「大飢饉、室町社会を襲う!」「有頂天家族 二代目の帰朝」
積読は日々増えているが細々と消化もしてます(つまり減ってない)。
「大飢饉、室町社会を襲う!」清水克行(2008)
「世界の辺境とハードボイルド室町時代」(2015)と順番は前後してしまったが、こちらも面白かった。大飢饉の起こった大きな理由のひとつが貨幣経済で京へのコメ一極集中(高く売れるから)ってなんか現代っぽい。こういうとんでもない失敗を繰り返して今があるんだなあ。
欧州でいうノーブレスオブリージュ:
日本語で「位高ければ徳高きを要す」を意味し、一般的に財産、権力、社会的地位 の保持には義務が伴うことを指す。……自発的な無私の行動を促す不文律の社会心理」(Wikipedia)
何となくだけど「上から下」への心持ち、という感覚だったんだが、室町社会の「徳」はどうもそうじゃないらしい。
お金持ってて社会的地位もあるアンタらは困ってる私たちのためになるべき!
という下つ方から上つ方への非常にアグレッシブな要求。「打ちこわし」「一揆」は単なるアナーキーな略奪ではなく交渉のいち形態であり、事前に「この棟だけは壊さないでくれ」「ここの蔵だけにしといてくれ」→「了解」みたいな根回しがあったという。これで制御不能な暴動と化すことは滅多になかったと。ムラ社会というのは今あまりポジティブな意味で使われないけれど、こういう交渉方法がある程度成り立つのはやはりコミュニティの強固さ故だよね。
と言っていたら、図書館の待ち行列がまた一つ解消された。今度は高野さんの本。楽しみだー♪(かくて積読はまだまだ減らず)
「有頂天家族 二代目の帰朝」森見登美彦(2015)
何やら先月とほぼ同じラインナップ(笑)。例によって狸たちのまったりな日常が、赤玉先生の息子の帰還で雲行きが怪しくなり、先代から続く根の深い確執による陰謀に一帯が巻き込まれていく……といった趣向で、今回もまた案外(?)ハラハラドキドキのジェットコースター的展開、最後にはどういうわけか感動してしまうという仕掛けになっている。
このシリーズの不可思議さというか面白さは、種族も違う力関係も微妙、何なら敵仇同士の面々がいがみ合い警戒し合いつつも普通に日常を過ごしているところなのよね。多様性の権化みたいな世界。狸界での阿呆たる矢三郎が静かな水面(に見える)に投じるデカい石は、隠れていた何かを露わにしかき回し、平穏(に見えた)状況を新たな方向へと押し出す。停滞しない、常に動き続ける、カオスなままでアッチャコッチャとバランスとりながら忙しく日々を過ごす、が平和と秩序を守り保つためには大事なことなんかもしれない。
アニメ化もされてるんよね。観てみたい。それと新作まだかなあ?
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