「十二国記」

 
「十二国記 白銀の墟(おか)玄(くろ)の月 全四巻」小野不由美

 いわずとしれた超人気シリーズ。シリーズ6年ぶり、泰麒(たいき)の物語としては実に18年ぶりという。
 世界観と登場人物についての端的な説明はこちら→新潮社公式サイト「十二国記の世界」
 発売されてからもう数か月、もはや私なんぞが語る必要もないほど色んな方が素晴らしいレビューを書いておられることと思うが、記録と言うことで駄文をつらつら。ネタバレあるので分けます。



 まず、久しぶりの新刊ということで以前の話を少し読み直そうかと思ったが、いやいや逆に何もせず、記憶が呼び覚まされるまま楽しむ方がよくないか?ということでそのまま読んだ。それぞれの国の細かい事情や人の名前は案の定けっこう忘れていたが、それでもすぐその世界に入りこむことができた。
 それにしてもかなり辛い、暗い話ではあった。二巻目まで読みおわったところで、まだか…まだこのどうしようもない停滞感と閉塞感が続くのか…!と暗澹とした。十二国記はそもそも戴に限らずどの国もそれぞれに問題を抱えていて、解決するにも一筋縄でいかないことばかりではあるのだが、それにしても前半はあまりに絶望感が強くて心が折れそうになる。他の作品であれば、この状態でこれほど長く引っ張れないだろう。長く新作を待ち望まれて来た十二国記ならではである。
 泰麒は蓬莱の国(日本)に二度流され、そこで大きな悲劇を起こしてしまう。本人の望んだことでは勿論ないにしろ、まさに疫病神のような役割を果たしてしまった。争いや血を嫌う、慈悲深い生き物とされる麒麟としてはかなり異色の存在である。しかしこのような辛酸をなめてきた泰麒だからこそ、他の麒麟には難しいやり方にも挑むことが出来る。ラストの怒涛の展開は、決して魔法のようにあっという間に全てがひっくり返って解決というのではなく、そもそもの始まりから積み上げてきたすべてが、多数の尊い犠牲を出しながらも収まるところに収まる形になっている。
 意味があるかないか、今の自分にはわからない。だがすべては必ず未来に繋がっている。
 この普遍的なテーマを繰り返し、既に不動の地位を築いている「十二国記」の世界でなお驕ることなく、真正面から誠実に向き合い、通常ではありえない枚数をさいて読む者に突きつけた小野さんは、まごうかたなくこの作品世界の王であり神である。今作も本当に素晴らしかった。
 個人的に、赴葆葉(ふ ほよう)という女性が、もののけ姫のエボシ様と千と千尋の銭婆・湯婆とラピュタのドーラを足しっぱなしにした濃いキャラで好きだった。あの徹底したリアリストで極悪人、とみせかけた情の深さ、ジブリみがある。ここでは生死不明のままだったが何処かで生き延びていてくれるといいなあ。
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