「中先代の乱」
日本中世をこのところ続けて読んだり観たりしてるので、頭ん中がカオス。人多すぎの揉め事多すぎ。
漫画「逃げ上手の若君」の主人公でもある、足利に滅ぼされた北条家の生き残り・北条時行、この人が好きすぎて大学も史学科を選び、教授の反対を押し切って卒論テーマとしたという筋金入りのオタク著者。2001年から「狭雲月記念館」という時行ファンサイトまで作っておられる。いいですね、こういうの大好きです。亀田先生もお若い頃より「観応の擾乱」が気になって仕方なかったと仰っておられたし、まさに学問の根幹、原点ともいうべき「純粋な知識欲」。それがこの一冊の本が産まれる原動力となった。素晴らし過ぎる。文書が殆ど見つかってなくて、周囲の状況やら別の文書やらで類推していくしかないって、メッチャクチャ大変だと思うんですけど、おそらく物凄ーく楽しくもあったんだろうなあ。羨ましい。時間と手間どころか生涯をかけても惜しくない最大級の「推し」に巡りあえた幸運は計り知れません。
前置き?が長くなってしまった。
全体の書き方としては、やはり亀田先生にとても似たところがあるように思った。根拠となるものを示しつつ年代と人と場所を緻密に書き込んでいく。最初は追っていくので精いっぱいだけど、慣れて来ると一気に流れに乗れる感じで、爽快感が半端ない。歴史はすべて連続している、という至極当たり前のことをガッツリ実感できる。
ただ、私はニワカもニワカのど素人なので、「あー!スッキリ!」と思っても一瞬で(笑)何度も行きつ戻りつしないとすぐに忘れる。推しを作るべしだな。
時行という人は確かに不思議な存在で、一族郎党が皆殺しの中でなぜか生き延び、少年の頃に「中先代の乱」という大規模な戦いに勝って二十日間だけとはいえ鎌倉を奪取、その後も十数年かけあちこちで暴れまわる。単なる復讐、お家再興のためというだけで集まるほど当時の武士は甘くない。新政権への不満を抱えた者をどうやって探し出し味方につけ、巻き込んだのか。最初に引き立てた者に恵まれたのもあるだろうが、普通に考えて本人も物凄くカリスマ性があり、賢くかつバランス感覚に長けていたんじゃなかろうか。そして多分「逃げ上手」なのも間違いない。結局北条家の世は来なかったが、長くその「権威」は残った。後々になって、我が一族こそ時行の末裔!と箔付けに使う武家が出てくるほどに。そこまで北条家が武士の記憶に刻まれた理由の一つとして、やはりこの時行の存在は大きかったんじゃないだろうか。あの足利尊氏・直義兄弟に一矢報いたんだぜ!カッケー!みたいな。
あとがきがまたいい。
「今の私が、中学二年生の私や卒業論文を書いていたころの私に会ったなら、時行についていろいろ教えることもできるだろう。そういう自分になれて、良かったと思っている。」
何かを学びたいという気持ち、その意義そのものよね。感動した!
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