賢木 五
wikiより |
ふああ……あ、ごめんなさーい☆昨日ちょっとオールで……え?ダメですよう秘密ですもん。でも……そんなに知りたいのなら、ちょっとだけ。誰にも内緒ですよゼッタイ!
帝、ですか?もう、すごおおおおくお優しいです。あんなお優しい方は見たことありません。ご寵愛の尚侍の君には当然なんですが、ウチら女房に対してまで敬語で、凄く丁寧にご対応なさるんですよ。無理に我儘を通すことなんて皆無ですし、とてもあのお二方と血がつながってるとは思えませんわ。あっ内緒ですよ内緒。
ええ、凄く良い方なんです。良い方過ぎて、お祖父さまの右大臣や母君の大后さまの無茶ぶりを撥ね返せないものだから全部こちらに降って来るんですよう泣。上司としては正直微妙なんですよねえ。ていうか、男としてもうちょっと、強引さっていうか、押しの強さっていうか、そういうのも無いと張り合いないじゃないですかこっちとしても。って自分のカレシじゃないんだから別にいいんですけどねウフフ。
えっ昨日の話?! えっとお……プライベートですようヤダー聞かないでください。いやいや全然!全然モテませんから自分!昨日だって見張りしてただけだから!……あっ。
……絶対、他の人には言っちゃダメですよ?バレたら自分、クビですから……絶対ですからね!
そうです、例の五壇の御修法(みずほう)、あれで潔斎されるってことで、帝は絶対に此方にはお渡りにならないってわかってました。だからいつもの細殿にご案内して。ええ、お二人が出逢った時の。想い出の場所ってやつですね。案外人の出入りが多くて大変だったんですけど、そこはまあ何とか。
お二人のご様子ですか。それはもう、ラブラブオブラブラブですよ!決まってるじゃないですか!皆が憧れる超絶イケメンと、今一番イケてるウチのご主人ですよ!美しすぎて尊すぎてもう!
……失礼しました。つい興奮しちゃって。
そうそう、ちょっと面白かったのは明け方?宿直の人がワザとらしく
「宿直申しの者でございます」
なんて大声張り上げてて。ヒカ……男君が
「どうやら他にも私のように密会してる近衛の官人がいるらしい。それを知っていて、あんな風にわざと聞こえよがしに言ってるんだな」
なんて苦笑いなさってたけど、普通に迷惑。無粋にも程があるし全くこれだから非リア充は。って自分思ってましたけど、寅の刻ー!とか言いながらあちこち見回ってるし、これは実際危ないかもって思って、そろそろ……ってお二人に合図したんですよ。そしたら尚……女君が
「誰のせいでもない、私自身の心があちらへこちらへと惑って涙が出てしまいますわ
夜が明ける、貴方も私にいつか飽きると教えて回っているあの声を聴くと」
なんてけなげな、トゥンク……ってくるよな歌を詠まれて。
「何と、この私に嘆きながら一生を過せと?
飽きるどころか、貴方へのこの想いは隙間なく胸一杯ですよ」
っんあーーっ、聴いてられないですよねホント!もう勝手にしてくださいな☆って言いたい所でしたけど、まあ流石に落ち着かないのでお開きになりました。暁の月は煌々と輝いておりましたけど、何しろまだまだ暗い時間でうすく霧もかかってましたから、きっと誰にも見られなかったと思います!うん大丈夫!
ってことで、もういいですか?ゼッタイ誰にも言っちゃダメですよお。ホントに、お願いしまーす!
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「裏は取れたのか」
「ハイ。ちょろいもんでした。ノリも口も軽すぎですなあそこの女房は」
「まさか承香殿の目と鼻の先であんな大胆な逢引きをするとはな。しかも五壇の御修法の前に罰当たりな」
「弘徽殿の細殿からはちょうど死角になりますからね。で、どうなさるおつもりで?」
「さて、どうするかねえ。正直これだけだとまだ言い逃れも出来る。変に噂を広げて向こうに警戒されるより、確実に現場を押さえた方がいいだろうな。とりあえず妹女御の耳には入れないように。いずれまた必ず動く、暫し待て」
「御意」
参考HP「源氏物語の世界」
<賢木 六につづく>
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