おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

「7SEEDS」

2023年1月8日  2023年9月12日 

 さて新年一発目はやはりコレ。漫画仲間のパイセンに貸して貰った全35巻プラス外伝、年明け二日間で一気読みしてしまった。


「7SEEDS」田村由美

 一言でいうと

「漂流教室」ティーン版

 といった感じだろうか。種々のエピソードや場面の絵面、そこここにその匂いを嗅ぎ取れる。全国の小学生を恐怖に陥れたあの超大作への高いリスペクト、主となる世代が少し上になったことでの更なる深化と進化、ともいうべきか。手塚治虫「火の鳥」、そして超有名な映画のあのシーン、みたいなのもチラホラ見える。漫画好き映画好きな漂流教室リアタイ世代には必ずやぶっささらずにはおかない、まごうかたなき名作だった。


!!!以下、いつになくかなりネタバレしまくりなので注意!!!





「漂流教室」の子供たちは理由もなく未来に飛ばされて、紆余曲折の末「種」としての自分たちの役割を自覚する、という筋書きだったけれど、こちらは最初から「種」と規定されたうえで人為的に未来へと送り込まれる。

 その「種」には大きく分けて二種類あり。

1)特殊な場所で特殊な教育と訓練を受け、未来に行くことを目標に生きてきた「種」

2)何も知らされず日常生活を送ってきた一般人(ただし多くは親が要人であり何らかの才能や技能持ち)から選ばれた「種」

 種たちは七人ずつ春夏秋冬のチームで一人ずつガイドがつく。ただし夏チームだけは二つチームがあり、1)の7人がA、2)の中でも多様性を持たせるための「落ちこぼれ」7人がB。

 この分類といきさつも順繰りに語られていくんだけど、まずもってどのチームも多かれ少なかれ悲惨な目に遭う。そりゃそうだ、急に未来に連れてこられて、さあ今から種として何とか生きていけといわれても納得できるはずがない。こういう流れは想定通りだったが、「過去編」がとんでもなかった。冬チームの顛末なんてもうこれだけでいち作品。十五年間があまりに濃く残酷で悲痛なのに美しく荘厳。

 夏Aチームの面々の洗脳教育施設の話がまた途轍もなくエグい。未来に行くメンバーを決める酷薄な「テスト」の結果、能力は確かに並外れて高いけれど人としては「壊れた」7人がいっちょ上がり。赤ん坊からずっと外部の社会とシャットアウトされた施設暮らし、ある目的のためだけに特化して育てられるという設定、なんだかウクライナから攫われた子供たちを連想して洒落にならん気持ちになった。全員がそれぞれのトラウマを克服するまでかなりかかるんだよね。このメンバーのみならきっと「種」として次をつないでいくことは無理だったと思う。洗脳的な教育なんて本当にいいことない。

 個人的に一番のお気に入りなのが「龍宮シェルター編」。ここもまた選ばれた人々の話。「火の鳥」や「11人いる!」を思わせる雰囲気と展開、作品中で最も辛く悲しい絶望的な話なんだが、それでも好きだ。

 そして何より感心したのが、これだけの壮大で複雑なストーリーであるにも関わらずものすごくシンプルな構造であるところ。内容が何かは完全にネタバレになるので書かないが、とある問題をこれほどまでうまく全体の流れに合わせて解決させるというのは並大抵の手腕じゃない。ラストの盛り上がりとカタルシスはかなり凄い。外伝(というより完全に続き)もよかった。

 全体を通じて「人は何のために生きるか」という問いがあり、一見関係のない各々のエピソードが時空を超えて立ち上がり、繋がって、「人は誰かとともに誰かと協力し合って生きるのが最善」という結論に向かって突き進むのだ。あっという間に乗せられて、最後まで連れていかれてしまった。

 この作品を描きあげて次が「ミステリと言う勿れ」……半端なさすぎる。すごい漫画家さんだな、としみじみ感心するばかりだ。

 いやもう、いくら書いても書ききれないし、もう一回読み直したくなった。新年から本当にいいものを読ませていただいてパイセンに大感謝である。全力!でオススメ。

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