四月に読んだ本 その一
図書館で借りました。桜庭さんは「私の男」を先に読みましたが、独自の世界の広がりについてはこちらのほうが上、かもしれない。スケールがでかい。特に前半は神話の趣さえある。残念なのは後半、物語が現代に近づくとともにどんどんちいさく縮みだし、主人公の矮小な世界に収束してしまうこと。狙ってやったのだろうし、実際今はそういう時代なのだが、はーやっぱりそんなものなんだーと本気でげんなりした。作者がヘタで矮小だから、というのではない。その逆であまりにうまく的確に「現代」をとらえ過ぎているが故のことだ。
物語はどんどん小さくなり、極小まで縮んだあと、もういちど大きく爆発するんだろうか?
そういう予感めいたものがすこしでもあったら良かったなあ、と自分で書けない癖に贅沢を言ってみる。
対照的に、こちらは若く、カラっと明るい! 希望に溢れた感じ。「第20回小説すばる新人賞」受賞作、深く頷ける。起承転結、の代わりに序破急、を採用しているが、その理由がいまひとつはっきりしないところ、エピソードが多すぎて話の方向がややブレ気味、など構成としてはかなり荒削りだが、そこがまた魅力になってるところが妬ましいったらありゃしない(笑)。まだ三十代前半の作者、これからどう熟成されていくか? 次作はまた歴史物で「元寇」が題材「青嵐の譜」。こちらも惹かれる(歴史好き)。でも本当言うと、できれば現代もので希望溢れる青春モノも読んでみたいものだ。
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