おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

「罪の声」

2024年12月19日  2024年12月19日 

 私は映画→原作と観たけど、逆がいいかもしれない。どちらの出来もいいだけに、片方をみてしまうともう片方の楽しみが減るかも。 


映画.comより

「罪の声」土井裕泰(2020)


 TV放映してたのを録画で観た。事前知識なし、おっ星野源と小栗旬が出てる、観てみよう、という軽い気持ちだったが、いやーーー面白かった!結構長い映画だったけどひと時も目が離せなかった。エンドロールみてはじめて脚本が野木亜希子さんと知ってうわーーー!と。主演の二人(星野源・小栗旬)がバディっぽくて、火野正平さんや橋本じゅんさんもいるしMIU404じゃん……と思ってたところでした(遅)。

 昭和世代なら誰でも知っている「グリコ森永事件」をモチーフに描かれたフィクションなのだが、総じて「なぜ今これを取り上げるのか」が問われていて、それぞれの「必然」がそれぞれに説得力があり、激重な話なのに後味は悪くなかった。「アンナチュラル」「MIU404」に通じるところも今思えばたくさんあった。はよ気づけ私。両ドラマと映画「ラストマイル」に嵌った人には特に必見。

……以下ちょいネタバレ……



 何よりスっとしたのは、私が何年もモヤついててこの先も解消されることは到底ないだろなと思っている「学生運動」「活動家」について、スパーン!とキレイにぶった切ってくれたところ。もう本当に一言一句その通りですわ。この一連のセリフだけ切り取って保存したいくらい。なーにが奮い立っただ闘争だ。ふざけんなだわね。「声」を媒体としてこれほどに真髄を突く形に収束していくとは、粗筋だけ読んでも到底わからない。というわけで原作もぜひ読みたくなったので借りて来た(いつものムーブ)。

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「罪の声」塩田武士(2016)

 映画と同じく新聞記者の阿久津とテーラー業の曽根俊也の二人が主人公だが、此方は作者が元新聞記者のせいか、阿久津が主に動いていて、より群像劇の性格が強くなってる。2016年度週刊文春ミステリーベスト10国内部門第1位、第7回山田風太郎賞受賞。

 何より作者の「絶対にコレを書き上げてやる」という熱量がすごい。大学時代の素朴な疑問から長年抱き続けていた思いがすべてここに凝縮、といった感じ。何しろこれを書きたくて新聞記者になり、小説家になったものの編集者に君の筆力じゃ無理と断られ、数年腕を磨いてから満を持して書き出したというからすごい。真犯人はフィクションとはいえその迫真性から、どれだけ精緻に根気よく調べ上げたかが窺える。

 ただ、今回は映画から観てしまったことをちょっと後悔した。読み進むうちに謎が解けていくという楽しみが明らかに目減りしちゃったかも。それと、阿久津や俊也の犯人に対する対応が少し物足りなかった。調査してるのは殆ど阿久津で、俊也とはあまりバディ感がなかったせいもある。映画の胸のすく感じは、ひとえに映像と演出と役者さんの力なのかもしれない。ただ、真相が解明されたところで失われた命は還らないし、年月も戻せない。モヤモヤが残る方が正解なのかもね。

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