「禍根」
前作「烙印」から実に五年ぶりの最新作。待ってましたよ本当に。既に前作の紙本、ショップによっては在庫なし。やはり紙本買っておくのは大事だな(家が溢れる)。
「禍根 上下」パトリシア・コーンウェル
Autopsy Patricia Cornwell (2021)
米国での出版時期とほぼ被る、コロナの大嵐が吹き荒れた後のアメリカ。ケイは再び古巣のヴァージニア州検屍局長に復帰する。なるほど、まるで一作目に戻ったかのような舞台設定。だがそこで待っていたのは前局長の大量の置き土産と冷ややかな目――。
公明正大で誠実な振舞いを心がけつつも真実を得るためならどんな労力も惜しまない、男前ケイが戻ってきたー!長年のファンとしては嬉しい限り。権力の亡者のような前局長とその子分にネチネチ痛めつけられながらも毅然として立ち向かう姿は本当に痺れる。ネタバレになるので詳細は言わないが、今回は事件の絡まり具合が絶妙で、謎解きが非常に丁寧な感じがした。すわデカい陰謀か?!と素人なら思ってしまうようなスケールでかい案件を、ケイが冷静に(時々こっそり心中で悪態をつきつつも)一つ一つ手作業で解きほぐし明らかにしていく。そして最後は死ぬほど美味しそうなお料理場面で〆。ああ、これよこれ!まさに帰ってきたケイ・スカーペッタ!
あまりにも出来すぎるせいで多方面から引っ張られるけど同時に嫉妬ややっかみもすさまじい。周囲もなかなか落ち着かない(ルーシーやマリーノがいつもの超シゴデキ☆キャラになってて嬉しいけどやっぱり不安定で不穏)。これもまたこのシリーズではお馴染みの流れではある。
コロナ禍で起きた悲劇、暴動のあとの荒廃した都市の姿も何気なく描かれているが、想像以上に酷い状況だったのだなとあらためて実感。作者の、新たなテクノロジーへのアンテナの感度は全く鈍っていないし、チャレンジ精神もまだまだ旺盛とみた。とりあえず続き、続きをはよ。
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