「ハクソー・リッジ」

 
 コロナ禍・非常事態宣言下で映画館には行きづらいので、溜まった録画を消化する日々。(でもリモートワーク中の家人がいるとこれも中々……)

「ハクソー・リッジ」メル・ギブソン

Hacksaw Ridge Mel Gibson(2016米豪)


ハクソー・リッジは「弓鋸崖」、日本名は前田高地。実話に基づいているそうな。2017年アカデミー賞の編集賞、録音賞を獲得。

舞台となった浦添市のサイトにご紹介もあり。画像満載で面白いです。

「ハクソー・リッジ~作品の舞台をご案内します~」

※以下、ネタバレ注意。超長文。見応えのある良い映画ということで。



まず、「銃を持たない兵士」という存在が当時の米国で認められたってこと自体がビックリ。良心的兵役拒否者(Conscientious objector)」っていうのはうっすら聞いたことはあったけど、あの時代によくもまあ。映画の描写が全て本当ではないだろうけど、銃を持たずに激戦地沖縄にいって衛生兵として多くの負傷者(日本兵も含まれてた)を救ったっていうのは紛れもない事実らしいから何とも凄い。本国が殆ど戦場になっていないというのはこれほどに余裕があるのね、とやや皮肉な気持ちにもなる。

というのも、主人公デズモンドが何しろ矛盾だらけな人なのだ。軍隊に入ったのはあの時代ならばよくある若者の情熱と、衛生兵ならば人を殺さずにすむという誤解によるものだけど、もちろんそんなわけにはいかない。銃の訓練を拒否するって、いや扱い方くらい教わっとけよ下手に触って何かあったらどうすんのと思ったし、上官が「お前は殺さない主義を通してそれでいいかもしれんが、そのために周囲が死ぬ。必ず死ぬ。それは許さん」みたいな言い方したのも最もだよねーと思ったし、戦場で自分が死なないためには周りが敵を掃討しないといけないわけで、そこは認めるんですか間接的に殺してないかそれ、とも思った。しかし何を言われてもされても頑として主張を通し、軍隊も辞めない。色んな矛盾を抱えたお花畑そのものの理想を掲げながら曲げない折れない、そのメンタルの強さはむしろ戦場には有効かもと上層部も思ったのかどうか、とにかく彼は「銃を持たない兵士」としての存在を認められて沖縄に送られる。

沖縄戦といえば「鉄の暴風」とも呼ばれた、徹底した焦土作戦。海から艦砲射撃して文字通り焼き払った後に現地に入って即制圧、のはずが、無数のガマに地下陣地を構築していた日本兵との熾烈なゲリラ戦を強いられるのだ。

戦闘シーンの映像はリアルで圧倒的だった。あの名作ドラマ「The Pacific」を彷彿とさせる。聞こえて来る日本語が棒読み気味だったのはともかくとして、「戦場においての敵」はこういう風にしか見えないし聞こえないんだろうな、というのが日本人としてはひたすらに辛い。そして火炎放射器ホントに非人道的で酷い。それだけ怖かったんだろうけどね……この沖縄戦で、米軍側にPTSD症状の人が多く出たって話も頷ける。

そんな中でひたすら衛生兵としての仕事に集中するデズモンド。何が凄いってその体力気力。自分よりデカイ男をひょいっと担ぎ上げて運び、パニクる人は落ち着かせ、励まし、勇気づけて担架に載せて次々送り出す。実弾飛び交う最前線で、あれだけ冷静に仕事を遂行できるそのメンタルの頑強さはヤバイ。うーん、やはり上層部はこの類まれなる資質を見抜いていたのか。銃を持ってないから攻撃の選択肢はない。敵が来たら逃げるか隠れるか、あとは仕事に没頭するしかなかったからこそ、あの場であれほどの成果をあげることができたのかもしれない。周りで彼の代わりに戦ってくれてた人のお蔭もある。彼一人の力ではもちろん無理なことだ。

彼自身はあの戦いをどう振り返ったんだろうか。信念はすこしも揺るがなかったんだろうか。本当の所どう考えていたのかな。

壮絶かつ感動的な話ではあるけど、圧倒的な物量で勝る米軍という前提あらばこそのエピソードだな、とやはり一歩引いた感想を持ってしまう。「17歳の硫黄島」だったかな、通信兵でしかも年若な著者に対して他の兵士は何かと気遣ってくれたり守ってくれたりしていて、本人は有り難いと思うと同時に、自分も最後とならばきっと敵の一人でも殺して、という心境にもなったみたいなことを書いてた記憶。デズモンドの偉業は偉業として理解するけど、切迫感が全然違うよね。

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