おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

末摘花 十(オフィスにて♪)

2017年12月5日  2022年6月8日 
「侍従ちゃん?」
「なあに右近ちゃ……じゃなかったっ大輔命婦さん!?」
「ごめんね忙しいのに。師走だものね。ちょっとだけいい……?」
「いえいえいえ!だいじょぶですよ!大輔命婦さんのお望みとあらばうちのウルサイお局さんだってなんもいわないし!いいところにいらっしゃいました、ついさっきお正月準備の荷物届いたばっかで。何でも言ってください♪」
「ありがとね。でも、そういうことじゃないの。ちょっと話を聞いてもらいたくて」
「え……そ、そんなウルウルした瞳で見つめられたらアタシ……」
大輔命婦の白くしなやかなてのひらが、侍従の手を優しく包むこむ。
「わ、わかりました!お茶、お茶しましょう! ちょっと右近ちゃんに頼んできますね!右近ちゃーん!」
……
「で」
「ん、これ超おいひい(ごっくん)異次元の味! いやマジで! 右近ちゃんも食べなよーせっかく大輔命婦さんが持ってきてくれたんだしさ」
「まーた常陸宮でタダ働きってことね、しかも新年早々」
「えータダじゃないよー等価交換てやつう? 今大流行りで滅多に手に入らない帝御用達スイーツいただいちゃったしー、さっきちょっとだけ揉んでもらったしー。はー肩も首も軽ーい♪」
「ったく、まんまと騙されちゃって…」
「首尾よく任務完了したらまた揉んでもらうんだー、全身コース♪ 小顔効果もあるってさ」
「……え、それちょっとうらやましいかも」
「でしょ♪右近ちゃんも来ちゃう?」
「いやまあ……でもさ、どういうことなの? ヒカル王子が新年の挨拶に御みずから常陸宮家をご訪問、て随分破格な待遇よ? 正妻さんじゃあるまいし」
「まさにそれよ右近ちゃん! あのお姫さまったらやらかしちゃったのよ……いきなり王子のための新年の衣装をご用意しちゃったわけ
「えええ……そうなんだ。もしかして右大臣家の正妻さんの存在知らないのかな?しかしチャレンジャーだわね、あの好みにウルサイ王子に」
「でしょー。普通できないよね?大体王子の普段着のインナーだって多分、アタシたちの少ないお給料何か月分?!だし、まして新年用の晴れ着なんてもう無理無理無理!想像もできないっ」
「どんな衣装だった?すっごい興味あるわ。今だったら速攻写メでSNSよね平安て不便ー」
「んーあんまり、イン〇タ映えはしない感じかな…命婦さん預かったものの、王子に渡していいものかどうか何日も悩んだみたいよ…」
「ああ……(察し)」
「でも曲がりなりにも宮家のお姫様の意向だし、自分んちに保管したまんまってのもやばいから結局持ってったんだけど、お手紙渡した時点で王子ドン引き」
「一応お歌は詠んだんだ」
「それがさー、
『あなたのつれないお心が辛くて、私の袂はほらこのように……涙で濡れるばかりですわ』
って、引っ掛けも二重の意味もなーんもないそのまんま和歌が、陸奥紙にバーっと書かれてたって」
陸奥紙……檀紙かあ。高級な紙ではあるけど、恋文に使うには厚すぎかもね」
「そうなんだよね。薄い紙だとお香もほんのりだけど、厚手の紙にガッツリ匂いつけちゃうともう風情も何もないわよ。香害よね。その上衣装がまた古くて……中古とかユーズド感とかどころじゃない。一応流行り系の薄紅色だったから、着慣れて少々色がくすんでるーくらいだったら逆に渋くてステキなんだけど、限度超えてたってよ。
しかもよ! 表地と裏地、この色合わせが平安男女最大のオシャレポイントじゃん?!なのに全く同じ色で特に裏がメッチャ濃ゆい色。それがチラチラ端から見えて、とてつもなくダサい
自分の責任じゃないにしろ、超恥ずかしかった…って命婦さん涙目になっちゃってて色っぽかったー!」
「何やってんのあそこの女房さんたち…年寄りばっかりだしボケてんのかしら」
「色々とズレてんのよね。由緒正しきお家柄だから歴史的な慣習もあるだろうし気持ちはわからなくもないけど、正直王子に見合うだけのおもてなしをする財力もセンスも今はないんだから、少しは現実見ないと。まあ今みたいにネットでニュース見られるわけでもないし、ツイッ〇ーやイン〇タやF〇とかで今の流行りとかセレブ有名人の暮らしがどうだとか知る手段ないから仕方ないんだけどね」
「ってわけで新年早々現実的な対応をしに行くわけね、侍従ちゃん」
「そうなのよ右近ちゃん! だって……うふっ、やっぱり言っちゃお。ヒカル王子ったらね、姫君のお歌をみたときに
『前にいたあの、何て言ったっけ若くて可愛い子。そう侍従ちゃん?あの子に直してもらうかしたらよかったのに』
なーんて言ってたんだってー!キャー!もうコレ行くっきゃないじゃん?!ああ待ってて王子、この平安ステキ女子の侍従ちゃんが目に物みせてくれるわあ!」
「……可愛い、ていうのは命婦さんの盛りじゃないかなあ」
「何?」
「ううん、何でもない。頑張ってね。応援してる(はあと)」
「ありがとー!」

>>「末摘花 十一」につづく
参考HP「源氏物語の世界
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