さあついに、源氏物語最長にして最高の盛り上がりを見せる「若菜」巻に入るでー!と思っていたら……
気がついてしまった……飛ばした場面を。
しかも、結構好きなシーンだったのに。まとめて後で入れようっと♪などと思っていたら、すっかり忘れた。うああああああ。もう、老化したこのメモリを当てにしてはならぬ。
というわけで、ここでちょいと置いておきます。どうやって「常夏」巻に押し込むかは後で考えよう…(紙本作っちゃって母に送っちゃったけど)。
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内大臣邸。雲居雁の姫君が部屋で昼寝をしている。羅の一重を着て臥せっている様子は如何にも気持ちよさそうで、小柄な身体がとても可憐である。肌が透けて見えていて、扇を持ったままの手つきが何とも愛らしい。腕を枕に、広がった髪はさほど長くも豊かでもないが、裾の具合はすっきり揃っている。
女房たちも物蔭で横になって休んでいたので、誰もすぐには目覚めない。内大臣が扇を鳴らすとやっと、え、何?と寝ぼけまなこで見上げた。
(ああ、可愛いな。ほんのり赤くなった頬も健康そうで良い。だがここは、父として一言いってやらないと)
「うたた寝はいけないといったでしょ?しかもなんて無防備な恰好で……女房たちも傍近くに付けないで。ありえないでしょ。女というものは、常に身の周りに気を配って守るべき!あまりに緩みすぎの無造作な振舞いはお品がないよ?」
慌てて身づくろいをする姫君を微笑ましく思いながらも、顔は厳めしくしている内大臣である。
「かといって、如何にも私お利口なの~って顔でお堅く、不動尊の陀羅尼なんぞ読んで印を結んでる、みたいなのも困るけどね。まあ普通の人でも、あまりに引っ込み思案でやたらめったら距離を置き過ぎるっていうのも、そりゃ上品なのかもしれないけど小面憎いというか、可愛げはないよね」
イマイチ厳しくしきれない内大臣である。
「ヒカル大臣はさ、ご自分の娘をお后候補として教育してるらしいけど、何でも一通りは心得てるけど偏らず、がモットーらしいよ。突出した特技もつけない代わりに、全然わかんなくてまごつくこともないように、浅く広くって感じらしい。まあそれもね、わかるよ?ごもっともだと思う。だけど人って、気持ちにも行動にもなーんとなく得意だとか好きだとか、どうしてもあるものだから、大きくなるにつれて必ず特徴は出てくるんだよね。あの姫君が一人前になって入内した暁には、一体どうなってるか見物だね」
一息つき、少ししんみりと続ける。
「貴女もね……ああもしよう、こうもしようかと思っていた宮仕えは難しくなってしまったけれど、どうにか世間の物笑いにはならないよう根回しはしてるよ。余所の娘のアレコレを聞くとそりゃ心配にはなるけどね。ダメ元で当たってみるか的な男の言葉なんて、相手にしちゃダメだよ。父はちゃんと考えてるからね!」
内大臣が去った後、雲居雁は一人考え込む。
(わたくしときたらホントに考え無しの馬鹿だった。あの時、あんな騒ぎをしでかして、よくも父君に顔向け出来たものだわ……恥ずかしい、思い出すといたたまれない)
大人になった雲居雁にしてみれば、叫び出したいほどの黒歴史なのだった。
参考HP「源氏物語の世界」他

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