2010年4月29日木曜日

四月に読んだ本 その二

忙しい四月が終わろうとしています。一時はどうなることかと思いました。なのに何故図書館で本を借りてしまったんだ私。積んどくの本も結構あるっていうのに。
というわけでやっと読みました。半年ほど前に買って半分位読んで放置していたコレ。

「死の家の記録」ドストエフスキー

放置していた言い訳をするわけではないが、この小説は続きが気になるハラ・ドキストーリーというものではなく、人物を全部覚える必要もなく、時間を置いて読んでも楽しめる、まさに忙しい方にはうってつけのドスト作品なんである。

「血と権力は人を酔わせる。粗暴と堕落は成長する。知と情は、ついには、甘美のもっとも異常な現象をも受け入れるようになる。暴虐者の内部の個人と社会人は永久に亡び去り、人間の尊厳への復帰と、懺悔による贖罪と復活は、ほとんど不可能となる」

狭いところに押し込められ長く過ごす人の集団はたやすく病む。うーん本当にそうだなあ、と実感できたのは並行して読んでいたコレのせいもある。

「あさま山荘銃撃戦の真相」大泉康雄

こちらは図書館で。ネットで偶然みた山岳ベース事件の内容があまりに衝撃的だったので借りてみた。著者はあさま山荘に立てこもった犯人グループの中の一人と幼馴染。タイトルに「銃撃戦の深層」とあるが、銃撃戦そのものより、その幼馴染の問題にかなり偏って書かれている。

学生運動というものをほとんど知らない私には、彼らの言う革命の目的が何なのか、何と戦ってるのか、やはりさっぱりわからなかった。一見論理的思考をしているようにみえるが、そもそも現実感覚に著しく欠けているため、最初から矛盾だらけ。簡単なことを、わざわざ難解な言葉でこねくりまわしわかりにくくしている。
要はざっくり言っちゃうと「特権階級にいて勝手に権力をふるう(ように見える)輩への反抗」らしいが、それが何でいち公務員である警察官を「殲滅」するとか、仲間を私刑することに繋がるのか、まったく意味不明。本人たちはいたって真面目で普通の人(凡人)であるだけに、この流れは怖い。ドストの言うように、彼らの人間性は永久に亡び去ってしまっているんだろうか?
とにかく極端なのはあきませんな。いろんな視点からモノを見るようにしないと。

というわけでこちらも借りた本。なんという組み合わせであろうか。だが結果的にすごく納得いった。

「無量の光・親鸞聖人の生涯」上下巻 津本陽

対照的にこちらは「難解なことを誰にでもわかるように平易にかみくだいて」語る。実家が浄土真宗なのである程度知ってはいたが、この年になってから改めてこういう本を読むといろいろと新たな発見がある。
親鸞の教えは、日本人の美徳のルーツであるといっても差し支えないかもしれない。この繊細な美を保つには、かなりのバランス感覚が必要だが、結果的に現在までこうして生き延びてきた。
革命といえば、これが真の革命といえるのではないか?
「いわんや悪人をや」という言葉が誤解されがちだが、親鸞の言う「悪人」は「悪い人」という意味ではない。生まれ落ちるから煩悩にまみれ、逃れられない人間という生き物は誰しも悪を身にまとっている。己の悪を自覚し、己の弱さ・愚かさを受け入れ、ただ「他力=阿弥陀仏」に身を任せられる者が、真の信心を持つことができる、というのだ。

「国家も社会も、家族も捨て、自分たちの力だけで新しい世界を作る」と言い放って走り出した若者たちは、自らの思想に縛られるあまりに身動きが取れなくなり、破滅の道を辿った。対してすべてを受け入れ、現実から目をそらさず、ただひたすら「己の力ではなく、阿弥陀仏の力により」衆生のために語り続けた親鸞の思想は、華々しさ・派手さはないものの、いまも確実に息づいている。

2010年4月16日金曜日

四月に読んだ本 その一

「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹

図書館で借りました。桜庭さんは「私の男」を先に読みましたが、独自の世界の広がりについてはこちらのほうが上、かもしれない。スケールがでかい。特に前半は神話の趣さえある。残念なのは後半、物語が現代に近づくとともにどんどんちいさく縮みだし、主人公の矮小な世界に収束してしまうこと。狙ってやったのだろうし、実際今はそういう時代なのだが、はーやっぱりそんなものなんだーと本気でげんなりした。作者がヘタで矮小だから、というのではない。その逆であまりにうまく的確に「現代」をとらえ過ぎているが故のことだ。
物語はどんどん小さくなり、極小まで縮んだあと、もういちど大きく爆発するんだろうか?
そういう予感めいたものがすこしでもあったら良かったなあ、と自分で書けない癖に贅沢を言ってみる。

「桃山ビート・トライブ」天野純希

対照的に、こちらは若く、カラっと明るい! 希望に溢れた感じ。「第20回小説すばる新人賞」受賞作、深く頷ける。起承転結、の代わりに序破急、を採用しているが、その理由がいまひとつはっきりしないところ、エピソードが多すぎて話の方向がややブレ気味、など構成としてはかなり荒削りだが、そこがまた魅力になってるところが妬ましいったらありゃしない(笑)。まだ三十代前半の作者、これからどう熟成されていくか? 次作はまた歴史物で「元寇」が題材「青嵐の譜」。こちらも惹かれる(歴史好き)。でも本当言うと、できれば現代もので希望溢れる青春モノも読んでみたいものだ。