2022年参院選明けに思うこと。


 あまりにも衝撃が強すぎて、何をしたらいいのかどころか、何一つ手につかなくなってしまった。東日本大震災時の感覚に非常によく似ている。もう日本はこれで終わりだという絶望感。自分は何も出来ないという無力感。

 ただ、あの後も日本は終わらなかったし、日々は続いていった。だから今回もきっと大丈夫だろう。そう信じているけれどもやはり辛い。辛くてたまらない。


 東日本大震災のあの時、何をしていたかの記録を残したように、

2022年(令和4年)7月8日(金)

 の覚書も書いておこうと思う。

 ごく普通の日だった。
 朝起きて朝食の用意をし、ゴミ捨てをし、家族を送り出し、後片付けと掃除をして一息つき、ツイッターで遊んでいた。
 そのツイッターで、第一報を見た。

 特務機関NERVのツイート。

【NHKニュース速報 11:42】

安倍元首相 奈良市で演説中に倒れる
出血している模様 銃声のような音

 は?
 何?どういうこと?撃たれた?
 すぐさまTVをつけ、NHKに合わせた。
 そこで観たものはとても日本とは思えない光景。
 暫し茫然とTVを観ているうち、JD娘が休講になったーといいつつ帰って来た。
「ちょっと、えらいことになったよ」
 内容を話すと、は?え?どういうこと、と私と同じような反応をして、
「やばい。選挙行かなくちゃ。いや最初から行くつもりだったけど、行かなくちゃ」
 と言った。
 勉強しなきゃ、とにかく勉強を、とも口走った。
 正直、びっくりした。ここまで衝撃を受けるのかと。親がいくら口すっぱく勉強大事だからしっかりやんなさい、といっても得てして子供は素直に受けとめない。むしろ反発する。それがこの一報を聞いた瞬間、反射的にこの言葉が出るとは。その気持ちが持続するかどうかとか結果的にどうなるかとかいうのはこの際問題ではない。ただ自然に出た、ということがポイントである。
 それほどまでに、十代の若者にとっても
「心底ヤバい」
 事態だという証左。
 娘は心配しながらもバイトに出かけ、私は独りTVをつけたまま、ツイッターと両輪で状況を追いかけ続けた。次々と入って来る情報は、明るいものは何もない。岸田総理の会見では、出て来た時の表情からしてもうこれは……と察した。それでも奇跡は起こるかもしれない、こんなことで死んでいい人ではない、きっと大丈夫。自分に言い聞かせつつ買い物にも出た。
 
 亡くなったという一報をみたのもツイッターだった。
 その瞬間からの物凄い喪失感。身体に力が入らない。目でみているもの、耳で聴いているものが、間に何かが挟まっているように遠く思える。それでも私は夕飯の支度をし、次々帰って来る家族のために配膳をし、皿を洗う。つけっぱなしたTVが告げるニュースの内容だけでなく、何もかもが現実味がない。
 自己防衛反応だと自分でもわかった。これは何だ。肉親でもない、直に話したことも会ったこともない人なのに、この大きな何かが欠けた感、途轍もない絶望感は何だろう。
 ことほど左様に、安倍さんの存在は大きく、拠り所でもあった。痛切に実感した。こんなことで。こんな酷い、理不尽な暴力によって。普段はそれと気づかないくらい、何気なく、大きなものでふんわり包まれ、安らぎ守られていたのだ。
 その夜は殆ど眠れなかった。
 それでも少しはウトウトして、翌朝。
 ああやっぱり夢じゃなかったんだこれは現実だ。
 そこからはTVは殆ど観なかった。


 参院選が始まり、予想通り自民党が圧勝し終わったけれど、もうそこに安倍さんはいない。
 各国から次々に寄せられる追悼の言葉、弔辞をRTしながらまた驚く。これほどまでに評価が高かったのかと。元総理だから各国が反応するのは当然、だが型通りの儀礼を踏み越えた、それ以上の強い思いが感じられるのは気のせいではないと思う。
 国中で半旗、三日間服喪、証券取引所のスクリーンで、街中で一番目立つタワーや施設で映し出される映像、ありがとうという文字。
 各国がツイートした追悼文に翻訳をかけて読むと、事件から受けた衝撃と並々ならぬ悲嘆が汲み取れる。皆この大きすぎる喪失を心から惜しんでいるのだ。それこそワールドワイドに。

 その逆もある。存在の大きさゆえにある程度致し方ないことなのかもしれないが……
 第一野党の重鎮が放った「長期政権が招いた事件」という言葉を筆頭に、酷いツイートもいっぱいみた。
 ヒラリー・クリントン氏の弔辞ツイに、わざわざ英文で安倍氏を貶める引用をつけた女性人文学者二人(例のオープンレターで名を馳せたお歴々)もそれ。
 人に物を教える職業でありながら、あまりにTPOの弁えの無い非常識な振舞いに開いた口がふさがらなかった。複数の諫めるリプに対し謝罪どころか「クジラ構文だ、わかんないアンタらが物知らず」と「お取り巻き」が上から目線で嘲笑する始末。
 膨大な時間とお金と手間をかけて学び、取得した能力を何に役立てるかはその人の自由ではあるが、それにしても。一応人文の世界に身を置いたものの一人としては、非常に残念だし憤りを覚える。
 どんなにご立派な業績がおありなのか知らないが、人としての品格、最低限の思いやりすら忘れた集団に敬意を払う人などいない。少なくともこの面々の中に、安倍さんレベルの追悼を各国から集めることができる人は皆無だろう。

 こんな厭らしいあてこすりのみならず、悪口雑言・誹謗中傷の類にずっと晒されてきた方だった。なのにいつも爽やかな笑顔で、奥様も大事にしつつ、日本のために日々頑張っていらした。人として、職業人として、なにもかも格が違う。
 改めて。
 安倍晋三様、もっともっと生きていてほしかった。直にお顔を見てお話してみたかった。何を言っても何をしてももう取り返しがつかない。悔しくて悲しくてたまりません。何も出来ない自分が歯がゆい。せめて、今後は少しでも誰かの役に立てるように精進したいと存じます。
 本当に、本当にありがとうございました。どうか安らかにお眠りくださいませ。 

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