「沈まぬ太陽」山崎豊子 を読んだ
元・毎日新聞学芸部で、かの井上靖のもとで記者として働いたことのある山崎さんの筆致は、相当な情報量でありながら簡潔で読みやすい。小説としては文句なく面白いが、虚実織り交ぜて書く手法には賛否両論あるらしい。モデルと推測される人物が全然違うように描かれてる、とかひとつひとつこう違うああ違う、と説明してあるサイトまである。
文庫本の帯にも「自分の夫の会社がこんなひどいところだとは知らなかった」みたいな感想が載っていた。
ある意味めちゃくちゃ思い切った手法というか「どんなことをしてもこのテーマで書いてやる!」というなみなみならぬ決意、気合と根性なしには出来ないワザである。その意味ではかなり尊敬ものだ。今、こんなの書ける作家がどこにいるだろう?
「ダヴィンチ・コード」みたいに、丸まるトンデモの癖に冒頭で「これは小説である」と逃げ道打って、広告代理店の販売キャンペーンに完全にのっかったような、ヌルい小説とはわけが違うんである(といいつつあれも結構面白かったけど。ただ十年二十年しても売れる本かな、と考えると疑問)。
この小説の意義について語るならば、忘れてはいけないのが「御巣鷹山での墜落事故」。私自身、あのニュースの第一報からリアルタイムで観ているし、手帳に書かれた遺書にも涙した。いろんな形で残すべき記憶であると思う。モデルとなられた航空会社の方々も、そこは当然、じゅうじゅうご承知のことであろうが。
御巣鷹山墜落事故に関する書籍ではこちらもオススメ。ノンフィクションです。
「墜落遺体」飯塚 訓
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