おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

夕霧 一

2021年6月17日  2022年6月9日 

「ねえねえ右近ちゃん」
「なあに侍従ちゃん」
「この間、ちょいと小耳に挟んだんだけど、夕霧くんって女二の宮さまにマジで本気のラブラブモードってホント?」
「何その言い方(笑)いや、最初からそういうつもりなんじゃないの?」
「やっぱそう思うー?いやさ、小侍従ちゃん(雲居雁ちゃんの方の女房さんね!)に聞いたんだけどさ、もう柏木くんの三回忌も過ぎようっていうのに、未だに通い続けてるらしいよ一条宮邸に」
「そうなんだ。マメだね、といいたいけど、柏木くんの従弟で親友ってだけでそれはちょい距離近すぎって感じかな。お母様の御息所さんはどう思ってんのかしら」
「普通に喜んでるみたいよ。お年寄りだからね」
「あっ王命婦さん!」
「いらっしゃい。ホントいつもいいところに現れるわね」
「侍従ちゃん、今日はシソジュースと水ようかん持ってきたからお茶不要よ。甘いのに甘味だけど、シソジュースが甘さ控えめ酸味多めだからいいかなって」
「わー!綺麗な色!アタシどっちも大好きー!」
「季節物ね。いつもありがとね」
「いえいえ、いつも楽しませて貰ってるから」
 しばしお茶タイムの三人。
王「ところで女二の宮さまだけど、源氏物語中の呼び名としては『落葉の宮』なのよね。柏木くんのあの失礼な歌由来だからあまりいい気はしないんだけど、そろそろこっちの呼び名にしないと後でややこしくなるから、今からそうするね」
右「柏木くんの歌ってアレでしょ、ホントは女御腹の女三の宮さまが欲しかったのに、貰ったのは更衣腹の二の宮さまで、落葉を拾ったみたいな気持ちだ的なやつ。酷い話よねえ」
侍「落葉の宮さまって響きは雅だし、深く考えなきゃいいんじゃなーい?うん!」
王「前向きなご意見ありがと侍従ちゃん。では早速。その落葉の宮の母君ね、最近体調を崩されてたじゃない?その上お抱えの律師が山籠もりしちゃったもんだから、追いかけて小野の山荘に移ったみたいよ」
右「小野って比叡山の西側あたりだっけ。思い切ったわね」
王「もちろん夕霧くんが車から何からすべて用意してね。柏木くん側はもう全然疎遠だから、移ったことすら知らないかも」
侍「エエー冷たくなーい?」
右「夕霧くんもやっぱり距離感オカシイわよ。元夫の実家を差し置いてさ」
王「それがねえ、ちょっと訳アリなところもあって。弁の君っていたじゃない、柏木くんの弟」
侍「ああ、いたいた!柏木くんと全然違う、いかにもリア充って感じのあの子ね。顔は好みかもー♪」
右「侍従ちゃんたら。まあ、わかるけど。パーッと明るいチャラ男よね」
王「さすがね二人とも。その弁の君が、どうも落葉の宮さまに粉かけたらしいのよ。で、すげなく振られた。バッサリとね」
右「あらまあ。それでもうお邸に近づきにくくなっちゃったわけね」
王「そうそう。夕霧くんはその辺心得てるから下心は一切見せず、母君に必要なものを言われる前から揃えて、順々にお送りするわけよ。修法をやると聞けばお坊様への布施になりそうな衣装とかお道具とか細々とね。で、さらにポイントはお文。今まで代筆・代返してた母君がご病気だから、娘の宮さまがやるしかない。夕霧くん舞い上がっちゃって、やたらめったらお文を送ってくるらしい」
右「なるほど。さすがに夕霧くん相手に女房の代筆じゃ失礼だもんね。ましてこれだけ色々やってくれてるのに、ってなるわ。周到だわね」
侍「ああー、だから小侍従ちゃんが言ってたんだ!何か最近不穏なんですうって。そんなに余所の女と手紙やり取りしてたら挙動不審にもなるよね!」
王「そのうちきっと小野の山荘にも、何だかんだ理由こじつけて行くんでしょうね夕霧くん。時間の問題よ」
右「真面目そうな顔して中々やるわね。ていうか三年越し?根気よすぎじゃない?そっか雲居雁ちゃんで慣れてるから……あれって八年くらい待ったんだっけ」
侍「嵐の予感……(久しぶり)」
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