おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

「検証 ナチスは『良いこと』もしたのか?」「骨灰」

2024年1月21日  2024年1月21日 

  積読消化も溜まっていく今日この頃。ガンバレ私。

「検証 ナチスは『良いこと』もしたのか?」小野寺拓也 田野大輔(2023)

 Twitter(x)で見かけて読みたくなった。二段組だが非常に読みやすくわかりやすい文章で120頁。元史学科長女、こういう本よく授業で読んだわと言いつつ夕食後に一時間ちょっとで読破してた。 
 私自身の、ナチスに対する最大の誤解といえば
「民主主義の国で普通に選挙をして勝った」
 と思い込んでいたことだ。
 まったく普通ではなかった。
「国民の求めるところを的確につかみ、感情を揺さぶる言葉やイメージに転換して」「左派への危機感を利用して弾圧を強化」、「ヴァイマール憲法の制度上の脆弱性や物理的な暴力行使によって政敵を委縮・弱体化させた」結果としての一党独裁であった。
 人は利によって動くし、情によっても動く。人間を人間でないものに変えるのではなく、人間であるからこその特質を最大限に利用しているところが恐ろしく、醜悪なところだ。ヒトラーが目指したのは「『民族共同体』の構築によって国民の支持を取り付け、それによって『敵』に対する戦争や暴力を可能にすること」だった。ナチズムの訳語は「国家社会主義」ではなく「国民(もしくは民族)社会主義」でなければならないことの理由がここにある、という。
 もうひとつ、私が長年疑問だった「ナチスによって強制移住させられた人の家屋敷や財産はどうなったのか」だが、多くはナチス政権が吸い上げ、一部やはり国民にも分け与えられていた。多くの人が追放された誰かの服や帽子やアクセサリーを身にまとい、誰かの家具や道具を家に置き普通に使っていたということか。出所を誰もが理解していたかどうかはわからないが、なんともグロテスクである。その人たちは戦後に断罪されることこそなかったかもしれないが、何を思っただろう。密かに処分してなかったことにしたのだろうか。
「民族共同体」から異分子や病巣は取り除かれなければならないという思想の下、「共同体」に利することなら何でもありの世界は、日本でいう「因習村」を思わせる。おそらくどこの国でも、どの民族でもあり得る話なのだ。悪魔ではない「人間」が「人間」の集団を囲い込み扇動して、巨悪を作り上げてしまうというのは。
 人間の「意思」というものは恐ろしい。「お気持ち」を馬鹿にしてはいけない。簡単に過激に振れてしまうものとして、慎重に・注意深く扱わねば。


「骨灰」冲方丁(2022)

 冲方さんの本格ホラーは初めて読むかもしれない(他にあったっけ?)。現代ものとはいえ題材が、日本古来からの禁忌やなんやかやが入り乱れて強火の異世界感。ちょうど今、大河にて平安の「穢れ」がホットな話題になっていたため、私的にはタイムリーだった。ただしこっちは穢れなんて生易しいものではない。
 例によってネタバレ超禁止!な話なのでこれ以上は語れないのだが、一つだけここで言っておこう。年末に「令和に開く耳嚢」を百話完結させたのだが、その中のとある話と同じようなエピソードが出てきて真面目にヒエっとなりました。ま、まあホラー物によく出てくるやつといえばそうなんだけどさあ……ちょっと鳥肌立ったわ……
 あとは、これはきっとワザとなんだろうと思ってるんだけど、登場人物の誰一人として好きになれないし信用ならない。最初から最後まで。それがまたこの物語にピッタリ嵌ってる。いやもう本当うまいですわ流石。映像化しないかなあ。
 
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