリントが、あの顔であの喋り方で
『こういう場所では、女性をひとり歩きさせたくないね』(←この人ホントに二回言った)
・・・これを聞けただけで俺はこの映画に参加できてラッキーだったと思う」

昔気質の爺ちゃん監督、愛されてます。

10月に読んだ本

「終わらざる夏」浅田次郎

浅田さんらしく読みやすい、端正な文章だというのに、なんだか今回はとても辛かった。辛くて何度も読むのを中断した。登場人物一人一人がとても丁寧に、丹念に描かれている物語ではよくありがちなことだが、知り合いの話を読んでいるような気になってくる。今回厳然たる歴史的事実も頭にあり、読み進めていくほどに彼らの運命が眼前に迫ってきて、本当に辛かった。
日本の敗戦が決まった日、千島の小さな島占守島に攻め込んできたロシア軍を日本軍が見事撃退した、という史実を元に作られた物語だが、勇壮な戦いのシーンは皆無。この島にいる軍隊がどういう理由で止め置かれることになったのか、どういう事情で皆ここにいるのか、敗戦処理の役割をそれと知らずに担わされた翻訳家の老兵(といっても45歳だが)を軸に描いている。

今まさに平和な日本において「小さな島」をめぐって紛争が起こっているが、この時は軍人のみならず民間人も普通に持っていた「領土を取られることは命を取られることと同じ」「この島が取られれば、次は北海道だ」という共通認識というか危機感、一体どこにいってしまったのだろう。国というものが何か、きちんと教育してこなかった日本のツケが今いろんな形で出てきていると思う。戦争反対ーというのは簡単だが、なぜ戦争状態になってしまうのか、戦争になると何が起こるのか、やめようとするときに何が起こるのか、きっちり検証して子々孫々に教えていくべきことなんじゃないのか。

といろいろ真面目に考えてしまう本だったが、最後にちょっとずっこけた。いや、人によるかもしれないが、私はちょっと・・・うーん、これをラストに持ってきますか。まあ、そういう形もありだけど・・・うーん。気になる向きは読んでみて、私に感想をきかせてくださいな。