「絡新婦の理」
年末に借りた鈍器本を延長しつつ読んだ。年末年始じゃなきゃ一週間で読めたなうん。
「絡新婦の理(じょろうぐものことわり)」京極夏彦(1996)
まず「広辞苑かい!」と見まがう威容に圧倒される。ハードカバーだったので尚更。出版社の口上をみてみると
「通常書籍には使用していない印刷技術を駆使しており、一冊ごとに印刷を行っています。量産は難しくきわめて稀少な書籍」
とあるではないか。一冊ごとに印刷う?!ヤバ。買っとくべきだったかしら(置くとこない)。この厚さだと寝転んで読むとかぜったい無理。しかしひとたび読み始めればベージをめくる手がなかなか止まらない。何しろメチャクチャ読みやすいのだ。
時系列的には前作の「鉄鼠の檻」の続きというか、ほぼ並行して起きた事件ということになる。タイトル通り、登場人物が軒並み絡新婦の張り巡らせた巣に次々と引っかかる(引っかかっているという自覚すらない)。構造が徐々に見えてきてからは本丸が誰なのか何となく気づくものの、それでも先の展開がどう転ぶかは殆ど読めず最後まで目を離せない。少女漫画から抜け出たような学園の七不思議あり、陰謀論めいた宗教談義あり、現代の犯罪心理学とユング心理学をまぜくったような問答あり、古代神話に基づく因習話あり……そりゃこのページ数になるわと納得の内容である。
詳細についてはとにかく読みましょう!としか今回も言えないのだけれど、ジェンダー(LGBTQにもかかわる)問題をこの時期にここまで突っ込んで書いてることに震える。時代設定や旧家の因縁しがらみ、なんかは完全に横溝正史の世界なのだが、絡まり合い濁りきったドロドロをその世界ごと解きほぐす「憑き物落とし」が今回も見事。多くの人が死ぬとんでもなく陰惨な話なのに、暗さを感じない・むしろ爽快な読後感が不思議。「姑獲鳥の夏」からこっち毎回思うが、どういう本を何冊読んでどういう頭の構造をしていたらこんな話が書けるのかも永遠の謎。すごいとしか言いようがない。面白かった。
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