「桐壺」背景その二
そんな社長の耳に、亡き恋人に生き写しという娘の噂が耳に入る。もしかしてそれは娘の父の策略だったのかもしれないが、社長は一も二もなく彼女を入社(入内)させる。
彼女の入った部署(部屋)の名は「藤壺」 。
光る君の源氏と並び、輝く日の宮、と呼ばれた「藤壺の女御」の誕生である。
今度は「ぺーぺーOL」どころか、家柄も身分も文句のつけようがない。なんといっても先代(先帝)の血縁者である。
正妻であり跡取り息子(東宮)の母でもある弘徽殿(こきでん)の女御は戦々恐々、さらなる嫉妬と憎しみを募らせるが、相手が相手なので、さすがに具体的な行動には出られない。腹に溜まった黒い感情は後々、爆発の機会を待って静かにどろどろと煮えていくのであった。
一方、父の実家で大切に、だが母の愛を知らず育ったイケメン少年は、たちまち「母に生き写し」の若く美しい藤壺の女御に憧れを抱く。藤壺の方も、美しく賢く、だがどこか寂しげな風情の少年に心惹かれたりなんかする。
そんな思いを秘めたまま、少年は十二歳になり元服、源氏の姓をいただいて父の元を離れる。
当時は元服を済ませれば成人とみなされた。
源氏は身分こそ低いが何しろ現社長(今上帝)の息子である。しかも容姿端麗・才気煥発で社長の大のお気に入り、当時の役員のひとり(左大臣)が「将来有望」と判断してとっときの娘「葵の上」をめあわせる気になったのも当然だった。
だが娘は本当なら跡取り息子(東宮)に嫁入りするはずであった。彼女にしたら
「話が違うじゃないのお父様っ」
というところである。
役員(左大臣)の正妻の娘として華々しくデビューするはずが 、格下(臣下)で、なおかつ四つも年下の女慣れも世慣れもしていない若造(というより小僧:中学生だよ、うう)の妻にされてしまったのだから大変である。
なまじっか源氏がええおとこ過ぎたのもよくなかったのかもしれない。
何この子、私よりキレイなんちゃう?
なんて思ってしまったかもしれない。かくして后となるべく気位たかく育てられた美しい妻は心を閉ざし、源氏は源氏で気詰まりで、若いふたりはなかなか打ち解けられないのであった。
と、いうような背景を頭においた上で、いよいよこれからオトナの源氏の物語が始まる。
<「帚木」オフィスにて♪に続く>
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