おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

椎本 六

2021年10月25日  2022年6月9日 


「ねえねえ右近ちゃん」

「なあに侍従ちゃん」

「思ったんだけどー、やんごとなき皆さまのご結婚ってメッチャクチャめんどくさくなーい?」

「ああ(笑)八の宮さまの娘さんたちね。ああいうのはさ、やっぱり親がいちから十までお膳立てしとかないとなのよ。中途半端なまんまで宮さま亡くなっちゃって、また相手が

『ボク人生悟ってるから結婚なんてキョーミないもん』

 ってイキってる薫くんだからぜんぜん話が進まない」

「ていうか矛盾してなーい?あの宮さま、薫くんに対してはけっこうはっきりヨロシク!してたのに、姫君たちには『並々でない御縁じゃなきゃ宇治に籠って暮らせ』って、ちょっとちょっと薫くんはどしたー!このままじゃ不憫って思ってたんじゃないのー?どっちなのー?ってかんじー」

「呪いね」

「あっ王命婦さんいらっしゃーい♪」

「お久しぶり。紅梅邸のお仕事はもう引けたの?」

「元々期間限定だからね。この頃はホラ、三宮ちゃんのお引越しのお手伝いに行ってたの。ふー疲れた」

「お疲れさまでーす!お茶とお菓子用意しますね♪」

 侍従、給湯室へ。

「少納言さんは元気?」

「元気よ。結局六条院と二条院を行き来してる感じね。誘っといたからそのうち来るかも」

「へえ、二条院。古巣だもんね。とすると匂宮くんの話も聞けるのかしら」

「お待たせー♪」

 暫しお茶タイム。

王「この黒糖ラスク美味しい!サクサクね」

右「そうなの。貰いものなんだけど、お茶請けにちょうどよくてさ」

侍「ねーねー、さっきの呪いって?」

王「それね、私の勝手な解釈なんだけど、八の宮さまって単なる心配性の父親じゃなくて、根本的に誰も信じてないと思うのね。娘ちゃんたちさえも。自ら未来を切り開いて何とか生きていくんだよって、自分が全然出来なかったことだから言えないのよ。あたら花の盛りの娘たちをこんなところにいさせたらダメだって気持ちも勿論あったのはあったんだろうけど、いざ死期を悟ったら本音が出ちゃった。ずーっとこのままふんわりと可愛い姉妹と暮らしたかったのよね、あの方。だから呪いをかけた。出ていけない呪いを。

『誰も信じてはいけない。関わってはいけない。本当はずっとこの宇治にじっとしているのが一番なんだよ……』

ってね」

右「確かに。大体『並々でない御縁』かどうかって誰が判断するの?っていう。自分で何一つ決めてないし、どうすれば姉妹が幸せになるかって全然考えてないよね。ハッキリ後は薫くんに頼りなさい、結婚するなりして宇治は出なさいね、くらい言うべきだったのに。親として無責任すぎる。これまで散々姉妹を縛っておいて、死後も縛ろうっていう……出家できなかったわけだわ」

侍「はーなるほど……あのさ、ぶっちゃけ経済的なとこはどうなの?京のお邸は焼けちゃったし、元々大した蓄えもなかったわけでしょ。ヤバくないの?」

右「ヤバいと思う。薫くんとバックにいる冷泉院が何かと面倒みてるからこそ維持出来てるだけでさ。それがなくなったら、今お仕えしてる家来やら女房さんやらも速攻で逃げ出すわね。残るは行き先のない人と年寄りばかり。つまり、以前の常陸宮の姫君みたいな状況に」

侍「だよねー!あの宮邸はボロっちいとはいえ京の中にあったけど、宇治だもんね……よっぽどの理由ないと無理、っていうか薫くんが不定期にしろちゃんと来てくれてる時点で有り難すぎるじゃん!」

王「だから若くてキレイで、それなりのお仕度出来るうちにサッサと捕まえちゃわないとなのよねえ。あのお父様、結局最後まで出家はしてなかったんだし、その辺の世俗的な事情もちゃんと言い聞かせとくべきだったわよね。心配だ心配だ言いながら肝心なことは何も言わないやってない。イライラするわあ」

右「さすがに姉妹ともに薄々は察してると思うけど、所詮箱入りお嬢様だからね……おんなじ、苦労知らずのボンボンの癖にメッチャ苦悩が多い俺!と思い込んでる薫くんがうまく持って行けるかどうかね」

 こんにちはー、と声。

侍「あっ少納言さんだー!やっほーお久しぶりー!」

右「ささ、入って入って」

少「あ、いいんですいいんです。ご用だけ済んだらすぐ帰らなきゃなので。侍従さん?」

侍「ハイ?」

少「突然で申し訳ないんですが、来週から私と一緒に宇治に行っていただけません?」

侍「エッ?!」

少「八の宮さまの一周忌がもうすぐなので、ヘルプ要請が来てまして。如何でしょう?」

右「えっ行ってきなよ!そしてリモート実況よ!」

王「ちょうど季節も良い頃だし、旅行気分でいいんじゃない?(微笑)」

侍「ええー……あんな雅そうな所で大丈夫かなアタシ」

少「お願いします。私も、侍従さんが一緒ならば心強いので……でも、あまり無理は言えませんよね……」

侍「そ、そんなに目を潤ませなくても。わかりました、わかりましたよ行きます!」

右「よっ、さっすが時空を超えるバリキャリ女房!」

少「ありがとうございます!助かります」

王「楽しみねえ(微笑)」

<総角 一 につづく

参考HP「源氏物語の世界」他

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