ついに読書の秋到来ですね。涼しくて本当過ごしやすい。もうずっとこんなんでいい。
例によってウチのJKのおススメ。非常に読みやすくて一気に読了。主人公は……これはどちらなんだろう。タイトルからすると実は医者の方のような気もするが、メインストーリーはあくまで患者。というわけで梗概はこちらをメインで。
【60字梗概】
これ以上治療はしないという若手医師に反発し病院を出た末期がんの男が転院先の看護師の助力でホスピスに入り穏やかな最期を迎える。
構造としてはこの男・小仲のストーリーの上に若手医師森川とその同僚たちの日常の業務や生活がかぶさる感じ。なので、独身の小仲が激しい副作用やがんの痛みに一人苦しみのたうちまわるシーンの間に、能天気な飲み会やBBQシーン、家族との幸せシーンなどが交互に現れて、中々にエグイ。「俺がこんなに苦しい思いをして耐えているこの瞬間にも、あいつら(医者)はうまいもん食べて飲んで楽しんでるんだ」という小仲のセリフがあるが、まさにその通りの現実。ただ、医者の方は悪魔でもなく極悪人というわけでもなく、それぞれの人生を生きているだけ。常に患者のことを気にして節制するべきというのもおかしいし、まったく恨まれる筋合いも何もないのだが、
「森川医師が『二日酔いで吐いて』、抗がん剤の副作用の苦しみを連想する」
というエピソードは途轍もなく辛辣だ。このとんでもないズレっぷりは両者を見る読者だけがわかる。一種ホラーといってもいいくらいのヤバさ。ことほど左様に患者と医者の間の認識の差は激しいのだと、医者側によりぐっさり刺さる作品なのかもしれない。
作品中での医者は森川のほかあるあるな典型例みたいなキャラがいくつか出て来て、最初から最後まで特に何が変わるわけでもない。森川にしても、小仲の本当の苦しみを理解したわけではないし(そもそも見ていない)、だからどうするという正解を得たわけでもない。ただ確かなのは、ひとりの患者の死への経緯を、間接的にでも看取ったということ。その経験が後に活きてくるかどうかはわからない。ただ、知った。そこに意味がある。この作品を最後まで読んだ人間にも。
小仲の告知から死への経緯を見ていて思い出した。学生の頃に受けた講義「死の哲学」のアルフォンス・デーケン教授はついこの間亡くなられた。日本のホスピスや終末医療の草分けである教授の死生学は、キューブラー・ロスの「死の瞬間」がベースになってるんだけど、それに「死の受容のプロセス」というのがある。
1)否認 2)怒り 3)取引 4)抑うつ 5)受容
小仲の振舞いはまさにこれに沿ってる。「死の瞬間」、実家に置いてある、はずなんだが例によってコロナで取りに行けない。買おうかしら。
「アド・アストラ スキピオとハンニバル」カガミノハチ
ふと思いついて電子書籍13巻を一気買いして二日で読んでしまった。面白かった!そしてとても好みだった。何で今まで放っておいたのか。コレ、まだ始まって間もない頃に一巻が無料キャンペーンやってて、わーこれ面白い!絵もイイね!と思っていたんだけど、それからすっかり忘れてしまってたのよね(なんでだ!わからん)。最近になってたまたまツイッターで塩野さんの話になり、ローマ人の物語といえばハンニバルよね!となってこれを思い出した次第。
元から完成度高い絵なんだけれど、巻を追うごとに特に表紙!表紙がいい!全部いいけど六巻と十巻のカラーページが至高(この、生首抱えてるやつね)。ミュシャ風の繊細な色合いとくっきり輪郭、髪の毛の表現が好き。タイトルの字体もカッコいい。ちょっと何かの挿絵っぽい感じが、こういう歴史物には合ってると思う。ハンニバルのビジュアルもいい。孤高の天才といった趣がよく出てる。そう、ハンニバルは物凄くカッコいい人なんだよ。建国の志はまだ生きていたにしろ、大国となってやや緩みもあったローマに冷や水ぶっかけて震え上がらせたその頭脳と手腕、痺れる。本国では「残虐非道」として忌み嫌われ恐れられていたハンニバルだが、ローマに支配されていた周辺の国々からははっきり英雄と見做されているところから、凄さがわかるというものだ。
しかしこれ、てっきりアニメ化でもされてるかと思いきやされてない。あまりラブ要素はなくて、そもそも女性が殆ど出てこない(その少ない女性には印象的なエピソードが沢山あるんだけど)のがテレビ的にはよくないんだろうか。私は好きなのに。ファンタジー要素がない正統的な歴史漫画、しかも主に戦略戦術戦闘に特化しているのって他にあったかな。最近でいうと元寇を描いた「アンゴルモア」がそれに近いか?(こちらはまだ連載中)。じわじわ包囲して一気に殲滅というあの感じ、動く絵でみてみたい。何より、ハンニバルといえばレクター博士、という世間の発想を上書きしたい。ググるとそっちばっか出て来る…いやレクター博士も好きだけどさ…共通点は怖ろしく頭が良い、しかないのに。ハンニバルはサイコパスでは全然ないと思う。
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