おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

「撮ってはいけない家」

2025年12月2日  2025年12月2日 

  師走になりました。色々ギアを上げねば。大掃除?うーん?

「撮ってはいけない家」矢樹純(2024)

 なんで読もうと思ったのかキッカケは忘れたけど多分Twitter(x)で見かけた可能性大(最近大体そう)。矢樹純さんはこれがお初なんだけど、2002年に漫画原作者としてデビューしたのち、2012年「このミス」で小説家デビュー。2020年『夫の骨』に収録された表題作で第73回日本推理作家協会賞短編部門を受賞、というかなりのベテラン作家さん。

「『その旧家の男子は皆、十二歳で命を落とす』というモキュメンタリーホラー制作にまつわる怪異」が発端なのだが、ここに至るまでが若干長い感じ。テレビ局ではない制作会社の事情、各人の関係性などは後々に繋がってはいくので重要ではあるのだが、少し飽きてしまった。前振り的なエピソードは好きな部類なのに何でだろう?と自分でも不思議だったのだが、もしかしたらこういった「小規模な制作会社スタッフ」間の「距離の近さ」が受け付けなかったのかもしれない。朝から晩まで撮影をしたり、長時間かけて編集などする職だから必然的にそうなるんだろうが、私にはかなり息苦しかった。でもこれっておそらく作者の狙い通りなんだろう。そもそもプロット自体がプロデューサーである小隈の

「再婚相手の実家の言い伝え」

が元なんだけれども、なんと小隈にはもうすぐ十二歳になる息子がいるのだ。いくら単なる言い伝えと思っていたとしても感覚がオカシすぎない?しかもちょっと霊感もある、変な夢も見がちな子なのに。唯一この企画に物申せるとすれば、この息子の亡き母親と親友で、幼い頃から面倒をみていたディレクターの佑季なのだが、結局は脚本を完成させて撮影に入ってしまう(この小隈と佑季、男女の仲でもないのに距離近すぎ)。正直、何だコイツら……と初手からモヤッとした。この狂った距離感を読む者にガッツリ印象づけるために長々描写してたんだとしたら、本当すごいと思う。

 物語としてはホラーの定番「何でそんなとこに行ったんや」(あまつさえ撮影かよ)というやつなのである。撮ってはいけないものを撮ってしまった、つまり禁忌に触れたということ。番組制作には多くの時間がかかり、多くの人が関わる。途中で止めるというのが難しい。表に出たがっている何かが引き寄せて目的を達成するには、相応しい集団てことなんだろうな。

 個人的には「夢」が重要なモチーフになっているところに痺れた。ついこの間「源氏物語と夢」をテーマにいくつか講義を受けたところなので。「外部からの働きかけ」的な夢の描写は令和の今でも健在なのね。やや盛り込みすぎ?なきらいはあったし怖くはなかったけど(注・私の恐怖メーターは当てになりません)中盤から結末までは一気に連れてかれました。面白かった。 

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