おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

「桜田門外ノ変(映画)」「雪の花(本)」

2025年3月18日  2025年3月18日 

 多忙につき更新も滞り気味で候。あと一息なので頑張る(何を)。

映画.comより (c)「桜田門外ノ変」製作委員会

「桜田門外ノ変」佐藤純彌(2010)

 吉村昭さんの同名小説を元にした映画(以前書いた記事はこちら)。監督は2019年に亡くなられているが、今般話題の「新幹線大爆破」を作ったお方。ちなみに初の長編時代劇映画にして最後の作品だったようだ。

 井伊直弼暗殺場面が序盤に来るスタイル。登場人物が多く背景も複雑なので、ともすれば人間ドラマが尻すぼみになったり散漫になったりしかねないのだが、大沢たかおさん扮する関鉄之助を中心にわかりやすくまとめられていたと思う。

 雪の中での戦闘シーンはただただ悲惨で、血も肉も躍らないし、お世辞にも「カッコイイ」とは言えない生々しさだった。水戸浪士たちにとっては打倒すべき憎い仇でも、反対側からしたら命を賭してでも守るべき主君だ。そりゃ簡単にいくわけがない。首を取るまでに多くの血を流し、取った後も世の中は「義憤に燃えた」実行犯たちの思惑通りには動かない。こういった暴力に訴える手段はやはり悪手なのだ。「殺したいほど憎い」というのと実際に殺してしまうのとでは大きな違いがある。脱藩したとはいえ「元水戸藩の浪士たちが」「大老井伊直弼を殺した」という事実は揺るがない。その事実を盾に物事は動いてしまう。結局のところ文字通り血と汗を流し多大な犠牲を払った「現場の人々」は歴史の主人公たりえず、梯子を外され、徐々に望みを絶たれて、ただ闇に消えていくのみ。

 その痛切を描くことに焦点を当てているせいか、逃亡犯たちの逸話もなるべく格好良く見えないように撮っている……ような気がした。個人的には、どうにもならない状況下でも最低限己の意気を通す、せめて人として武士として美しくあろうとあがく姿がもう少し見たかったかも。特にラスト近くの高橋多一郎とその息子のエピソードは原作通りやってほしかった。どんづまりに追い詰められながらも笑いの要素もあり、余裕と達観ある名シーンになり得たんじゃなかろうか。心配せずともあんなの誰も真似できないよ……と思いつつも、映像にしてしまう怖さも理解はできる。イメージとして焼き付く力は凄いもんね。難しい。

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「雪の花」吉村昭

 此方は映画の方を先に観た(以前書いた記事はこちら)。

 すごく短いのにすごく濃い話だった。これは確かに映画化決定ですわ(もうしてるって)。

 しかし藩のトップ(松平春嶽)が認め、推進せよと言ってるにも関わらず、末端にまで行き渡らない・話が通らない・実行されないというのが現代でもジャンルを問わずありそうな話で身につまされる。長く放置されてすったもんだの挙句種痘が藩の事業としてようやく推進されるようになり、江戸に官立の種痘所が設立された同じ年に、あの「桜田門外の変」が起こったという。求心力が弱まり閉塞感漂う幕府の体制にトドメを刺すような事件だったということがわかる。起こるべくして起こったというべきか。

 それにしても、当時の「種痘」に対する忌避感は理解できなくもないが、それに乗じてデマをまき散らし不安を煽る同業者、煽られて思い込み罵詈雑言ばかりか石まで投げる市井の人々、の図式は現代でもよく見る類のムーブメント()で、人という生き物はそうそう変わらないんだなとションボリしてしまう。まあまだ二百年経ってないんだし、当たり前か。

 無知は不安を呼ぶ、不安に駆られると人は感情を制御できなくなる。行動にも歯止めがきかなくなる。何歳になっても謙虚に学ぶ気持ちを忘れないでいたいもんだ。

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