これは予告編で気になって。見損ねた映画「トーク・トゥ・ミー」の兄弟監督さんだ。
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— 映画『ブリング・ハー・バック』公式 (@bhb_movie) July 17, 2026
"兄弟の絆"が胸を打つ!
本編映像 解禁
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妹を想い隠し通した真実、
その裏にあった兄の葛藤──
二人だけの合言葉「グレープフルーツ」
切ない“兄妹愛”を捉えた本編映像が公開🎥
容赦のない衝撃が観客を襲う禁断の儀式体験と、… pic.twitter.com/mYknvv5zTe
「ブリング・ハー・バック」ダニー&マイケル・フィリッポウ
Bring Her Back / Danny & Micheal Philippou(2025オーストラリア)
かなりエグイし痛そうなシーンテンコ盛りなんですけど、すごく良くできた映画だった。緻密に作り込まれた設定が、説明的ではなく何気ない会話や行動によって自然に腹落ちできるよう工夫されており、それぞれの人物の複雑な事情と物語の進行が完全に一体となって怒涛の展開から、美しく着地する。残酷描写やホラー苦手な人にはキツイかもだが、圧倒的名作。よくありがちな、ラスト近くで謎が解けた/正体がバレた瞬間に怖さが解けてなくなる問題も、今映画にはまったくない。怖怖怖痛怖痛怖でやがて悲しき、切ないラストだった。
以下、盛大にネタバレしてるので注意!:
アンディとパイパーは親の再婚で家族となった義兄妹だが、とても仲が良い。特に兄のアンディは弱視の義妹パイパーを過保護気味なほどガードしており、「パイパーが嫌な気持ちになりそうなもの/こと」は教えないのが常。冒頭のエピソードで出てくるこのアンディの基本行動規範が物語の主軸になってる。これがねえ上手いんだわいきなり。grapefruit!の合言葉もカワイイ。あれは「心配ないよ!」「請け合うよ!」みたいな感じなのかな多分。
なんでアンディがここまで義妹パイパーに献身的なのかというのには理由がある。彼はずっと父親に虐待されていた。この父、一方でパイパーには一切手を出さず可愛がっていて、アンディを殴る時はシャワーを流して聞こえないようにしていた。その状況に耐えきれなくなった子供時代のアンディは一度だけパイパーを殴ってしまったことがあり、二度とそういう所業を行わないために自ら規範を定めた。絶対に父のようにはなりたくないという気持ちと、そうはいっても父を慕う気持ちがせめぎ合って、結局は父の「パイパーだけには悪いところを見せない」方式に倣ってしまっているのだ。その父が、流しっぱなしのシャワーの下で死んでいるのを帰宅した兄妹が目の当たりにする(ただしパイパーには見えてない)シーン、肉親の死に対する驚きとショック以上の何かがアンディに課されたと思われる。
そして里親のローラ。パイパーと同じように視力障碍を持つ娘を亡くして間もない、元優秀なカウンセラーという触れ込みの女性。のっけから「異様な言動」の描写がすごい。普通はこんなことしないよねというズレ感が絶妙なのだ。まず兄妹の初訪問時に大音響で鳴らされてる音楽、リビングに置かれた飼い犬の剥製(しかもパイパーに触らせる)、親切そうにしながらもパイパーだけを贔屓しアンディとの扱いの差があからさま。かと思えばアンディのスマホを無断で覗き込むなど距離感もおかしい。怖いのは初日のこれら全てはアンディだけに負わされて、パイパーは文字通り何も見えていないし違和感にも気づかないところ。もうここからして既に罠に嵌ってるのだ。以降はじわじわと兄妹の分断を図り、パイパーを懐柔するとともにアンディを追いつめていくのだが、父の葬儀を終えた夜にどんちゃん騒ぎをして兄妹を慰めるシーンでは「優秀なカウンセラー」としてのメソッドと経験及び本来持ってる善性が垣間見える。装ってるわけではなく本気でやってるのよねこの時だけは。だからこそ、ローラに対して悪印象しかなかったアンディも心からの感謝の言葉を述べる。だけど宴の後は完全にローラの謀略タイム。一人の人間の中に存在する善と悪を、これほどまでに明示的に表現できてるのは本当素晴らしいと思った。
さらに、この家に監禁されていたオリバー!こんな役やって子役ちゃん大丈夫か!と心配になるほどの超痛怖いシーン満載。「儀式」のために悪魔を憑りつかせている、とローラは信じ込んでいるが、その実何かの催眠術をかけられてるっぽい。元カウンセラーの人心操作術プラス暴力と懐柔による洗脳に近いのかもしれない。敷地内を巡る白線が「結界」になっておりこれを超えようとすると全身に苦痛を感じ(るように暗示をかけてる?)、超えると正気に戻る、つまり一定の領域でしか通用しないというのも興味深い。ローラがパイパーだけを連れて買い物に出かけた理由は勿論兄妹を引き離すことだが、そのせいでアンディがオリバーと接触し「BIRD」という文字と凄惨な自傷行為と異常行動を目撃する(ここでローラへの信頼全消滅)。アンディを家から排除しようというローラの目論見は大方成就するも、それ故にオリバーの正体が露見する事態に繋がっていく、という展開には痺れる。ローラは完全無欠な悪魔ではない、所詮人間ならではの綻びだらけの悪だくみなのだ。思うに彼女も、あの謎の儀式ビデオ?を繰り返し見るうちに知らず知らず(自分自身に)洗脳されちゃったのではあるまいか。善と悪はいつも隣り合わせにあって、何なら溶け合っていたりして、バランスが崩れれば容易に悪に振り切ってしまうこともあるのだ、どんな善なる人であっても。
最後の最後にアンディは自らの規範を破り、パイパーに自身の虐待経験を含めローラの危険性を全て伝えようとメッセージを送る。これはある意味真に父を乗り越えた瞬間で、パイパーを純粋に兄として守ろうとする非常に前向きな行動だったのだが、パイパーのスマホを確保していたローラに無情にも消されてしまう。ここからの展開はまさに善と悪の戦いといった趣で、ローラの家に駆けつけたアンディとローラの元同僚の担当職員は「善」側だが、「儀式の完成」を目前にして悪魔そのものに変化しているローラには勝てず、あえなく殺されてしまう。最後に残ったパイパーは、悪いものに極力触れず愛されて育った「父と兄の善性」を象徴するような存在。悪魔化したローラはパイパーを手にかける寸前で、微かに残っていた自らの善性を呼び覚まされて負ける。いやーーー何とスッキリ来る顛末か。悪行の数々は取り返しがつかないレベルだけど(コナーくん助け出されてよかったけど立ち直れるのか……)。
ラストがまた美しい。パイパーが助けを求めて乗った車の中で飛行機の音を聞く。父の葬儀時にアンディが、「死者は飛行機に乗って向こうに行くんだ」と話していたことを思い出して、ああアンディはきっと亡くなったんだと察する。そうか、このシーンを成立させるためにアンディは死なねばならなかったのね。わかるが切ないな、アンディすごく頑張ったのに。だけどアンディが命がけで助けようとしたパイパーは、きっとこの先も強く生きていける、そんな希望も見えるシーンだった。バッドエンドでもありハピエンでもある、両方が並び立ち溶け合った見事なラスト。
というわけで超良く出来てて超面白かった。万人にオススメとはいかないがグロ耐性あるガチな映画好きには激推し。
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