おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

「カーテンコール」「身代わり忠臣蔵(小説)」

2024年2月20日  2024年2月20日 

 最後!といいつつ最後にならないことを切に願う。

「カーテンコール」筒井康隆(2023)

 いやー面白かった。一気読みが勿体なくてゆっくり読んだつもりが二日で読了。25編それぞれに全く違う話なのに当たり前だがどれもまごうかたなき筒井ワールド。作家の手持ちのカードたる「言葉」がみっちみちに詰まってる。しかも今もその脳内メモリが絶賛更新中であることも窺い知れる。これで終わりだなんてとんでもないことでございます、ずっとずっと書き続けてくださいませ。というか、書かずにいられなくなるはず。

「虫を起して卒倒する」なんて言い回し、軍歌や都都逸や民謡や、その辺の親爺が作った変な替え歌を普通に盛り込める現役作家はもう他にいません。(「白蛇姫」)

 ふざけてばかりかと思えば、とんでもなくピュアで透明な泣かせる話も書けちゃう(「川のほとり」)、自分の作品の登場人物ばかりか往年の有名作家さんたちも登場させて当時の口癖を再現できちゃう、かと思えば複雑カオスな現代社会現象をラッパーも真っ青な切れ味とリズムに乗って歌い上げちゃう(「コロナ追分」)、ここまで書き続けてきたからこそのスキルと妙味。お願い引退しないでー!!!

 ところで「川のほとり」は亡き息子さんと夢で遭う話なんですが、ところどころあまりにリアルでビックリでした。夢の話にリアルっていうのも変だけど、人間の脳の仕組みはさほど変わりないということなのかも。ただ、筒井さんの語彙力と経験値が圧倒的すぎるので出てくる情報に大きな差はある(だからフィクションですって)。 



 どうにも腑に落ちなかったので原作を読んでみた。

「身代わり忠臣蔵」土橋章宏(2018)

 一日かからず読了。普通に読みやすくて面白かった。案の定というかなんというか、やはり映画と全く違う「考証」のキャラであり話の展開。とはいえ昨今話題になっている「原作改変」問題には当たらない。映画の脚本も同じ人だからだ。

 この作品自体は特に引っかかるところもなく楽しめた。何より、

「武家社会において愚鈍な上役の失態のせいで苦労させられる部下たち」

 という図式が明確なので、そこに武家生まれとはいえ武士ともいえず・僧ともいえず・民草ともいえない考証がぽーんと放り込まれるというのが物語として面白かった。完全に異分子のはずの考証が知らず知らず、バランサーとしての役割を果たさざるを得なくなる展開も無理なく丁寧に組み立てられていた。

 うーん、じゃあ何でなのだろう。やっぱりわからん。映画でのあの大胆な?改変はどういうこと?まず上記の図式がすっかりぼやけてしまった。愚鈍な上役は将軍・吉良上野介・浅野内匠頭の三人のはずが、上野介のセリフや描写が圧倒的に酷すぎるせいで浅野の欠点がかすんでしまった(小説では両者とも大概だが、手を出してしまった浅野がより悪いという解釈)。お上側も、将軍様の初手の対応のまずさ(喧嘩両成敗を適用しなかった)より、吉保の悪辣さがクローズアップされてたし。 

 何より主人公のキャラが違い過ぎる。原作をまんま踏襲しても十分面白いキャラになったと思うけどなーあの俳優さんなら。むしろ原作の考証のほうがイメージ通りな気が。

 などとつらつら書いてみたものの、結局は「映画での笑いどころが好みに合わなかった」に尽きるのかもしれない。ドリフで育った世代だし銀魂大好きだし相当寛容な方だと思ってたんだけど私もメンドクサイオタク側なんだわきっと。今頃気がついたんかいとセルフ突っ込みをしつつじっと手を見る。むーん。

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