おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

「トーマの心臓」「大奥」「進撃の巨人」

2023年3月16日  2023年9月12日 

 超有名な漫画三連発。とはいえ最初のはノベライズ、あとの二つは再読。



「トーマの心臓」森博嗣(2009)

 有言実行なワタクシなので、以前言及したコレを読んでみた(図書館で見つけた)。

 さすがの文章の巧さ・構成の妙でほぼ一気に読了。ストーリーと人物設定はだいたい原作に沿っているが、舞台は日本国内の寄宿学校、時代はおそらく戦前あたり?とぼやかされていて、名前は愛称としてまんま使っている。

 そもそも日本人である萩尾さんがドイツのギムナジウムを舞台に描いた漫画が、森さんの手で日本に回帰する、という不思議なことになってる。

 漫画原作のノベライズを読んだことは殆どないんだけど、だいたいは漫画の情報量が如何にとんでもないかを思い知らされる結果となる。本作も同様。萩尾望都さんの大ファンと仰る森さん、書き始めるまでに相当逡巡したんじゃないだろうか。ひとコマひとコマを忠実に文章に落とすなど絶対無理なんである。特に萩尾さんの場合、各人物の性格や背景、家庭環境までふんだんに含みがある。何気ないしぐさで示す関係性、日常を過ごす間にふと浮かんできたイメージ等、多層重層の表現がてんこ盛りなのだ。

 漫画ではエーリク、オスカー、ユーリそれぞれの細かい心理描写があったけれど、あれをすべて「神の視点」で見通すには絡む人間も多すぎ・心情の掘り下げも深すぎる。語り部としてオスカーを置き、一人称で通した理由がよくわかるというものだ。

 原作を何度も読み返した私としては食い足りないところ多々あるが、語り部がオスカーと考えればまあこうなるよね、と納得もする。全部書き込んでいたら字数が膨らむばかりだし、原作の持つ「その年齢特有の繊細な透明感と美」を保てたかどうかわからない(話としてはかなり重く悲惨ではあるので)。とにかく萩尾さんの作品世界を壊さないことに重きをおいた森さんの果敢なチャレンジには最大限の敬意を表したい。

 ただ、原作読んでない人はトーマが死を選んだ理由、全然わかんないんじゃないかなー。ここからスタートな人は滅多にいないからいいのかな。うーん。漫画読もう!



「大奥  全19巻」よしながふみ(2005-2021)

 此方は雑誌連載の方でずっと読んではいたが、この度のドラマ化があまりにも面白かったので電子書籍で一気読み。しかし読み直してみると、ドラマが謎アレンジしまくってるのにも気づいてしまいやや萎えたところも……まあ、全部をそのまんまは無理だし(いろいろと…)仕方ないんだけど。絵面はバッチリ再現できているからこそ惜しい(といいつつシーズン2も観るきっと)。

 改めて読み直してみて、男女逆転という設定を最大限に活かしつつ、現代まで通じる問題点を炙り出してみせるこの構成の素晴らしさ、人物造形の深さ、セリフひとつひとつの重みにただただ感心した。架空の物語なのに(だからこそ?)この時代の為政者たる徳川家歴代将軍の苦労や思いがストレートに伝わってくる。不思議なものだ。

 そして再読して気づいたが、これはある意味「翻案」漫画なんだよね。史実を何かの「原作」として考えると。男女逆転というファンタジー設定が、史実という縛りによって浮つくことなく、ある枠内でのリアルを実現してる。通常の歴史漫画だと「実在の人物」というのは枷になる部分も多いんだけど、男→女とすることで逆に自由な表現が可能になってるのだ。これこそまさにフィクションの妙。描くの大変そうだけどこれは楽しかっただろうなー。ラストがこれまた、史上稀にみる綺麗な着地。紛れもなく、読んでおくべき名作にございました。


「進撃の巨人 全34巻」諌山創(2009-2021)

 此方は連載始まって間もない頃から秀逸な考察が山と出ていて、私なんぞが今更何を言うこともない。単なる自分語りと感想をダラダラと述べるだけにしときます。

・・・微妙にネタバレあり注意・・・

 最初に読んだのは週刊マガジンだったように思う(週マガは時々、注目の新人を取り上げてちょっぴり紹介みたいなことをしてる)。で、まず巨人のキモさ不気味さにやられた。なんだこれ夢に出そう。と思いつつ全部読んだ。

 しっかり話を把握したのは、子供の付き添いで行った理髪店。当時二巻まで出ていて、ヒエエヤバい、と震えつつもしっかり全部読んだ。続きが気になったもののあまりの禍々しさに「家に置きたくない」と手控えた。

 その次はいきなりの超展開「長女による一気買い@アニメイト」である。確かその時点で10巻は越えていたように思う。うあー何で買ってきたんじゃあ!といいつつも一気読みし、続刊は私が買い足し続けて最終巻に至る。

 再読してまず思ったのは展開の速さ。あれ、こんな次々新事実発覚していったっけ???もうこんなに???などと思いながら、リアルタイムで読んでいた時には気づかなかった諸々の伏線を楽しむ。あーこんな最初からこうだったか……このセリフ、実はこんな意味が……いやーよく出来てる。そして登場人物への愛が半端ない。エレンミカサアルミン以外の脇役たちはもちろんのこと、ほんのチョイ役でもどんな人間なのか、どんな最期だったかをキッチリ描いてたりする。  

 しかしこのエレン、日本人たる私からすると完全に「神」のイメージ。過去現在未来すべてをフラットに見通せるが故に、必然に向け否応なしに進むしかないその悲痛。人には止められない。「戦」も自然災害と同じく、理由もなくある日突然どこからかやってくる災厄と認識していたという中世の民と同じ感覚かもしれない。一見壮大だがその実、ミクロな「個人の意思」が意外に大きな影響を長く及ぼし続ける、という図式、まさに今起こっていることじゃないか?これもまた「フィクションを極めたことでリアルに肉薄する」事例の一つなんじゃなかろうか。

 と、とりとめもなく感想終わり。此方も読むべき名作。まだ読んでない人は是非に。34冊なのでそれほど長くもない。

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