「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」

システム関係の仕事をやったことがある人にとってはホラーと評されている本。うん、確かにそのとおり。



「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」日経コンピュータ(2020.1)
 中身に触れる前に自分語りをつらつらと。 
 1980年代に大学生だった私、当時仕送り口座は郷里の地方銀行だったので、月に一度新宿西口(けっこう駅から離れてる)のビル街まで出金しに行っていた。あの頃はATMならぬCD:キャッシュディスペンサー、なんと15:00に店と共にクローズしていたのだ。それを知らずに15:05に行って閉まったシャッターに驚愕、その場にいた守衛さんに慰められたおもひで(迷惑)。クレカも無い学生に成す術はなく、通学定期があってよかった…と思いながら異臭漂う西口通路をトボトボ帰ったのだった。
 で、初めて作った都市銀行口座が富士銀行。理由は、当時住んでいた下宿から最寄り駅の間にあったから。しかし作ってみれば富士銀は至るところにあった、しかも駅近に。流石は都銀!と感心したものだ。加えて、おそらく1988年のシステム刷新後だろうと思うがATMの処理が他行と比べて圧倒的に速かった。諸変更が口座作った支店でしか出来ないとか色々不便もあったが、まあそこら辺は他行も大して変わらなかっただろう。要はそれほど悪いイメージは無かったのだ。
 かの大トラブル時の記憶は実のところ殆どない。2002年の時は子育て真っ只中だったし、2011年の時は震災後の混乱の方が余程インパクトが強かった。あれ、またか長いな、システム担当者は大変だろうな、とは思ったけど。
 いやー、恐ろしい事が起こっていたのね。想像以上にホラーだった。
 私も情報系の仕事をしていたので身につまされすぎて震える。おそらくほぼ同時期だったんじゃないかしら。ちょうどメインフレームの集中管理から分散システムへ、フロアにPCが大量導入されたのもこの頃。黎明期に作られた古いシステムを見直して、ついでに業務も見直して一気に改革しましょうという時代だった。

 と、自分語りだけで終わるのも何なので本について。前半が「現在のみずほ」:二度の大きな失敗を踏まえ、新たに構築されたシステム部門で大きな乗せ換えをトラブルなく成し遂げた!失敗を経験したことで大きなスキルを得た!人材育った!将来もきっと頑張れる!という輝かしい希望に満ち溢れている。ここだけ読めばみずほに就職を希望する学生も多く出るのでは、という内容。
 だが後半は……もうのっけからヤバい。通常、複数の銀行が合併した際には最も出来のいいシステムに寄せるらしいのだが、第一の不幸は三行が拮抗していたこと。ある銀行に至っては未だに合併前の二行の軋轢を抱えており、事実上四行での戦いに。既にこれだけで嫌な予感である。第二はやはり上層部がシステムの知識も経験もなかったこと。ほぼシステム部門に丸投げで、全体方針も統括も何もない。皆で協力して良いシステムを作っていきましょう!とぶち上げたのはいいが、実態は全くそのようにはなっていなかった。これに各メーカーの我こそはという押し合いへしあいが加わってカオス状態、結局抜本的に作り直すには至らず、各システムをリレーコンピューターで繋いで処理、という聞くも恐ろしい構造に。
 ただでさえ日々のデータも処理も膨大なメガシステムが、そんな綱渡りな状態で「不測の事態」にぶつかったらどうなるか。現場のシステム担当者ならきっとある程度予想はしていたろう。日々注意もしていたろう。だけどやはり起こってしまった。あのトラブルの現場で対応していた方々はもう良いお年だろうが、尊敬しかない。よくぞ頑張られました、本当に本当に、お疲れさまです。どうかシステムも経営もわかるトップリーダーとして今もご活躍であらせられますように。

 第三者の立場から、終始抑制のきいた表現で淡々と書かれているが、紛れもない実録ホラー本であった。こういう本を作って世の中に自らの疵を知らしめ教訓として残すことを選んだみずほは、何やかんや偉い。日本を代表するメガバンクの一つだけある。ただ、あのアプリはもうちょっと何とかしてー。

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