「インスマスの影」「百年の孤独」
諸般の事情でしばらくこちらの更新さぼってましたが元気です。

「インスマスの影 クトゥルー神話傑作選」H・P・ラブクラフト 訳:南条竹則
The Shadow Over Innsmouth Howard Phillips Lovecraft
何を隠そう私、ラブクラフト全く読んでなかった!と思い2019年に出たこの文庫版を借りてみた。ら、あれ……昔読んだわコレ。というやつが数点。というか、どれもこれも既視感バリバリ。恐るべしラブクラフト。無意識に侵食されとる。
〇異次元の色彩
謎の隕石をめぐる怪異譚。コレさあ完全にアレじゃん楳図かずおの「おろち」の「ふるさと」じゃーん!(ちょっと違うけど)宇宙から来たものは良いものとは限らない、というパターンの原型か。
〇ダンウィッチの怪
小学校の時に何かで読んだ、ことを思い出した。あまりにも歪んだ話だったので怖がる以前に入り込めず印象に残らなかったのかも。それが良かったのか悪かったのかはわからない。目に見えない巨大なものが「通っていく」感じってまんま宮崎アニメのイメージですわ。猫バスとかもののけ姫とか。
〇クトゥルーの呼び声
映画のインディジョーンズシリーズを思い出したのは私だけだろうか。シリーズの初めの方って結構おどろおどろしかったし。古代都市とか異教の神とか、元はこの辺か?(今更)
〇ニャルラトホテプ
これは逆にちょっと笑ってしまった。語感からして、私にとっては完全にジョジョの世界。
〇闇にささやくもの
リアルと妄想の行ったり来たりで精神的に不安定な時は読まない方がいい感じ。これはもうフィリップKディックそのもの。
〇暗闇の出没者
町の誰もが近づかない話題にも出さない尖塔のある廃教会、にワザワザ足を運んでしまう作家の話。ホラーの定番展開で怖くはないが、絵として見てみたい。
〇インスマスの影
これも記憶にあるぞ……海からやってくる何か、というやつ。でも、さっきのダンウィッチの怪と同じく、さほど怖さを感じなかった。今読むと相当変な話で底知れぬ気持ち悪さがあるが、子供時代にストレートに刺さってたら真面目にヤバかったのかもしれない。あんぽんたんで運が良かった。
どれもこれもどこかで見聞きした覚えがある、ということは多数の小説家や映画監督や漫画家、アニメーター等に多大な影響を与えてる、ということなんだろう。SFやファンタジー、ホラーやオカルト好きならば知らず知らず二次的三次的に浴びまくっているのだ。こういう、イメージや感覚に強く訴えるような話を1920~30年代に書いてたって驚くべきことだ。面白かった。さすがはワールドワイドなビッグコンテンツ「クトゥルフ神話」の元祖である。

「百年の孤独」ガブリエル・ガルシア=マルケス 訳 鼓直
Cien Años de Soledad Gabriel García Márquez(1967)
スペイン語圏にて「ソーセージのように売れ」て、ノーベル文学賞を獲得した今作品。日本では重版かかるのに5年かかった、とのこと。わかる気がする。日本語で翻訳メッチャ難しいんじゃないかなコレ。多分だけど原文は詩に近いんじゃなかろうか。一大叙事詩的な(適当)。どう表記したら読みやすいのか、そもそも読みやすくしていいのかどうか、何もわからない。「マジックリアリズム」という大変かっちょいい手法で描かれてるらしいが、要するにどこまで本当なのか、どこまで嘘か夢か幻なのか、境目がわからないってことだ。日常の中で突拍子もない出来事が何気に起こり何気に通り過ぎていく。今のはなんだ?ちょ、今の誰だっけと考える暇もなく物語の奔流に巻き込まれる。翻弄された挙句溺れて挫折するか、全く入り込めないまま挫折するか、なかなか試される感じである。
スペイン語圏で大流行したということは、特定の国や民族にはわかる特有のリズムと語感というものがあるのかもしれない。膨大なエピソードの一つ一つがすべて聴き慣れた「お話」なのかもしれない。以前読んだ「世界が生まれた朝に」が目指した物語世界はこれか!とやっと腑に落ちた、気がする。土地にまつわる言い伝えも神話もちょっとした噂話も、大きな社会の変革も技術の進歩も何もかも、虚実ひっくるめてまな板に乗っけて、順繰りに語って語り尽くして、ちゃんと「物語」として着地するんだからすごい。究極のローカルは世界に通用する普遍性を孕むということか。何にしろすごい。すごいものを読んでしまった。どういう頭の構造してたらこういうのが書けるんだろか。
ちなみにこの表紙の文庫本のあとがきは筒井康隆氏である。当然のことながらベタ褒めに褒めている。そうか、筒井さんの小説いっぱい読めばこれも読める。この無秩序無軌道無体な世界、それでいてぶっとい軌道が通った世界にハマれる。御大によると、「族長の秋」はもっといいからぜひ読め!と。もうすぐ文庫で出るみたいよ。仕方ないなー(積読プラス1)。

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