「サピエンス全史」

 やっと全部読んだ。今回、電子書籍で読んだのだが、こういう分厚い本ってやっぱり紙の方が、気持ち的にはいいかもしれない。読んだ感あって。いや便利だったけどね電子は。隙間時間に読めるし。全体として普通に読みやすい文章なので、合間合間にちょこちょこ読んでいれば誰にでも読めるし理解できると思う。ある程度読書慣れしてることと根気が必要ではあるけど。今確認したら、この次の「ホモ・デウス」は未来編で、その後「現代」編が出るのね。これだけの分量の本を数年で書けるのは素直に凄いと思う。参考資料の数だけでも半端ない。

 以下、とりとめもない感想をつらつら。



「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福」ユヴァル・ノア・ハラリ 柴田裕之訳(2016)

ジャンルは何だろうか。「全史」だから一応歴史本ではあるが、論文ではもちろんないので、作者独自の仮説と思考に基づいて打ち立てた世界の形、的な感じかな。いみじくもこの本の中で「実体のないもの」をあるものと「信じさせて」多数の人を支配する・秩序を保つという手法を語っておられるので、著者みずから体現されたのかもしれない。これもまたひとつの「物語」と考えて読むのがよきかも。

 前半は「貨幣」と「帝国」の話が中心。貨幣経済はもっとも普遍的・効率的な相互信頼の制度であり、今生きている人類は全員「帝国」により繋がっていて、人類を統一する三つの要素のうちの二つである。後半で語られるのはあと一つの「宗教」。個人的にはこのくだりが一番面白かった。

 多神教にも「世界を支配する至高の神的存在」はあって、これは人間への関心や偏見を欠いており、従って人間のありきたりな欲望や不安や心配には無頓着。人はコントロール不能な「至高の神」より、その下にいる力の限定された神と取引し力を借りる。よって広範な宗教的寛容を促す。

日本ってまさにコレじゃないの?

 二元論の宗教も一神教も、大元は多神教から生まれたもので、なんやかんや隙間を縫って辻褄合わせてるところはあるらしい。キリスト教だとマリア信仰だの聖人信仰だのというやつとか。

 仏教の説明がまた面白い。「すべての苦しみは『渇愛』から生じる」というのが絶対法則としてあり、いかに渇愛せず、物事をあるがままに受容するか、涅槃(←消火という意味だそうだ。渇愛に燃える炎を消す。なるほど)に至るかを求める宗教だと。この法則を毀損しないことならばOKなので、神々の存在ももちろん否定しない。だけど普通の人には実現困難なことではあるので、やっぱり隙間が産まれると。以前、神仏習合についての本を読んだけど、日本においての神仏に限らず、結局宗教というものは皆いろんなものの複合体であって、出来た当時そのままに残っているというのは無いんだと思った。

 うーん、この宗教に関するところだけで一冊書いてくれないかなあ。とても感想が書き切れない。興味深かった。

 著者はベジタリアンにしてヴィーガンだという。

ヴィーガンであるのは宗教的な理由からではない。私たちが人間以外の生き物を物扱いにしていることに気づき、それにくみしたくないと考えたからだそうだ。だから、たんに殺生を嫌うのではなく、動物の扱いに問題があると思われるのであれば、食肉産業ばかりか酪農の産物も口にしたくないという。他人にも菜食を勧めるが、できるかぎりでかまわない、間違っても菜食を宗教に変えて狂信してはならないと説く。イデオロギーのはらむ危険を知り尽くした、いかにもハラリ氏らしい勧奨だ。そういう思いがあるから、歴史を幸福という観点からも眺めるという発想が生まれ、『サピエンス全史』でも幸福を大切な軸としたのだろう。しかも人間だけではなく動物までも対象にして。」

【Web河出・「スーパーヒューマン」柴田裕之(訳者)より抜粋】


 家畜として動物を扱うことに対してかなり辛辣だったのも納得。思い入れが深いところなんだろうけど、だからこそここだけはちょっと一面的かなとも思った。仏教に造詣が深くていらっしゃるので、法然や親鸞の考え方なども是非研究してほしい。日本に古来からある食肉動物の塚とかもご覧になってほしいな。

(某芸人さんがやたら畜産業を叩くような内容の動画を上げたらしいけれど、元ネタはこちらかなー三日で読破したっていってたしなーまあ動画見ないからどうでもいいけど)

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