おさ子です。のんびりまったり生きましょう。

「鎌倉殿と執権北条氏」「鎌倉幕府抗争史」「緑の我が家」

2022年12月12日  2023年9月12日 

 そろそろ最終回を迎えるNHK大河「鎌倉殿の13人」、関連の積読を消化。


「鎌倉殿と執権北条氏 義時はいかに朝廷を乗り越えたか」坂井孝一(2021)

 「鎌倉殿の13人」の時代考証者である坂井氏の著書。北条氏の成り立ちから承久の乱に勝利するまで、義時の動向を中心に書かれている。つまりほぼドラマと同じような視点と進行。13人といいつつそこらへんにまつわる親族やら郎党やらは結構な数になるが、ドラマを観続け関連新書をそれなりに読んだおかげで、ほぼ誰が誰かわかる。というか顔が思い浮かぶ、俳優さんの。いいのか悪いのかといえば、たぶんいいんじゃないだろうか私一般人だし。どうしたって100%の再現は不可能なんだし、現代ならではの解釈や演出が入るのは仕方ない。史実とされている出来事をベースに真剣に考え、練り上げた結果ならば「令和時代の鎌倉ドラマ」として十分価値はあると思う。

 それにしても13人の中でただ一人標的になることなく、最も長く幕府中枢にい続けた大江広元。もともと武士ではなく下級官人だったこと、知性と教養の高さ、感情に流されない冷静さなどが一目置かれ、手を出されない理由だったのか。義時が頼朝の死後、父時政の暴走を抑え執権として曲がりなりにもやっていけたのは、この大江の力も大きいだろう。少し意地悪な見方をすればあえて脇役に徹し義時にすべてをおっ被せていたともいえる。ドラマじゃ三浦義村があれこれ暗躍する黒幕みたいに描かれてるけど、真の食えない男は大江じゃないのかねえ。



「鎌倉幕府抗争史 御家人間抗争の二十七年」細川重男(2022) 

 歴史番組ではおなじみの細川氏。此方は「頼朝の死後なぜ鎌倉は御家人間抗争に明け暮れたのか」がテーマだ。

 序によると、頼朝死後から承久の乱までの二十三年間に起きた内部抗争による事件は流血を伴わないものを入れても実に十六件。平均すると一年半に一度である。もちろんその後もいろいろ似たようなことが繰り返されるが、それにしてもこの二十数年の集中ぶりは異常、という。

 戦争の中でも内戦が一番悲惨というのはよく言われることだけど、鎌倉幕府の中心は坂東武者で、血縁地縁が網の目のように張り巡らされた濃い関係性・行動規範は「兵の道」すなわち「勇敢な武勇の人であり、かつ信義を重んじ、強者に諂わず、我が身を顧みず人の苦難に赴く」。裏を返せば、お互いの出自をよく知り・浅くない付き合いをしてきたからこその「あいつ最近おかしいんじゃないか」「あいつならやりかねない」「やられる前にやらねば」の流れが起こりやすいのかもしれない。紛争解決の手段が主として武力なのだから当然といえば当然の帰結。こうしたいわゆる「任侠」の行動規範は古今東西、私的武力集団の中に共通してみられるものだという。古代中国しかり、イタリアンマフィアしかり。

 細川氏曰く「政権」というより「私的武力集団」の比重の強かった鎌倉幕府。内部抗争で瓦解しかねないところを危うく持ちこたえ、足元をみてきた朝廷の軍事介入に打ち勝って本格的に武家中心社会の基盤を固めたわけだ。昨日この本を読み終わってから最終回直前の「鎌倉殿の13人」を観て、どういうラストになるかおおむね察してしまった。なるほどなるほど。

 ドラマの影響も無きにしも非ずではあるにしても、なんだかんだ「持ってる」人だったんだと思う、北条義時。その後も鎌倉幕府は153年の長きに渡って実権を握り続け、元寇という最大の国難にも二度耐える。やはり「持ってる」人である足利尊氏によって滅ぼされるが、北条氏の末裔は長く抵抗を続ける。そのひとつが「中先代の乱」。いやー歴史って面白いですわね。



「緑の我が家」小野不由美(2022)

 1990年に朝日ソノラマより刊行されたパンプキン文庫「グリーンホームの亡霊たち」を改題し、加筆修正した講談社X文庫ホワイトハート版「新装版 緑の我が家」(2015)を加筆修正したもの、ですと。まだ携帯がない、家電が各家に存在していた時代ならではのエピソード辺りかな修正は。してみると恐怖を感じるための道具立てというのも、時代によってどころではなくほんの数年スパンでも変わっていくんだなあと実感。

 それはともかくいつもの一気読みでした。「家」にまつわる怪談が好きな向きにはお馴染み?のような怪現象だけれども普通に怖い。しかもこれデビュー(1988)直後!思春期の少年の繊細さと不安定さとをうまく絡めて、切ない成長物語にもなってる。この少しあとに十二国記の「魔性の子」を書かれるのよね。才能に溢れすぎてやばすぎです。

 この作品で描かれたその地の因縁や穢れがもたらす怪異が、のちの「残穢」につながっていくわけですね。その遠因はもしかしたら十二国のようなこの世ならぬ国の影響だったりして。小野不由美さんの描く世界はどこまでも広く遠く、読者を惹きつけてやまない。 

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