おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

「愚行録」「哀愁しんでれら」

2024年6月26日  2024年6月26日 

 なんとなく「嫌な感じ」なものを観たくなってTwitter(x)で紹介されてた二本を鑑賞。病んではない、元々そういうのが好きなんです。

「愚行録」石川慶(2017)

 第135回直木賞の候補になった貫井徳郎の小説「愚行録」の映画化。タイトル通り、まさにありとあらゆる「愚行」のカタログのような内容。冒頭とラストのバス乗車シーンの対比はなかなか。具体的には書かないがよーく観ておきましょう。以下はネタバレあり注意。



 原作が2006年だから、ここで描かれる登場人物たちの大学生活や社会人生活などはちょうどバブル期かバブル弾けかかった頃か、だろうか。内部生外部生のヒエラルキー問題(とはいえ私は知らん、そういうのない大学だったので)、アッシー(死語)らしき車持ちの学生、皆でお洒落なカフェバー(死語)に集まってのダラダラ飲み会、海辺の別荘?的な場所での大人数パーティ、同期飲み会での家庭的アピール等など、その時代を生きて来た者としては(いやここまで極端じゃないですやろ)(類型的すぎない?)と思いつつも背中がむず痒くなる。今の若い子からしたら、何やってんだこいつらありえんとドン引き確実の愚かエピソードが延々続く。

 誰一人「善い人」ではないがかといって「真の悪人」でもない、要するに疑似陽キャ間の「階級」問題だ。当然のことながら「天上人たる真の陽キャ=他人にマウントする必要のない人」は出てこない。殺された「人も羨む幸せな家庭」を形作った夫婦二人だって「真の陽キャに限りなく近づくためなりふり構わず努力をする/した人」にすぎないのだ。

 盛り上がってお喋り中の小集団の中から一人だけ呼んでランチに誘うシーンがまさに典型的。集団の邪魔にならないよう気遣うという発想がない、何故ならその子以外の人間の存在は眼中にないから。その子が自分たちのハコに入ることを周囲にもわかりやすくアピールしなければならないから。とはいえ、その子とてあくまで自分より「下」でなければならない。同じハコの中で常に踏みつける存在でなければならない。何故なら自分はこのハコの中における「天上人」だから。

 この手の構図は「関心領域」のそれともよく似ている。レベルは大きく異なるにしても、こういう「犯罪とまでは言わないが悪意ある行為」を息をするように自然と出来てしまう人はやはり何かを「踏み越えてしまった人」なんじゃなかろうか。で、一度踏み越えてしまうと元の場所には戻れない。取り込まれた者たちも同様。

 小さいハコを支配していた悪がより振り切った悪に叩き壊された、そういう話だった。ラストシーンは解釈が分かれる気がするが、私にはとんでもなく空虚に見えた。冒頭の方がまだしも「人」という感じがする。後で原作も読んでみる予定。


「哀愁しんでれら」渡部亮平(2021)

 「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2016」でグランプリを獲得した企画をもとにオリジナル脚本で映画化したという。前半の明るい「シンデレラストーリー」からの落差がヤバい。あとこの家、造りが「愚行録」に出て来た海辺の別荘とすごい似てる。特に外回り。続けて観たせいかしら。

 ここからネタバレの考察。



 個人的には、このダンナ・大悟が一番食わせ者というか、はっきり人心操作型のサイコパスなんじゃないのと思った。実の母親すら騙されてる。当然子供も多大な影響を受けていて、行動原理が「如何に父親の意図を読み取ってその通り動くか」。主人公小春との初対面シーンで既に窺い知れる。

 そしてこの小春もまた大悟と同類。そもそも出会ったきっかけも……だし、職場の児相で言ってることも少しオカシイ。母親が家を出て行くときの捨て台詞、娘の方が実はおかしかったと考えると納得がいく。

 ガチサイコパスの父親と継母という組み合わせの家庭にいる子供はどうなってしまうんだろう。この二人が結婚してからの子供の荒れようは、父の操作と過剰適応によるストレスの両方なんだろうけど、あの「同級生の死」がトリガーになって一気に壊れた感じがした(私は事故説をとる)。

 俳優陣はどなたも素晴らしかったが、子役のCOCOさんの演技は迫真過ぎて心配になった。だいぶ疲れちゃったのでは?大悟役の田中圭さんの上手さはいうまでもなく。土屋太鳳さん、役柄の解釈が天然なのか演技なのか素でわからなくなる場面が時々あってキャスティングの妙を感じた。三回断られても諦めなかった理由がわかる。ただ、本当に憑依系の女優さんだとしたら諸々気をつけないと危ないかも。

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