おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

10月に読んだ本

2015年11月11日  2023年9月13日 
 
「ドクター・スリープ」スティーヴン・キング
「シャイニング」の続編。こちらは発売してわりとすぐに購入していたが、じっくり堪能したく、非常にのろのろと読んだ。

かがやきを持つ少年・ダンも中年にさしかかり、父と同じ問題を抱え鬱々とした日々を送っていたが、ある母子との出会いが転機となり、荒んだ生活にピリオドを打つ決心をする。新天地での生活を始めたダンは、その能力により死にゆく人間を看取る仕事につく。少しずつまともな人生を歩み始めたダンに、同じ「かがやき」の力を持つ少女からのメッセージが…

いつものごとく長い前置きも、昔からの知り合いの消息を久しぶりに聞くような気持ちで楽しく読めた(むしろこの前置き部分が好き)。少女アブラが出てきてからもしばらくゆったりな流れが続くが、途中からいつものごとく怒涛の展開。後半は我慢できず一気読み。しかし、しかしだ。敵(ラスボス)との対決がなんだかあっけない。長く生き延びてきた一族にしちゃ弱すぎだぞ!もっとしぶとく頑張れよ!と思わず同情してしまうくらい。
このトゥルーロットの人たちの、ある意味脆弱さは、食べ物を手に入れるのに手間がかかりすぎることが一番の原因だと思う。もうちょっとうまくやれなかったのか。どうせならいたいけな子供を犠牲にするのではなく、極悪人とか他人の迷惑になる人たちとかをターゲットにしていれば、普通の人が味方につくこともあったろうし、十分生き残っていけたのではないんだろうか。

むしろ現実のほうが怖い。アメリカで毎年行方不明になる大勢の子供たちをどうにかしているのは、実際には、生きるためにそうせざるをえない化物の一族ではなく、紛れもなく普通の人間。過去に起きた酷い事件を列挙するネットの記事のコメントに「今こうしている間にも、どこかでとんでもなく惨たらしい苦痛を受け殺される人間が存在しているかもしれない。自分はそういう世界の中で生きている、と考えるとすごく怖い」というのがあったが、本当にその通り。因果応報とか自業自得とかではなく、単純に運だけ、つまり誰にとっても起こりうる話だと考えると怖ろしい。現実世界は怖すぎる。

話がズレたが、まあ面白かった。が、上記の理由で全然怖くない。シャイニングもう一回読みたい。

 
「続・竹林はるか遠く」ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ
さてこちらはそういった「怖い現実」のひとつ。
「竹林はるか遠く」では、逃げおおせるまでの過酷な状況もさることながら、無事日本に帰り着いたあとの、同じ日本人からの仕打ちもかなり酷かった。
続編のこちらでも、負けず劣らずとんでもなく辛い現実が、母を亡くし残された兄妹を打ちのめす。仮住まいの倉庫が火事で焼け、家主夫婦は死亡。住むところがなくなったうえに、姉は長期入院。そればかりか放火と窃盗の疑いすらかけられてしまう。そんな中でも女学校に通うヨーコに、壮絶なイジメが襲う…

放火と窃盗の容疑がかかり、やがてそれが晴らされるくだりは、よくできたミステリー小説のようで、むしろ書き手のヨーコさん自身十分に楽しんで書いている気がする。とにかくたくましい。イジメっ子から投げつけられたマグロの頭をすかさず拾って夕飯のあてにするあたり痛快だ。

このヨーコさんのもっとも強いところは、いろいろ辛いことをされても、決してその理由を
◯◯人だから
というひとくくりにしないところだ。
もしかしたら、当時はそのような考え方をしていたのかもしれない。現に、現在の夫となる人(米軍兵士)と出会った当初、ヨーコさんは
「日本に酷いことをした敵国の人間だから友達になれない」
と言ってしまった。それを聞いた父親は
「日本のことわざに『昨日の敵は今日の友』があるだろう。そうじゃなかったら、どうやって平和を維持していくことができるんだね?今度その兵士に会ったら、心から謝りなさい」
と真剣に娘を諭す。
自身も戦争のせいで全てを失い、言うに言えない苦労をしてきただろうに、そのような言葉を娘にかけることができる父親は只者ではない。兄と姉の手先の器用さ、事業者としての能力の高さにも舌をまく。何よりお互いに甘えることなく、自立しながらも支えあって、悪い状況を克服し生きていく力が半端ない。このような素晴らしい家族から愛情をたっぷり受けて育ったヨーコさんだからこそ、どんな境遇でも誇りを失わず、強くたくましく生きていくことができたのだろう。

中学生の次女が夢中で読んでいたので感想を聞いたら、イジメがエグいね、なんでこんなにいじめるわけ?と言うので、おそらくあの当時満州で成功してた人はかなりお金持ちだったから、相当妬まれてたんじゃないか、それの裏返しじゃないの、と答えたら
「なるほど。あとさやっぱり、この子すっごい可愛かったんじゃないの?!」
だと。確かに一作目の子供の頃の写真も、今作のお年を召した頃の写真も、細面の目鼻立ち整った美人さん。女子って怖い。
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