「ドクター・スリープ」

 
「ドクター・スリープ」マイク・フラナガン
Doctor Sleep Mike Flanagan(2019米)

このところ世間がキングづいている。「怖い話」って結構ストレス解消&癒し効果があるらしいので、定期的に流行りが来るのかも。長年のファンとしては乗るしかないこのビッグウェイブに。ということで早くも封切直後の月曜に観て来た、以下ネタバレなので区切る。

 まず、原作とキューブリックの映画とをよくもよくもうまいこと繋げたものよと感心した。相当色んなところが違っていてどうやって辻褄を合わすのだろうと心配だったのだが杞憂だった。ほぼ違和感なし。
 そしてキューブリックへの半端ないリスペクト。特にオーバールックホテル、その佇まいからあの廊下、調度品、ライトの色や当て方まで、記憶の中にある映画「シャイニング」そのままだ(まあ、私はこの間観たばかりだし(笑))。で、ローズの被ってる帽子が「時計じかけのオレンジ」のそれとそっくり。これは元映研の友人が気づいたが(さすが)言われてみれば確かに!この記事に載せてる画像はパンフのラストページなんだけどアングルから何から明らかにあのポスター。キューブリック愛も極まれりである。
 それでいてキングの原作のツボはしっかり押さえている。上下二冊の大長編で登場人物も多く結構複雑な話なのによくぞまとめた。パンフの監督談話にも「重視したのは両方のシャイニングに敬意を払うこと」とある。パラレルワールドのような趣が大長編「ダークタワー」に通じる面もあって(関連を匂わせるセリフもチラっと出て来る)かなりディープなファンでも納得の出来ではないだろうか。

 当ブログで2015年に本の方の感想にも書いているけれど、実はこの話あまり怖くない。シャイニングのようにホテルに閉じ込められた状況でのじわじわ迫って来る怖さはないし、イットのように派手な戦いの連続もない。むしろアメリカが抱える病理の深刻さが際立っていて、人がいなければ生きていけない吸血鬼の小集団なぞ現実に比べればク〇ザコなのだ。子供を凄惨にいたぶりながら殺し寄ってたかって必死でその生気を吸う集団は、映像にするとますます醜悪で賤しく、とんでもなく惨めだ。その後の容赦ない殲滅シーンも含め、この手の犯罪に対する作り手の怒りの程がうかがい知れる。

 ただ一つだけ、説明不足かなーと思ったこと。ホテルが爆発する理由だ。これ原作知らない人には「?」となる。ヒントはホテルに入ってすぐにダニーがやったことなんだけど、難しいな。あまりやるとネタバレになるもんね。ただ燃え方は初版のカバーの絵そのまんまで、そこの拘りには感動した。
 そしてアブラの最後のセリフ。これはキングからキューブリックへの痛烈な返しであり主張である。滅多に続編書かないキングが書いた理由も、長年のこの蟠りがあったからなんだろうなと実感した。来世など信じていないキューブリックだったけど、これにはあの世で苦笑いしてるかもしれない。あとね、腐乱死体出し過ぎ。どんだけ気に入ってるんだよ皆(笑)。

最後に、キングへのインタビューより抜粋:
「私は読者を、人間として共感できる人々に会わせたい。友達である人々、保護者である人々。それがだいたいにおいて、怖い部分をより怖くする要素なんだ」

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